ひとつの優しさ
今日の朝振り向いて
ひとつの喜び
今日の朝テーブルの上にそっと



あたたかな温もりに抱かれるように
背中から朝は訪れた
おはようと
ちいさな声であいさつする ....
吊り皮を枕にした朝
素肌の味を思い描き
定時を目指す


学食を想い
立ち止まってはみたが
正門のサイズが合わない
すれ違った後輩が
陽ざしに目を細め
素肌をにじませようと
侵入 ....
夜のドレープに裂け目が入る
夜明けが裾にそっとくちづけると
私はすべてを脱ぎ捨て
一羽の鷹になって飛んでゆく
まとわりつく冷気を翼で切りながら
あなたを求めて飛んでゆく


   私は ....
{引用=ふたりきりでも まだ
さびしいので
ラジオをつけると あなたは
雨音だけで充分だと言った}

愚痴を云わないけれど聞けない
つまらない女ですから
晴れ女でいいねと羨ましが ....
僕達は容易に 
たくさんのものを失ってしまう
取り戻す事のできないものですら

時計はその時を
刻み付けたまま沈黙している
瞼の裏に
残響だけを刻み付けて

無くなってしまったものを ....
下を向いて歩いていたら
五月がおちていた

かたちというほどのかたちもなく
いろというほどのいろもない
けれどなんとなくそれが
五月だということは感じられた

そのままにしておくのもあ ....
人はどこへゆくのだろう
このまま このまま
みえないところまでゆくの、

こころが
ふらふら
さまよって
今日も
きみのもとへはゆけない
悲しみやら
目につけば
水に腕をくぐらせ
滴のきらきらと落ちかがやくさまが
この雨降り以外
かわかし続ける陸のうえ
路の上で

美しくなどないよ
とりあげられたある日は
何 ....
寂しい日には鏡の前でうずくまる
そこには彼が必ずいるから

やあ
僕は手をあげる
彼は黙ったまま手をあげる
彼は何も語らない
ただ
僕の言葉をぱくぱくと飲み込む
彼の糧は僕の言葉なの ....
雑居ビルの中にある小さなライブハウス
彼女が鍵盤に指先を下ろした瞬間
スタインウェイは真っ直ぐに彼女を見つめた


たたみかけるような熱い音の重なり
スタインウェイと彼女の間には
透き間 ....
氷の中でも
トビムシと藻は
生きている。
春を諦めない。

熱には弱いが
寒さに強い
氷でも光は通す
氷でも溶ける。

夢を諦めずに
今日も生きる
命を大切に
生きている。
 ....
 
夏至、直射する日光の中
未熟な暴力によって踏み潰された草花と
心音だけのその小さな弔い
駐屯していた一個連隊は
原種農場を右に見て南へ進み始める
わたしは網膜に委任状を殴り書きする
 ....
好きとか嫌いとか
そのような感情と同じ速度で
五月の空はわたしのこころを蝕んでゆく

そして陽射しに揺れる葉桜が
散り行く先など知る縁も無いように
他者への憎しみを
こころの襞奥に抱え込 ....
わたしはたぶんかなり疲れていて
これ以上1ミリグラムだって溶けない
飽和寸前の塩水のようにぎりぎりで

でも

疲れているのは心なんかじゃなく
塩辛いのは涙のせいなんかじゃなく
あくま ....
女の子達に追われる友達
第二ボタンを頂戴と言われる。
握手してください。
あの先輩の彼氏ですよね。

根掘り葉掘り聞かれる
チョコは山のよう
手紙は束になって
下駄箱に入っている。
 ....
空白のページに
跡をつけたのは私

全体の四分の一にも満たない
まだ短いストーリー

ベストセラーになんかなりっこない
本屋の端の方で埃をかぶっている

ちょっと悲惨なストーリー
 ....
{画像=080518024305.jpg}
疲れた後の浅い眠りのように
私を誘う女の手よ。
私を誘わないでくれ、
私は弱き男なれば。

死の後の深い眠りのように
私を見つめる女の目よ。
 ....
二番地の内田さん    前田ふむふむ

白いあごひげをはやして、美味しそうに、キリマンジェロを飲む、二番地の内田さんと呼ばれている、この老人は、若い人と話をすることが、何よりも好きだ。よく、真面目 ....
森の夢―古いボート          前田ふむふむ

     1

青い幻視の揺らめきが、森を覆い、
緩んだ熱を、舐めるように歩み、きつい冷気を増してゆく。
うすく流れるみずをわたる動物 ....
街なかで白い小鳥を配っていた
籠に入ったたくさんの小鳥を
小鳥配りの人が要領良く配っていく
受け取らないつもりでいたのに
いざ目の前に出されると受け取ってしまう
わたしが手に取ると
それは ....
親指にのせたコインを
天井にむかってはじく

くるくるとまわるコイン
僕は一緒になって見上げていた生徒に

「これが放物線になるんだよ」と

たとえ真っすぐに上昇しても
その速さはだ ....
                 080516




偶然と書いて
ぐうぜんと読ませる
ぐうぜんが生まれ
ぐうぜんが目覚める
ぐうぜんが欠伸をする
起きろ!
朝だ! 起きろ!
 ....

まだ冷たい風に吹かれ
空を見上げたら

白い風船が
力を使いきり
はらりはらりと私のもとへ

糸の先には
まあるい花の種
育ててみようと思いたち

長旅で疲れたであろう種 ....
「新体操の3人組はケンタでお昼を食べてた」

君はあった事実を淡々と話したようだけど
君の顔が曇っていたように見えたのは
僕の思い込みだけが原因だろうか

新体操を選ばすに演劇を選んだ君
 ....
風の便り
空中の花見
二つの綿雲
手を振る君

スネアの音
速いロール
テントンテンと
ティンパニーの音

緊張の毎日
幸せの毎日
達者な弁論
あきない話
わたしのいつも見ている景色です
ありきたりです
でも、たまに
はっとして
おもわずカメラで収めたくなります
記憶に留めるだけの時もありますが
後に悔いてしまいます
焦ってカメラを構えても ....
 
テーブルの向こうには
崖しかないので
わたしは落とさないように
食事をとった

下に海があるということは
波の音でわかるけれど
海鳥の鳴き声ひとつしない
暗く寂しい海だった

 ....
(1日目)
 身欠きニシンの煮付け
 餃子のスープ
 ヤッコ豆腐
 ほうれん草のお浸し

(2日目)
 酢だこ
 ソーセージ
 かき玉汁
 納豆

(3日目)
 サバの味噌煮 ....
光は緑に柔らかく

街道には

緑風が吹いている

五月の光は風なのか?


さくら散る幻の芥

街道には

柑橘系の白い香り

この国は違えたのか?


光は緑に ....
月夜の晩に

月に向かい
踊るのさ

サンバやチャチャチャは
無理だけど

虫の声と
風の音を伴奏に

両手をゆらり
ゆらゆらと

月をあおぐ
狐の舞

虫の声に
 ....
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