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あかねさす紫野ゆき標野ゆき
そんな旅を胸に描いた{ルビ妾=わたし}は
愚かだったのでございましょうか
野守などはおりませんでしたのに
せめて手をお振りになってくださったら
それだけでも嬉しう ....
あてどない という言葉と
鍵 という言葉
ばかり頭に浮かんで
要するにわけがわかんない
風を名づける人たちに
風の色を訊ねてみた
だあれも知らなかった
なまぬるいきさらぎの曇天
....
Tully's Coffeeで
買ったばかりの本を読んでいたら
「恋愛」は
12世紀ごろの騎士道精神から
「誕生」したものだって
書いてあったので
椅子から転げ落ちました
なんて ....
悲しみにくれるとき
いつも夕焼けを見つめていた
悲しくて涙が止まらないとき
いつも月が輝いていた
夕焼けの向こう側や
輝く月の世界に行きたくて
行けない自分がまた
やりきれなくて
....
東京湾上空を固い翼たちが水平に旋回する
垂直にたちあがるオレンジのビルたちのすきまへ
ゆうぐれて輪郭を失ったそれぞれの窓へ
たえまなくなつかしい未来へ
たくさんのたましいがまどから ....
太郎君があっと喚いて
花子さんはいっと呻いた
同じ本を読んでいたのにね
次郎さんは右に行きたかった
正子さんは後ろに走りたかった
ただ、エビが高かっただけだった
三郎さ ....
これは事故
あれは事故です
あたらしいニュースが
たおした液体みたいに
体をつたって地面へと
たいらにひろがっていく
戦争は反対です
これは平和
いけない事ばかり考える
マク ....
屈めた背中を ゆっくりと伸ばすように
季節は移り変わる
それは水指に潜む 小梅の性
三寒四温の質感を受けいれては ひとり悦に入る
(ああ 春は素敵な季節
(水指の渇望は
(滴り ....
切り絵(題材)
「少女」
ただ真っ白い紙でした 私たち
切り絵師は 無を有にする
柄に美しい細工を施した
銀色の先端鋭いハサミで
すんなりと手足の伸びた
可 ....
ぼくの肩に乗るピパは
足が一本かけている
だが ときおり
大声で泣くほかは
そこ等の蛙と大差は無い
ただ 知り合いの目利きによれば
それは伝説の金蟾(きんせん)なのだと
だから大事に ....
白日の世界に跪くわたしに
昏々と降り注ぐ言の葉は
もう
何も見なくてすむようにと
眩く光る
泣きたくはない
あの人の笑顔を焼き付けるため
でも
言の葉も 涙も
それを許してはく ....
わたしが 骨壺に なったとき 全ては 赦される ノデショウカ ちいさな 骨壺の中で 繰り返し おもいだします あのときのこと この ときのこと もしも そうなったら なら なかったなら でも 骨壺も ....
叙情の彼方を探るように この岸辺にて
翼を休めるものよ 優しげな日差しと
聞こえ来る 春の訪れを告げる歌声
地に生けしもの総て 目覚めの刹那を夢想する
巡る季節の旋律は いつにもまして ....
きたへ うつる ほの を
しゃくりあげ おおう て
そりは それていく ゆき
あけて あんでいく いと
かたまれない かげろい
かまれるたび ゆりゆれ
つけた げんの なまえ
....
やさしいあなたはわたしの何倍もやさしい
わたしはすぐになにもかもあきてしまってやさしくなんかないのに
あなたはわたしを許すとか許さないとかじゃなくただ
いろいろなことをやさしくこなし続けている
....
ある人が君に言った
愛というものはダイヤの原石
諦めずに磨き上げなさい
今投げ出せば
唯の石ころ
と
そして君は
僕にこう言った
愛は綺麗で美しくなければ
誰も価値を見出さない ....
オリオン座が西の空に瞬く午前三時
部屋の中で独りの男が
机を照らすランプの明かりの下
白紙にペンを走らせる音
時を忘れ
宛先の無い手紙を{ルビ綴=つづ}る深夜に
眠れる街の何処か ....
”仲間”いうもんは、やっぱ大切にせなあかんわ。
だってな、その人がおったから今、笑ってるねんで?
せやからね、感謝のキモチはわすれたらあかんよ。
たとえ仲が悪くなっても、前までは笑い合った仲間や ....
陽炎ゆらめく金の砂子
彩雲は海風に吹き乱れ
てのひらに燃え立つストレリッチア
放った水際 横なぎにさらわれる
あの辺を転がってく
サクラ紙みたいな柔らかいの
さっき2人で食べた
カッ ....
カナリア カナリア
快楽の中に今も尚
生きながらえた首を曲げた老人
苦しみなら信じられると
禁断の果実すら腐り落ちる
この土地を愛してやまない
カナリア カナリア
突発の中で育てられ ....
交差点の向こう
ギラリとした眼光の
ヤサ男が独り
こちらを睨む
興味本位な意識を飛ばし
かの男に憑依する
男15歳初めての殺人
それは見知らぬ男
母の上にまたがり
汗だく ....
悲しみを慈しむ
それは
生きてあることを悲しみ
老いてゆくことを悲しみ
病に倒れることを悲しみ
死に別れることを悲しむ
その悲しみに
打ち震える人を
慈しむこと
そして
....
宵闇は
切り子細工の紅茶に透けて
紫紺も琥珀の半ばでとまる
グラスの中では
流氷が時おり
かちり
ひび割れて
薄い檸檬の向こうから
閑かに海を連れてくる
壁の時計は
ゆるり ....
あぁ、なんて小さいのか
拳一つ分の命は
ワンポンドにも満たないと
その儚さに反する温もりと
ズシンとくる重さにおののきながら
まばゆいばかりに輝く微笑みに癒され
見守る ....
無数の穴から噴出されるのは8倍に希釈されたカルピスである
薄口の白濁液が霧吹きから噴出され、辺りを汚す
無数の穴から乱射されるのは濃縮され尽くして形を持ってしまった言霊である
訳 ....
甘い香りを予感させる小さな箱
赤いリボンが可愛らしくて
君の笑顔はいつも素敵で
両手で受け取るファミマの小箱
でも…何故か心に残るわだかまり
それは君が他の男友だちにも
同じ小箱を ....
水に浮かんで 流れる 花びら
いっぱいの太陽の光は 水面下で
あざやかな 光りのプリズムを作ってる
たまに早起きしてみる
誰も歩いていない街を
一人で歩いてみ ....
なつかしい歌を
久しぶりに聴いたから
あの頃読んだ詩の一節を
ふっと思い出したから
永遠だと信じてた時間が
いつの間にか
過ぎ去ったことに気付いたから
絶え間なく変わり続ける ....
私の父は沖縄生まれだから
血の半分は南国のものなのよ
と、言ったら
君は目を丸くして色々聞いてきたね
東京の凍りつきそうな夜に
白い息をふっと吐き出して
私は記憶をたどって常夏の話をする
....
夕と闇の間で
海蛍の群れに導かれ
滑空する機体の重さ
地面へと伝わる
伝わる振動は
両の耳鳴りを増幅する
アンプのように
硝子の中で火花を散らす
長い鉄塔につい ....
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