ラヂオ
maumi

夕と闇の間で
海蛍の群れに導かれ
滑空する機体の重さ
地面へと伝わる

伝わる振動は
両の耳鳴りを増幅する
アンプのように
硝子の中で火花を散らす

長い鉄塔についた
時計針のあやふやな
時の道標には
些かの猶予も無しと
指した針が教えてくれた

さて

何で行こうかと
回りを見渡す書生

浴衣の紐にしようか
屋上に出やうか

水辺にでも参ろうか

セイサンカリーでも舐めようか
あれこれ迷って針が回る

オチヨさんに別れを言ってない

それぢゃ駄目だ
駄目なのだ
最後の水を含ませて頂く唇は
オチヨ殿と決めている
百合のやう
スラと佇む喫茶の白エプロン
銀盆を持つ手に一杯の珈琲でさえ
疎ましい重さ

その麗しい唇に触れるまでは

この参考書でも
読み更けて
明日に備えようかと
思う午後


自由詩 ラヂオ Copyright maumi 2006-02-09 00:27:31
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