早春
銀猫

宵闇は
切り子細工の紅茶に透けて
紫紺も琥珀の半ばでとまる
グラスの中では
流氷が時おり
かちり
ひび割れて
薄い檸檬の向こうから
閑かに海を連れてくる


壁の時計は
ゆるり そろりと針を進め
きみの味方についている

贅沢な退屈を楽しむのも束の間に
便りの日付を振り返り
振り返りしては
唇にちいさく風が湧く


春までの
きみの願いはまだ蕾
水遣りが過ぎては
(夢)
かなしくしな垂れ
陽射し恋うるは我れもひとしく

こころ
文色も
月にまかせて

凪まだ知らぬ海







自由詩 早春 Copyright 銀猫 2006-02-10 19:38:51縦
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