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どうやら朝を迎えたような気がする
朝の日差しに目覚める窓ひとつ無い部屋
暗闇に閉ざされたキューブとでも
例えられそうな この狭い部屋のなかで
確かに感じられるのは
未だ眠りから覚めぬあなたの ....
あたしの心の奥底に
善と悪のふたごがちんまり住んでいる
哀しい事があるたびに
鏡の中の世界だと言い聞かせ
嬉しい事があると
これが当たり前だと言う現金な奴ら
言い訳上手なあたし ....
放った言葉は
宇宙葬
想われた言葉は
さようなら
糸の切れた凧のように
僕は自由ですね
されど
日々は変わらず続き
空の色さえ失っていません
その普遍性に
安堵し
途 ....
ぐらぐらと、
煮え立っていた。
ぐらぐらと、
煮え立っていた。
ぐらぐらと、
煮え立っていた。
やかんは、
気が付くと、
空になっておっ ....
ぐるぐる太陽の下、
ぼくたちは生まれて、
食べて寝て起きて、
また食べて、
生きて、
いる。
まいにちまいにち、
いつもまいにち。
食べて寝て起きて ....
「えくぼ」
六月の風にゆれる
さくらの葉っぱ。
よく見たら
ぽつぽつ 穴があいている。
虫に食べられてしまったのだろうか?
穴は どこかの虫の命を みたして
穴は みずみずし ....
月は
硝子に描かれた設計図なのです
半透明に、透明に
あるいは暦のように
時は
暦の影絵
季節を待ちこがれた獣が
手に入れた花占い
君は
峠ではためく{ルビ経文布=タルチョ} ....
矢継ぎ早に
新月は降り注ぎ
縫い針がまたひとつ
遠雷に濡れている
吟醸の名を濁さぬ盆は
薬指だけの浸りに あかるい焔を映し
無言の岸辺を満たすのは
衣擦れの波
鈴なりの
....
順繰りに咲き誇る花々は
緑に浮かぶ星の煌めき
晴れ晴れとジューンブライドになるはずが
ほんのちょっぴり なみだ顔
夜の帳の降りる時間も
知らぬ間に間延びして
雲がたれ込めている ....
真夏の夕陽に染まるさざなみは
あなたの肩越しに遠のいてゆくばかり
深めに倒したナヴィシートで
あなたの好きなラヴバラードに酔いしれて
日焼けしてしまった首筋に心地よくて
小さなため息をひとつ ....
夕やけこやけ
身を焦がし染まっているのは
女子高生
夕やけこやけ
鍵っ子寂しくつく家路
夕やけこやけ
セクハラオヤジ
今度やったら訴えてやる
夕やけこやけ
また明日
悲 ....
さまたげるものだけが
私を
言葉に向かわせる
たとえば 雨
いつだって
あなたも同じだ
突然
ひょい、と現れて
私が
気にしないで生きようと
思っていた矢先にいつも
嫌い ....
ぼくは詩人
静寂なる空間は心を癒し
癒す心は静寂を創りだす
今日もまた
夜の散歩をしていると
月の光に出会いました
澄みきった夜空に
煌々と輝き
ぼくとぼくの心を照らす ....
あなたはうしろを振り向こうともしなかった
街角を曲がる郵便配達員のように
(あなたが魂に呼びかけてくれた
啓示は風でとぎれる幻想となって・・・)
結局 あなたはうしろを振り向 ....
黒猫 道で倒れている
わたしは黒猫 抱き寄せる
黒猫はわたし 抱き寄せる
黒猫 血を吐いている
わたしは黒猫 さすってる
黒猫はわたし さすってる
黒猫 風にじゃれている
わたし ....
やまびとの散文詩 断片12
わたしたち、やまびとが星々を汚した罪が
償われる日が訪れた。それは二百年の歳月を必要とした。
幾世代にわたる長い期間であった為に、
もはや悲願であった。
青い ....
真昼の公園で木漏れ陽を浴びて
癒える筈のない悲しみのことを考えていた
ときおり吹き抜ける風はすこし熱を帯びて
客待ち顔のアイスクリーム売りの老婆の
麦藁帽子を踊るように撫でてゆく
....
おっぱいなんて所詮脂肪のかたまりで
手のひらに余る重量感にホッとしながらも
そのすぐ下に控えるくびれに
そこはかとない微妙な崩れを見つける恐怖
脂肪も依る年並に頑固になっていくようで
ち ....
荷物が重くて
帰り道が遠い夜も
星が しゃん、と
鈴を鳴らすことがある
鞄で傾いた右肩を
白銀色の響きが
そよ風となって撫ぜるから
もう少しだけ進んで行ける
余韻の尻尾
....
夏の気配と湿気とが
充満するこの部屋で、
私は思う
六月は麻痺している、と。
ベッドの上で横になっていると、
爪先や指先や腹筋、
恥骨までもが渇いた息吹に
やられてしまう。
どうしよう ....
月光を浴びて生まれた一人の少女
その唇から
言葉がツタのように伸びてからまり
あの家を覆ったの
家の中には
青白い顔をした少年が一人
小さな椅子に座っていて
コーヒーミルを回していた ....
早朝の
夜が やっと明け始めるころ
眠りから覚めた
鳥たちが挨拶を交わし始めるころ
色白の
肌が青白く影を帯び始めるころ
私は、
私自身の気配にかすかな境界を感じ
縁側でぽつねんと ....
嵐の夜、だったらしい
水底を叩くように
爪先立ちで歩く恋だったらしい
苦しくない呼吸で、まだ淡い空を見ていた
今、街は静かに水没して
新しい水面を探している
六月の底辺は、眼鏡なしで目 ....
岩木山の
奇妙に底抜けた反射が
冬の林檎樹を
切り絵の風景にする
小泊に向かう一本道のそばで
その昔、十三の湊が
あったという
巨きな黒鏡が夜を
地吹きの中で待っていて
ため息を飲み ....
ぷかぷか波間で浮いているのが
一流のサーファーだと思っていた
金づちのわたしにとっては
それでも素敵すぎて
おなじようにぷかぷか浮いている
ボードの数を数えたりして
どれがあのひとなのか
....
5月の天空の傘は雨漏りばかり
途中下車してコインロッカーで
制服を脱ぐのも板についた頃
初夏の爽やかさを置き去りにして
入梅前の隙間を夏空が我が物顔で占拠中
教室の片 ....
言葉を乗せた花びらの
来る上空から
甘い香りが立ち込めて
手の平は夢遊にひらめき
高く 高く 開くよ
ワタクシの生きた
気の上で回れ 花吹雪
ら行は霞んだ空を瑠璃色に ....
石垣に肩を預けて戯れは
我が身を石に初夏の景色に
それは‥
季節で言えば
今頃の
濃さを増す
木々の緑も鮮やかに
天気で言えば
曇天とも
雨天とも
言えるような
....
また腐りかけた吊り橋だ
いつもこうやって
たどり着く先で
誘う危険は
谷奥からのそよぎに共振する
銀河を流す暗い川には
大きな{ルビ鰐=わに}が寝そべり
冷たい水に ....
宵闇に鈍き銀の皿
さらさらと被る雲に
想いの念を映すことが出来ようか
輝く光に絡まる紐を辿いて
真理に近づくことが出来ようか
待つものが 空
来たるものが 虚
振り返る日 ....
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