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炎天下の路上に
{ルビ蝉=せみ}はひっくり返っていた
近づいて身をかがめると
巨人のぼくにおどろいて
目覚めた蝉は飛んでった
僕の頭上の、遥かな空へ
瀕死の蝉も、飛んだん ....
浜辺に群がる人波が
ひとしきりうねって退いたあと
待ち兼ねていたように
波音は膨らみ
熱を孕んだ砂の足跡も風に消されて
浜は打ち上げられた藻屑の褥(しとね)になる
風が
湿り始め ....
自転車の私と
白い軽自動車の先生が会ったのは
広い水田の中の十字路
偶然にもかごには
できてきたばかりの詩集
それはコピー誌で手作りで
でも 作品を集めてお金をだしあって
イラストを ....
鳥が くわえたたましいを
離すたびに緑は深く
深く 深く
枝は水紋
土に落ちた花が集まり
さかしまに笑む紫陽花もいて
水は灯る
水に 灯る
鏡に映る鏡の奥で ....
月ではまだ
冬の初めで季節が
止まっているようだった
浅い眠りの合間に
この頃よく、夢を見る
凍えたままの月面で
あなたをこの腕で抱き ....
あれは忘れもしない
一年前の8月6日
仕事を終えて
家に帰ると
あなたは待っていた
フリルのお母さんエプロンを
ひらひらさせて
おかえりなさい
待ってたよ
ばんごはんの支度が ....
自転車の車輪の横には、
しっぽの先だけがしましまの猫が
丸くなって寝ている
夕方には何処かに行ってしまう猫に
名前をつけよう、と
彼女が言い出したのは
日曜の朝、
決まってサンドイッチな ....
嵐の去った夏の空は
純粋な空が広がり
地上には青い風が流れる
暑い気温でも空を見れば涼しい
雨の通った夏の道は
透明な雫が続き
地上には青い風が流れる
汗が落ちても雫を見れば清々しい ....
ふしあわせな こころに
にじを かけそこなった
せつなさの はてを はなで
かざれなかった きみの
ためだけに いきられなかった
僕らは空気を育てた
空気を育て空気と遊んだ
外を連れて歩くと
人はそれを風と呼んだ
空気は僕らを食べて育った
食べられて僕らは
その大きなお腹のようなところで
何度も生まれかわった
何 ....
人間は汚れている。身も心も。
人の世のニュースを写すテレビ画面の中で。
私の姿を映す鏡の中で。
全ての日常は、色褪せていた。
*
一人旅の道を歩いていた。
信濃追分の風 ....
一.
なんだかね
スーパーに行ったんだ
この街は夏でも冷房とかあんまり無くて
でもそのスーパーにはあって
涼しくて
何買うわけでもないけどね
近くの中華料理屋の中国人たちがいつもどお ....
引っ越したアパートは
薬屋の二階だった
辺りには小さな商店しかなかったが
近くに大きな川が流れていて
君の心を支えながら
よく土手を歩いた
神社には大きな桜の樹があって
薄紅の季節を ....
電車に乗って 都内へ行く
それは
ときには嬉しいイベントであったり
ときには必要に迫られた用件であったり
車内では少し緊張している
エプロンではなく ネックレスをつけているから
サ ....
水鏡の裏側からわたしは見ている
黄色い土壁と
くすんだ緑の屋根を
潅木の足元に散り落つ白薔薇を
誰かの足音は
水面に波紋を広げるのだが
雨のひと粒ほどに
まるく響きはしな ....
私はあなたから生まれたというのに
もうそんなことを忘れてしまって
自分だけの死を抱きしめていた
まるで沈むために港を離れた
あのポンコツな捕鯨船
たった一つの獲物を射るための{ルビ銛=もり} ....
「幸福」を鞄に入れて、旅に出よう。
昔日、背の高い杉木立の間を
見果てぬ明日へとまっすぐ伸びる
石畳の道
君と歩いたあの日のように
( 舞い踊る、白い蝶々を傍らに。
....
緩やかに影を退く。
垂直に流れ落ちる彼は、
嫉妬深く、
それを許さない。
磔にする。
彼は強く抱き締め、
絶え間なく貫き、
すべてを磔にする。
....
ビンが 薄いレモン色に 枯れていく
花というものを 残せない
屈折の返る 生真面目な黙殺は
水辺リに 傾けられて寄り添った
青雲への 憧れに空域をなくす
満たされぬ受け口の 外に ....
あわく光の閉じられた
空のもとを
一羽の紋白蝶が舞っていた
しばしそれは
重い熱風のあわいを
ちらりちらりと映えて
切れ切れに風を読んでいたが
霊園の奥深くへ とけていった
さて
....
親父に関するエッセイを書こうと思ってやめた
だってお前の声が聞きたいから
何時まで繰り返せばいい?
脈の無いコミュニケーション
脈の無いカンヴァセーション
赤剥けるまで繰り返すマスタベー ....
お帰りですか、と
聞くとその{ルビ女=ひと}は
ええ、と
小さく頷いて
穏やかな微笑をうかべた
鬱蒼と茂る緑葉の下で
木洩れ日が描くまだら模様が
白い肌をよけいに引き立たせ
蝉しぐ ....
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さて、目の前には17インチのP
枠は銀色、SAMSUNGのロゴ
....
し と
くちびるに露をあて
朝の光を遅らせる
草の根元の幽かな揺れに
応える静かな笑みがある
雨の日
葉を持ち
あふれるうたの指揮をする
道のうた 流れに映るうた
....
冷たい消毒槽は
三歩で渡ると決めていた
プールサイドの足跡が
しゅわしゅわと、夏にしみこむ
浅黒い肌の散らばる奥に
見え隠れする
白い朝顔
先生の御子だという
なるほど、鼻筋はそっ ....
封を切った宇宙からは、
懐かしい薫りがしました。
お久しぶりです。
と、
挨拶をして、
あなたを二匙。
ゆっくり沸かし、
ふんわり注ぎます。
....
腹に響くエイサーの
どごん どごん
飛び跳ねる常夏リズム
どどごん、かつ、かつ
手踊りが咲き
歯は白く輝き
乾いた{ルビ三線=さんしん}の{ルビ音=ね}が走り出す
空を切り裂く指 ....
女はいつも災いをもたらす
憂いを含んだ微笑みで
鏡に向かい髪を梳く
後ろ姿に見惚れてはいけない
鏡の中の女と
視線を合わせてはいけない
男はいつも災いをもたらす ....
■■■■
ああ またいないんだ ■■■■
抱きしめても ■■■■
抱き返してくれない ....
草原の海に身体を沈め
その波音を聞きながら
清らな青空は
入道雲に右から左へと染められつつ
その上を鳥が大きな翼を広げ
背中で滑ってゆく
風は波音を強くし
潮の香りを濃くし
今の季 ....
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