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かつて潔く閉じた手紙は風を巡り
伏せられていた暦が息吹きはじめている
朽ちた扉を貫く光は
草の海を素足で歩く確かさで
白紙のページに文字を刻みはじめ
陽炎が去った午後に、わたし ....
あなたは
きえそうなひかりのまえで
手をかざしている
胸元から
オイルの切れそうなライターを出して
何度も 鳴らす
うつくしいけしきの
まんなかにいる
いつも
き ....
夏の終わり
りんりんと鳴く虫の音の響く夜の淵
なまあたたかいぬめり気が
頬をなでる
セックスを終えてアパートを出た後の
このにおい
夏のにおい、のような
記憶のか ....
灰の混じる手で
顔を洗う
灰は髪になる
灰は語る
火が残り
背を照らし
髪の影を燃し
ひとりを浮かべる
月を連れ 別れる
赤い光が 鉄路を去る
隣を歩む ....
手をのばせば はしごはゆれて
いたいけな木の棒が
うながすようにみつめる
登りはじめた私の背には
羽と
足は 鳥のようにまがり
くちばしが言葉をなくして
指が忘れていく世界の風
....
あなたは背を向けたまま一度もこちらを向かなかった
遠くで誰も乗らないバスが走り去っていく音
コップの水が夕陽に照らされて
コッペパンを3分の1
残して 思案する
枝豆とチーズを少し
小さい親指で ぎゅぎゅっ
と 押し込んで
可愛い子 口角が少し上がっているね
『よくできました』◎
「ちゃんと食べ ....
父が逝ってしまったあとも
私たちは変わらなかった
私は
時々メールを送る
ふるさとの母に宛て
その辺の草木とか
カシャリ、と撮って
しばらくして
母が大げさに
電話をして ....
この瞬間に降っている雨粒を
どこまでも遠くへとつないでいく
知らない街のマンションの屋上で
雨粒は途切れていた
雨が降っていない街の
日差しはとても悪意に満ちて
雨が降っていても
雨 ....
静かな蓄音機
音を集めている
風の歌
空のつぶやき
草の声
みんなみんな
吸いこんで
小さな箱に
ため込んでいる
静かな蓄音機
音を探している
小さなざわめき
悲しみ
鐘 ....
Quartz
震えて
終わりと
始まりのないものを
区切っていく
切り刻んで
数をあてる
なにものとも
名づけられない筈の
私より薄くて
鉄も
昼夜をも含 ....
「で、どうやって癒されたいの?」
「んー、冷房効かせ過ぎた部屋で添い寝」
「じゃあ別にアタシじゃなくてもよくない?」
「いや、君が良いのだけど。」
「どうして?」
「好きだから」 ....
夏を組み立てていく
プラモデルのような朝のひかりを
丁寧に地上に接着してゆく
おじさんの他は
みんな寝坊をしている
夏は
すこしづつ組み立てられてゆく
おじさんが
こつこつと夏 ....
水の本を開く
文字は流れ出し
意味は溢れ出し
あとには
水の思想だけがのこる
川によってはこばれ
人びとの喉をうるおしながら
水の暗喩が偏在する
その波の繰り返し
晴天と雨天の交替
....
ウィンカー点けて
スピードを落とす
助手席から夫を不思議な顔でみる
どうしたの
後ろの車が追い越していく
若いカップル
追い越したいのは越させた方がいい
その言葉に驚いて笑っ ....
ボールペンの中
色づけされた決め事が
力を預けられなければ
生きた証をはしらせられないことと
無関係に沈黙している
トンネルに守られてる
暗闇の声達
キャップをとって
かみへ
....
海だ
群青の腕で絡めとられた僕の右足は
ゆっくりと沈む
息はもう随分前からできなくなっていた気がする
でも、
このしばらく使わなくなっている口からは相変 ....
ガタンゴトン ガタンゴトン
少し湿った 夜の闇を身にまとい
姿を隠した列車が
一等星の星屑で出来た
青い銀のレールの上を走ってく
窓から外をのぞくと
夜露がきらきら輝いている
うすい ....
∞∞ 商品ラインナップ ∞∞
「つぶつぶ果肉入り、炭酸オレンジジュース」
ついに登場、新感覚オレンジジュース。
果肉が沈殿しているので、よく振ってお飲みくださ ....
炭酸水のぷちぷち 弾け飛んだ泡つぶが
空へ昇って星になったら
一等星の青がソーダ水になって
ぷちぷち ぷちぷち 泡の星を撒き散らす
夜空が星で埋めつくされたら
僕のコップは薄い青のソーダ ....
あるときから まいにちが
惰性になる 歳月は
ほどかれて だれのものでもない
くちびるの ふるさとへ
錘をおろしに かえる
*いたるところにある給水塔/ちいさな/8月
たとえばこんな狭い
はしごで登る
四角い金網のうえで
果たしても
ぐるりをとりまく
空のもと
擦れすらもしない
僕ときみだったとして
....
07/08/18
余計なことを書いて怒られて
しょげて
とぼとぼ
家路を辿る
だけど
帰る家があるから救われるのだと
思っている
帰る家なんか ....
吠える
獣のように大きく響き渡るような
そんなたいそうなものではなく
ただ
吠える
「俺だ!」と自己主張するにしては
物腰を気にして周りを気にして
吠える
元来声が小さいわ ....
あの日
あっというまに難破した僕らは
流木にもなれずに
世界中の海に散らばった
絶え間なく打ち寄せるくらやみの音色に
安心してしまいそうな
ちいさな木片
ほんの少しの誤り
いく ....
51
手に速度が馴染む
坂道は距離のように続き
俯瞰する
鶏頭に良く似た形の湾に
昨晩からの雪が落ちている
ポケットに手をつっこめば
速度はあふれ出し
また新たな速度が生成され ....
即席のバーベキューセットで
思い出を焼いた
崖から海へ降りる際に
つかんだ植物さえ
根こそぎ収穫した
無人島生活は今日で
一ヶ月目になる
暦の上ではすでに
夏は終わっていたはずなのに
....
木の幹にとまり
無心に鳴いて一週間
地に落ちて
引っくり返った蝉の亡骸
無数の蟻に
体を喰われながら
丸い瞳に陽の光をうつし
両手を合わせていた
早朝の蝉達は
すでに目覚め
茂る緑の木々に隠れ
全身を震わせ、鳴いていた。
無人の母校の校庭で
跪き、両手を合わせ
朝焼けの空を仰げば
悔し涙は{ルビ搾=しぼ}り落ちる ....
微かにまるみを帯びた水平線から
紺、と翡翠色は曖昧に溶け合い
蛍光色のブイを揺らしながら
海風がしろい道を無数に拓いている
目の前に置かれたグラスの透明も
水晶の粒と汗をかき
夕闇 ....
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