すべてのおすすめ
軋む
一歩ごと
軋む
心ごと
逃げ込んだ森は
甘美な瀞が満ち
わたしは愛しい景色を
凍る爪先で犯してゆく
痛む
一言ごと
傷む
一夜ごと
明日を司る月が
昨日 ....
図書館は今日も
中身の無い棚ばかりで
全部で五冊ぐらいしか本が無かった
世の中を模して
広すぎるように建てられている
CDレンタルの店員は
僕がばらまいた小銭を
借りてきた笑顔で拾っ ....
月の咲く頃、青鷺が溺れた
川辺の彼岸花のように 恋に焦がれた
ひらがなの響きで、わたしを呼ぶ あの人
辛辣な言葉を並べるくせに
どうして時々 柔らかく、呼ぶ の
青い紙で鶴を折って、 ....
すくえるものの おちていくすがたは
ただ だまって ながめるばかり
かたちなきものの ながれゆくようすは
ただ あふれて すきとおるばかり
おもいは灰に、
火にちりりと焦 ....
玄関先で可愛く鳴いた
多分 白い綿毛の小さなワルツ
昨日の残りの納豆巻きを手でわし掴み
走って探した
陽だまりの道
僕が好きなものを キミも好きだと思ってた
テーブル越し ....
暗いはずでした
起き上がっても
見えるわけがないと
思い込んでいました
ふすまを開けて
階段を 見下ろすと
一段 一段
角も はっきり
見えるのでした
外に 降り ....
何もない空から雨が
そんなふうに
あなたの存在が
私のこころを濡らすから
見上げても
どこにもいない
雲の
かけらも
だけど
私にだけ感じる声で
....
床に落っこちて卵が割れた
平凡な日常のひとコマ
のはずが
切れて怒鳴りだしたわたしを
誰も止められない
というか
誰もいない
考え直しても
考え直しても
土は崩れ
不意の後悔
ぼくのからだは
安定を失いながら
考えないことにたどりつけないまま
うごめいている
まるで
イルミネイションを顔に受 ....
ふわりと舞う雪が
街の灯りを反射して
今夜は蛍祭りだ
初夏の焦燥をも凍らせて
激しく雷光を放ちながら
吹雪いても、唸っても
季節が渡っていくというのに
冬の丸底フラス ....
君は大丈夫かと聞かれて
頷いたとたんに
胸のどこかがとくんと疼く
いつもそう
小さな嘘をつくたびに
私の中の私はそれを見逃さない
ねぇ ほんとうに独りでも
生きてゆける女 ....
夢の無い画面の端に
流星群が見られると記されていた
濃紺に澄んだ空は
白い あるいは銀や朱に
闇を切り取られている
湿り気の残る髪が凍え
湯上りの匂いが後ずさりする
夜着 ....
僕が転んだ
白い雲がながれていた
僕が転んだ
麦の穂を風が掃いた
僕が転んだ
膝に石を刺した
しんとした痛みを
ただこらえた
何も居ない
笑いごえもない
ひざを押さえた道端で ....
日曜の正午
レストランの店内には二人の若いウェイトレスが
できたての料理や空の器を運んで
客のにぎわうテーブルの間をひっきりなしに動いてる
20分前に頼んだ和風{ルビ手捏=てご}ねハンバー ....
「あなたはね。
卵から生まれたの。
それはそれは痛くって、
とっても大変だったのよ。」
それが母の口癖だった。
嬉しいことがあったときも、
悲しいこと ....
空は啼いているのだろう
風は狂いはじめている
雪の華はその美形を
とどめることも叶わずに
ただ白い塊と成り果てる
清き水の流れさえも
怒涛に変えて
白鳥は真白の吹雪に ....
縦に
横に
斜めに
そして滅茶苦茶に
発つ人
切りつける遮断機
渡す鉄橋、区切る線路
正確な手すり、錯綜する枯れ枝
途切れ続ける白線、刺さり続ける鉄塔
罅割れ ....
冷たくないと
生きていない
熱いと
いうのに
息に かかる
さませないのに
まじれないのに
欠けて
すべって
あらい
まま
さくり
踏まれる
甘くない珈琲を
手の中で
大事そうにしていた
猫舌だと言って
大事そうにずっと
両手の中で
十二月に降る雪のように
ま ....
{引用= 空をイチョウが渡っていった
最初は一枚
次には乱舞
真上を通った瞬間に
くるくるイチョウの形が見えた
落ちてきながら
落ちてはこずに
....
どんよりとした静かで重そうな空を
支えとなるものもないまま「それ以上近づくな」と
睨み付ける
午後三時
そこここに散らばっていた子供たちは
おやつの時間だ、と我先にと暖かな愛に包 ....
隣の白蛇が、
皮を脱ぐ。
彼は失恋すると、
いつも絶食して、
いつも脱皮する。
センチメンタルなのだ。
脱皮する少し前から、
蛇の目は白濁しはじめる。 ....
冬の夕暮れ 老人ホームの庭に出て
A {ルビ婆=ばあ}ちゃんと若い僕はふたり
枯葉舞い散る林の中へと ずんずん ずんずん 進んでく
「 A さん、目的の宝物がみつかりました・・・!」
....
雨よ私の足あとを消せ
あなたのドアをノックして
小さく迎えるすき間から
私は体を忍ばせる
あなたはこんなところで
ビデオテープ
テニスシューズ
見てはいけない写真
コーヒーメー ....
仮に
私たちが住んでいるのが地面ではなく
几帳面に
ジオイド面か何かだったとして
町の上を
風に
山や谷が通り過ぎていくのは
えらい騒ぎだと思うが
空の底から見あげれば
気圧 ....
死期が近づくと
彼等は自ら首を吊って死ぬ
夜に 孤独な木を探してその枝に
縄を垂らして果てる
南の大地は熱い
吊られた身体は素早く腐る
自分ひとりで首を吊れない者は笑われる
ましてや ....
女
愛しいあなたを抱きたくて
透明から青
青から碧へ
変色する
この静かな淀みの池で
禊(ミソギ) する
今夜の月は丸いから
お前、美しい女になるのでしょう ....
グリーンのセーター
さわりごごちがあんまりよくて
緑のなかにとけだした
だれもいない朝の公園
雨上がり
ぬれそぼるベンチ
とぎれっぱなしの会話
胸のアルファベットも
ばらばらになが ....
こぼれる 刃
渡った眼 閉じる
光の ぬかるみに
紡いで 望む両手
つかえる やぐら
踏み 登りつめ
土鬼の から腹
澄んだ 眩暈
刈り取られる風
香り
塞いだ灯の
....
私は海になる
ただひとり あなたのために私は
自分を分解して個体の部分をすべてぬき取り
液体だけで構成された海になる
父になることしか出来ない性の宿命
それでもかまわず
私は母のような海に ....
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