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きみがきみを吐きだそうと くるしむあいだ
ぼくにできることは 背中をさすってあげることくらい
うすい膜にくるまれて 吐きだされたきみが
またつぎのじぶんをは吐きだそうと のたうちだしても
ぼく ....
行方知れず
見つめながら
同じ目になる
夕映えを聴く
鼓動とくちびる
覆うにおいに
まぶた白く
片方ふせる
午後の火が鳴る
遠くをわたる
雲のかたち ....
春を待ちきれず
同棲を始めたと喜んでいた貴女は
近頃、思い悩んで
すっかり痩せてしまっていたという
(僕が、よう怒れへんかったからかなぁ
お父さん、つぶやいて
肩を震わせる
一週間前 ....
きっと白に近くあり
霧雨を含んだ夜のなかに
咲き急いだ桜がひとつ
白く闇を破る
陽射しを浴びて
咲き競うのは
きみ
きらいですか
こんな湿った濃紺の中で
意表を突いて ....
溜め息しか
吸い込んではくれない
空をかたすように
塵や雲の類で
すっかり狭く
小さくなってしまった
あれは
祈りなんて
聞こえないくらい
遠くなってしまったから
また溜め息一つで ....
枯れ葉を踏みしめていく
君の背のように湿った、足取りで
雪はまだ時間を閉ざそうと
道端で爪を研いでいる
忘れようと辿り着いたのに
捨て去るなと
朽ちかけた木橋が
つららを流す渓流で
....
(割れ落ちた心の軋みより流れ出す)
せせらぎの音に我身を任せ
消え入りそうな意識の果てに
あなたの額より滴る汗の熱さを慕う
さよならってどこまでも悲しいのね
狂おしさは許されぬ愛 ....
わたしの私語の中に
あなたはいた
白い百合の花が
畑のようにどこまでも続き
そのようにあなたは
私語の中で
匂っている
しーっ
誰かがわたしの唇に
指を立てる
少し湿った感触で ....
箱入り娘に関する一連の推論は、世界という
もうひと回り大きな箱に対する裏切りのひと
つであり、それを論じる者たちは、それを奪
おうとする者たちと同じく、等しく同じ罰を
受けなければならない。箱 ....
父、抑留始まる
ゴミ箱にクローゼットをしまう
近親憎悪の目に晒されながらも
脱皮を繰り返し
それでもよくケラケラと笑い
スクスクと育ち
糸をほどく
糸は糸だらけになり
パジャマ ....
つみかさなっている遠さの てっぺんに憧れ
冷え切った形の流動する 煙仕掛けのからだ
あら、今日もあいさつをしている朝焼け
分解の森でうすわらい 月の咆哮の真空放電にしびれる華 ....
あなた、むかし、ひとがいました
ひとは足で歩いてました
あなた、でもそれは、あなたではない
足の、裏の、歩くの、速さの、
それらすべては、あなたではない
あなたはまだひとではないから ....
風邪と言われて点滴 二本している時
熱で体中が痛くて でも 身動きとれなくて
イラクで 公園で爆弾を拾って
拾った爆弾がさらに炸裂して
体中に くい込んだ女の子と
横たわる我が ....
私は足場の固まった
真新しいベランダに立っている
腐りかけた古い木の板を{ルビ軋=きし}ませて立っていた時
私は世界の姿をありのままに{ルビ見渡=みわた}すことができなかった
今 ....
私鉄沿線のダイヤに則り
急行列車が次々と駅を飛ばして先を急く
通路を挟んだ窓を
横に流れるフィルムに見立て
過ぎた日を思えば
思わぬ駅で乗り降りをしたわたしが映る
網棚に上着を ....
化石になるときに
石と入れ替わってしまった
私の部分
を、さがしているのです
外側の触れている世界から
入れ替わっていくから
私の肌
は、こんなにカサカサとはがれ落ちて
化 ....
こいしける
そらたかく
おちていく
みどりいろ
はがしげる
はるのいろ
なのはなは
たまごやき
そらたかく
こいしける
ひこうきと
くも ....
ぐんにゃり ぽっぽ
雪の草原を 女は
赤い着物着て
歩いたのだ
ちらほら雪は降ったのだ
女は倒れて
吐いたのだ
赤い血を
青白い空が覆いかぶさる
女は血を指先でなぞりながら言った ....
全国の学生が巻き込まれた
受験戦争は終戦した
人それぞれ勝利したものもいるし
敗戦したものもいる
ぼくは最大の敵
志望校に全力で戦った
だが結果は粉々にさせられ
....
朝焼けに燃え尽くされて 空
「熱を帯びたから、私行くわ。」
そう言うと 彼女の全身から
冷たい汗が吹き出したのだった。
憶えているのは 丸い尻
しっとりと 揉んだ
憶えているの ....
詩集にするために
詩を集めて
何になるんだ
って あなた
詩集になるんですよ
あんまり驚いたので
だって あまり変な事いうものだから
そんなことして どうなるんだって ....
高原行きの{ルビ汽車=ディーゼル}を待つ間
プラットホームの先っぽで
二人は駅弁を食べるんだ
二段になった折り詰めの
おしゃれな駅弁を
うれしそうに開けるんだ
中央アルプスの山嶺に ....
花はそのままで美しい
草木もそのままで美しい
根も葉も茎も枝も美しい
葉が還る土も美しい
あれらは光の受け手である
ケイソウはそのままで美しい
渦鞭毛藻類もそのままで美しい ....
風車が
巨きな時計のようだ
三つの針を吹雪にまかせて
早回しで、ゆっくりとまわる
うなっているのは
雪を孕んで吹く北風
だろうか
誘導電流を生み出すコイルの声
それとも
ただの ....
書けなかった詩の断片が
ちぎれた草になって
風に舞っている
いのちは永すぎる未完
死してなお
始まりにさえたどりつけない 未完
私の夜はいつもと同じ旋律を
内側の街路にまきち ....
道に空いた
吹雪の目に立ち
陽の光にとけだす
頬の雪を聴いている
もうひとつの吹雪を引き連れ
列車が鉄路を通り過ぎ
まばらに記号を落としては
路傍の崩れた家々を鳴 ....
カミキリムシに噛み切られている
僕は薄い紙になっていて
手も足も出せない
手足が出たところで
噛み切られるだけだけれども
昨日までの厚みは
どこに行ってしまったのだろう
でき ....
風にさわる手を
持っている 心
揺らいでいるのは
壁の外 ではなくて
壊す意味も途切れた
伏せた目の奥の ハンマー
持っていられない 紋様を
さらして 威嚇する蝶
かが ....
焚き付けた割り木が
煙と 灰に
分かれていく
土に根を張り
陽の光を 葉に受け
倒れたら
日陰に 宿るものを 育み
倒されたら
日なたに 凍える者を 暖め
遠い水脈 ....
「私がおばさんになっても」と森高は歌った
ついこの間のことのようだけど
もう十二年も前の話だ
その年に僕らは結婚した
つまり、僕らが結婚して既に十二年たった
ということだ
僕は一度、交 ....
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