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苺ジャムから
苺を引いたら
夕日が残った
誰も地下鉄になど
乗ったことの無い町だった
くすんだ陽射しの中
食品工場の隙間では
猫たちがよく逢い引きをしていた
友だちにもみな両親 ....
あの人が眩しく見えたのは
わたしが光に弱いだけで
あの人が美しく見えたのは
わたしが色彩に弱いだけで
あの人の言葉にクラクラしたのは
わたしの心が欠陥建築だったのであって
いえ
きっ ....
反対側のドアしか開かないんだ、と
キュートな顔をして言うものだから
わたしは安心しきって
そのちょっと不便な助手席に座る
もちろん、運転席側のドアから
ドアを開けると
異国のチュー ....
秋の日の涼しい夕暮れ
散歩から帰り家の門を開くと
上から ばっさ ばっさ と
木の枝が降ってくる
数日前66歳になった親父が
はしごの上から「お〜い」と呼ぶので
もうすぐ3 ....
昨日の夜に積もる雪
山も畑も野も川も
どこもかしこも一つ色
朝の光に木の枝が
まばゆく光るこの大地
新たな生が起き上がり
草も若葉も木も枝も
日なた日陰も一つ色
朝に流れるせせらぎ ....
うばすてやまについて考えている
祖母をそこへ連れてゆきたい
訳ではない
昼下がり
冷えた湯呑みが二つ
並んでいる
祖母が歩くと
割烹着のポッケットから
何かがこすれ合う音がする
....
夜の明ける頃
苺ジャムの小瓶を積んだ船が
幅広の海へと出港する
その間にも
私たちには忘れていく言葉があり
その言葉を思い出すために
また忘れられていくものがある
産まれてきたし ....
小さな女の子が俺に
だじゃもん ちょうだいっていう
だじゃもん ほしいっていう
だじゃもん ねえ だじゃもん
だじゃもん ちょうだい
だじゃもん ほしい
そういわれ ....
昼下がり
ちょうど
町までのバスが出た頃
青 空
その青空に
ペンギンは
洗濯物をひろげる
真っ白な
雪のように真っ白な
洗 ....
一 琴引浜
さくら貝は、はかないという言葉がお好き
はかないという枕詞がつくものには
とりあえず歌ってみる
それらはかつては量産されたものだが
貝は、そんな厄介なものは持ち合 ....
僕は虹が大好きです。
どのくらい好きといって、
僕のランドセルが
6時間分の授業の準備でいっぱいになって、
アルトリコーダーがささってるくらい、
そのくらい好きです。
少しわかりづらいけど ....
松の湯
跳ねる湯船も恐ろしく
あれは白鯨モビーディック
いかつい背中の倶梨伽羅紋紋
あまりにも鮮やか過ぎて
タオルで隠さぬ前を横目に見れば
なぜか思わず猿山の猿気分
ラッキョの皮 ....
おしまいは
呆気ないね
今しがたまで注いでいた目線を
手元のカップに移して
囁くようにあなたが嘆いた
続けてのため息は
ほんのり紅茶の匂いで
外には
すぐそこに夜がある
北西 ....
女にふられたので、
正確にいうと、これから女にふられるので、
稚内へ行って死のうと思った。
なんで稚内かというと、
日本地図を広げてみると、
いちばん遠いところがワッカナイだったからだ。
....
身分証明書を
と言われて財布を探ったが
パン屋のレシートがぱらりと落ちただけ
カード入れにはブックオフのカードだけ
午後の図書館だった
カウンターのミセスは
住所と名前が記されている ....
昔々、日々は葡萄狩りだった
形よく大きなものを探し廻るのに懸命だった
憂鬱は出来事などでなく世界そのもので
頬を切る風は冷たいけれどやさしかった
横から奪っていく手のことなど ぼくはちっとも知 ....
【睫毛の先】
もう
恋なんぞしない
と思って泣き続けたら
はらはらと
睫毛が残らず抜けてしまった
恋は
睫毛の先に止まるという
以来恋をしたことは無い
【 ....
そのころ、と言っても今でもそうなんだけど
僕の遊ぶベースは六本木で
ヒマがあるといつも
終電でやってきて始発で帰る日々を送っていて
仕事の知り合いよりもこの街の知り合いのほうが多いとい ....
コスモスがひっそり旅立つあたしに
手を振るように右に左に揺れている
大丈夫だよ
哀しみはあいよりも深いよるが
すっぽり包み込んでくれるから
ほら、あなたのおもひ出が紅く
あかく、大地ま ....
立てないけれど
座れないけど
折れ曲がったままの手だけれど
すり抜ける記憶だけれど
えむは
翼を
手に入れた
深い深い
カーマインの翼を
決して
折れない心を
....
あれは大阪長居の安アパートに転がり込んできた僕みたいに
公園の木の上で啼いているのを 当時、純朴だった妻がみつけ
憐憫の情が働いたのかどうか
拾ってきた、傷だらけの尻尾のちぎれた子猫だった
....
落武者たち
刈られ逝く者達
農民たちは鋤鍬持って
彼らを刈る
ある者は恨みのために
ある者はお楽しみのため
失ったモノのため
愛する者のため
戦は終わっても
収穫は続くのだ
寂しい気持ちが居座って
なかなかお帰りになってくれない日は
意地悪な人のふりをしてキッチンヘ
「今日は、アボガドサラダを作ることにします」
まっぷたつに切ったアボガドを左右にずらし ....
電車は学芸大学を過ぎた
橙の薄日が
くすくす眼を射り
わたしは数年前に
逃がしてしまった犬の事を
茫洋と考えていた
毛並みの良い犬だった
ルクスと云う名で呼んでいた
或る日鎖をひき ....
湖の絵葉書が届いた
大して親しくなかった人からだけれど
きれいなので捨てられない
大して親しくなかったけれど
その人を思い出す
お互い積極的に話しかけていれば
きっといい友達になれ ....
急いで道を歩いていたら
目の前の車が{ルビ理由=わけ}もなく止まった
(下手な運転しているなぁ)
車と壁の狭い隙間をすり抜けると
痩せこけた若い母が{ルビ咳=せき}を繰り返しな ....
窓外に
枯れたまま{ルビ俯=うつむ}く
{ルビ向日葵=ひまわり}
夏
辺りを照らす
太陽の花に
振り返っていた人々
秋
{ルビ独=ひと}り汚れ身を{ルビ晒=さら}しな ....
ごめんね
今まで気づかなかったよ
赤や黄色の季節の絵の具で
みずみずしく重ね塗りされた
桜の木の葉っぱの影に
ちいさなちいさな
土色の蕾
今までずっと蕾は ....
弁当を開けると
中に海が広がっている
故郷の海のように
凪いできれいだった
朝の静かな台所で
君がどんなふうにこれを作ったのか
想像しようとしても
後姿しか目に浮かばない
帰れ ....
ふと庭に
光漬けになって
泣きだしそうな 彼女
まぶしいのは
もうまくがやわらかいから
だったろうか
もし
私が死んでしまっても
このせかいが
ぷつんと
終わったりしま ....
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