雀ほどの大きさの塊が手の中にある。線路に沿って歩くと片側がコンクリートで補強した斜面になり、さらに行くと竹藪の奥に家屋や井戸が打ち捨てられている。その先には登山道に続く道端に白い花の群生。あそこまで行 ....
ふうと
ため息がでる
皺が増えるだろう
夢が失われるだろう
シーツに潜り込んで
嗚咽を堪えて
涙を拭う
息を止めてみる
ほんの少し
救われない気持ちが広がる
この一 ....
誰にも染まりたくないと
思春期の残骸のような思考を張りつけたまま
自由と空虚の違いもわからないでいる
ただ過ぎる時間に沈んでいくだけの日々
ねぇ
そもそもわたしは誰で
....
年末が近ずき 第九のシーズンがくると
いつも 憤りを感じる話がある
それは
楽聖ベートーヴェンの第九に
呪いがあるという話だ
ベートーヴェン以後の
有名な作 ....
あたし、わかってしまった
あたしの詩が、
どうしてこんなに軽っぽいのか?
いらっしゃるでしょ?
読んでいるだけで、こころ洗われて、
とても清い気持ちになれる
こころの深いところ ....
お袋が危篤
数年に及ぶ認知症の果てに
俺を産んだ女
俺を育てたかも知れない女
ほんとうはほとんどほったらかしだった
親父の母親に任せっきりで
自分は金を稼ぐのに一生懸命だった
....
幽霊に触ったことがある、と話してその日は家に帰った。心の隅にざわざわと騒ぐものが現れて遅くまで眠れない。布団から起き出してコップに牛乳を注ぎ、壁の前で飲み干す。一人で暮らしている私の肩に触れる無数の干 ....
白梅/
三月の梢に白梅が一輪
打つ、打つ、秒針が打つ
朧夜の風は一握の砂
一握の砂は白梅の香
散る、散る、白梅が散る
白梅の梢に静寂が一輪
竪琴/
月の寝台 ....
(時は1829年10月 ショパンは19歳
恋心にときめいていた)
今はただ せつなくて
好きなのに 言葉がでない
きみの前では
なにもいえない
....
月曜日は買い物日和だ
砂漠の中のショッピングセンターへゆこう
遠くの部族が集まる日曜日よりはましだから
きみの前髪を上手にきってくれる人をさがそう
くだらない思想でこころを壊さないよう ....
朝が来て
鳥のように飛び立ちたくなりました
一夜あなたの存在が途絶えただけで
小さな胸の大きな不安
今日の朝陽が呼ぶのです
風に乗りなさいと誘うのです
空高く飛びなさいと心 ....
リズムの残骸は、砂浜に沈んで、視覚障害者の見る幻覚みたいな朧げな輪郭だけが、晩夏の太陽のなかで揺らいでいた、それはジェファーソン・エアプレインの音楽を思い出させた、敢えて違うところで繋がれたパズル ....
リノリウムの床を靴で鳴らせる
スタジオ風の洒落たロフト作り
ピアノの鍵盤に染み込んでいく
石油ストーブの匂いを弾いた
鼻で感じる冬の気配はいつも
レッスンの後に出されるコーヒー
....
多彩ないい句が出来たので
私は回って回って回って喜ぶ
市電がイチョウ並木の間を縫う様に
行けば車窓から見える田圃よ生きろと
思う、稲穂、刈田、稲雀など
季語もいっぱい
ちょっと前まではもう ....
きのうまで
かれていた花が
今朝起きると
元気に咲いている
たしかに黒ずんで
かれていた
水がえなどはしていない
ただきのうの夜は
....
茄子にソースをかけたものを食べて外に出た。人が叫んでいる。何事かと思うがこの目ではよく見えないので構わず歩いていく。車と車の間には程よい間隔があってところどころにきれいな売店も出ている。ジュースを買っ ....
突き飛ばされて線路に落ちたそうだ。痕が残っていたとのことで恐ろしくなる。数人で肩を寄せて話しているのがガラス越しにぼんやりと浮かび、途切れ目から足元だけがくっきりと見える。いろんな靴を履いていて、男と ....
ほんとうなら、あの夜は
晴れて、きれいに星が見えるはずだった
それで、ほんのりと酔っぱらって
ふたりむかしみたいに、仲良くなれるはずだった
けれど降った雨を
うらんでなんかいない
傘を ....
みずうみにゆく日写真を束ねる日クレヨンもらう日いま 生まれた日
君の背に
あらたな白い帆があがる九月
夜明けのうす青い空に
銀色の雲
君のその帆が
どんな風をはらんで
君を何処へつれてゆくのか
君は半ばは予感し
半ばは不確かさにおののいている
....
背中を向けると
トンネルになる
黒づくめの夏服が
消えるまで
面影を見てた
数秒間に流れた記憶が
今を感じる
渡っていくのは
青信号でも
赤信号なら
止まってくれる
....
とある街で
金木犀が香る
だけど金木犀はみあたらない
探しているうち
何年経ったろう
すっかり風向きは変わってしまった
行きついた先で
仕舞い忘れられた
軒先の風鈴が鳴った
....
年寄りに暗証番号はいらない
郵便局に行ったら
近所のばあちゃん二人が
ATM の前で暗証番号を言いながら
何回も操作を繰り返していた
何回やってもうまくいかないので
郵便局の人が
「じゃ ....
対位法で
計算され尽くした
バッハの
時をこえて
繰り広げられる
音楽の空間にいると
数学の方程式を
解く時のように
頭が回転する
....
くらいくらい 荒野につくりあげた
復讐の塔に閉じこもり
「ひとりだ」と呟いたら
はたかれた
ひたすら 喪いすぎたのだろうね
青い夕暮れに細い声でないてさ
耐えられないわたしを ....
心は数にはあまり似ていない。
どちらかといえば、数と数をつなぐ、演算のほうに似ている。
その演算が、僕らを突き動かし、無数の鮮やかな数式を描いていく。
その式の出す結果に、救われたことも、
傷 ....
暑い夏がすぎた
ころ、
スーパーでは
松茸や
梨、
ぶどう、
秋刀魚が売られている
家では
百均かどこかで買った
ステンレスの型抜きを使って
たくさんの紅葉のかたちの人参を作る ....
針女について語らなければならないだろうか。そんなことができるわけがない。私が言えるのは彼女の舌、真っ青なその上に無数の針が針山のように刺さっていることだけであって、他の何一つも許されてはいない。自分で ....
遠くで鐘が鳴っている
ひんやり切ない秋の日に
何処までも高い青空に
追いかけても追いかけても
決して追いつけないあの場所で
(金木犀の花が軌道を舞い
秋の大気が生まれるところ)
遠く ....
何かどうでもいいことを
左の手のひらに一つ
何かどうでもいいものを
右手の人差指の上に少し
噛みすぎたガムを耳の中に一つ
冷たすぎる水をまぶたの中に少し
はみ出した友達の
後 ....
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