僕はこんな場面に
出会うことなんてないと思ってた
君が誰かなんてわからないまま
終わると思ってた
今、すべての海に
つながる波を二人で見てるんだ
太陽がゆっくり熟して
気味の悪い ....
髪の毛の抜ける軽さで舞いあがったビニール袋が
ハの字に並んだ社宅のあいだを海溝にして見えなくなる
溶断した五線譜に置く
冷えた喧騒のフェルマータ
胸底のゲル状濁点や句点硝子の乱濁流を ....
頭の中の
折り紙が一枚
翼を広げて
羽ばたいていく
飛行機雲の
交わる中心に
何かがありそうな
期待を乗せて
水溜りに映る
青空へ触れて
ガラスの表面を
砕くよう ....
どうぞよろしく
この空をただしさが覆いつくし
こまかい罪のすみずみまでがあかるくされ
わたしは死ぬ あなたも死ぬ
ねずみも くまも うさぎたちも 間違いなく死んでいく
さいごにはみずうみ ....
西武だったビルを背に
錆かけたブロンズ弦を掻き鳴らす
白い腕ばかりが気になって
歌なんかまともに聞いてやいないけど
クラーク先生に忠実な彼の愚直さに
譜面台にぶら下がった「日本一周」の文字に ....
夏は嫌いだ。
だから死ぬなら、突き抜けた青い空がどこまでも続く夏の日がいい。
死に方はなんだっていい。じぶんで自ら命を絶とうが、誰かに命を奪われようが。
だけど、死ぬ場所は室内がいい。
窓に四 ....
いつの世にも
悪法に泣く庶民がいる
遠い昔の 生類憐れみの令
そのお犬様は
今はリサイクル
リサイクル リサイクル リサイクル
リサイクル様のお通りだ
税金 ....
昔々ある山の麓に、綺麗な水を湛えた大きな湖がありました。
水際には雪のように真っ白な小さな花が咲き乱れ、いつも、きらきらと揺れながら、囁くように唄っていました。
いまは昼。 のちに夜。
....
少しだけ
冷たくなった風が
両腕の周りで
遊べるように
選んだ半袖を
迷うのもあと
どのくらいかな
素肌を感じる
心地よさを知った
僕の体温は
低いのだけれど
夏の太 ....
見えているのに見えないふりをしている。うっすらと埃の積もった本棚、弱っていく観葉植物の鉢、皮膚の下の小さなしこり。生活が生活でなくなり、わたしが人間でなくなるのはどの冬の真夜中なのか。水道から流れる水 ....
決まり文句のような言葉
諦められないのですよ、言葉を、
はだかのいろをした、
ピンクっぽい恥じらいを。
おひさまが死んだと思われなくて
悲しみの原色を体験した
ただ、心地 ....
わたしのみていた きれいなそらを だれもがみていたわけではない と
おしえてくれた ひと がいる
お金もなく居場所もなくからだ しかなく
ゆびさきはかじかんでいて いつもうまれてしまったこと ....
知らない道を歩いていた
傍には紫色が浮かんで、流れて
花には見えず
人間にも見えない
夢の残滓、と認めて
あとで整理するために
香りだけ持ち帰る
知らない惑星が
いつの間に
か
背 ....
やさしいかぜがふいている
たのしいおんがくもながれている
ぼくはどこへゆくのだろう
せいしんろんがきらいで
むぎのほのようにじゅうじつして
つづきに認める混乱した地平線とx
遅すぎない、遅すぎない、ついに私は
カペラと過ごす一夜を忘れて
助けない、だからなにもしない
近いを縦に灰色の中心地
目で譲り受けてから忘れ得ない声 ....
風をよけながら
歩く空の下
誰かに守られるような
両腕のゆとりが愛しくて
袖を引っ張って
確かめる生地が
暖かさで伸びませんように
おろし立ての
秋のプレゼントを
か ....
あれは高熱で友人の家での介護から帰った日だった
何通もの速達が届いていた
電話をください
父から
そして今になっても聞こえる
二階の昼時の母のスリッパの音
....
もう一年になる。トラックが子供をはねて今もそこに白い花が供えてある。途切れずに誰かが、たぶん遺族だと思うが替えていて、そこだけいつも瑞々しい気配が漂っている。夜暗くても甘い香りがして花が供えられている ....
それは夏の嵐の夜であったが
積乱雲の割れ目から
夜目にも鮮やかな新星が見えた / 見えた気がした
暗い湿気た空気の中を
零れ落ちて 光の粒よ
光の粒には質量があって
重さが ....
脱ぎ捨てられた革靴にすんでるゆめみたいな気配
のどの奥がかゆくてくるしくて
頭にあなをあけて考えてることがみんなだらだらあっと流れていったら楽だなとか
2番線ホームのまん中くらいからみえる公 ....
あの時代に街を彷徨う男は
夜の気配のする街角で
剣玉を所在なげに操る
夕暮れの街灯の下
足を組んで剣玉する男一人
街灯から降り注ぐ
まやかしの光の粒は
ぼーっとした色を男に与え
髪 ....
南東の低い空に
月がともっている
線香花火のさいごのよう
それがとつぜん
すっ、月がずれた
吐き気がした
めまいがした
車を走らせていた
ラジオから ....
嵐は
吹きすさび
すべてを舞い散らかしているよ
母の死骸は花びらとなって
わたしの風に抱かれている
天高くつたい
成人後にまた再生した
死によってこそ記憶された
おおくの命を
そ ....
お義母さま
あきの こごえです
朝風に 精霊バッタの羽音が
そっと 雫を 天に すくいあげています
何が終わったのでしょう
もう はじまりはじめの空
むかしむかしの反対のはじまりのはじ ....
適当に引っ張り出したTシャツから
今は使っていない柔軟剤の匂いがする
どうせ乾いていく通り雨の先
住宅街の暗闇でこっそりと線香花火に火をつけて
笑い合っているうちにぽとりと落ちた
光の ....
北の
夏の終いの翡翠の海に 金の夕映え
ありまして
黒い夜 黒い波が
どこからか押しよせてくるのです
どこからか
ひえてゆく 色とりどりの浜辺でね
赤いカーディガン羽織った ....
僕は一枚の紙
美しい物語が綴られるはずだった紙
だのに、その表面は虚しい無地のまま
降り止まない雨に打たれて
溶けだしてる
ある晴れた日、道行く人々が
ふいに風に舞う紙に変 ....
あのひとは損な人だった。
15歳くらいまでにやられたこと言われたことがえげつなすぎて、本当にいい思い出がない。やはり亡くなってスッキリした、と思うたびに、風穴が空いている自分を知る。
....
遊歩しよう
忘れられた花園を
青ざめた果樹園を
影色の桟橋を
空中に漂う墓標たちのあいだを
谺たちが棲む迷宮を
天使の翼のうえを
玩具箱の中を
空へと伸びつづける孤塔の尖端を
傷だら ....
手稲山の頂辺りに白いものが見える
――書置き 今朝早く来て行ったのだ
見つめる瞳に来るべき冬が映り込む
雲間の薄青い空
氷水に浸した剃刀をそっと置かれたみたいに
張り詰めて でもどこか 痺れ ....
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