琥珀のスープを
飲み干した時
同じ体温で
冬を知りたい
サラダの鮮やかな
赤い野菜に
つまづく事なく
食べられたら良い
パスタの重さが
運命のように
口の周りで
踊り出す ....
背中にぜんまいがついている。それがすべてのヒトの動力源だから、必然とそれを回す力が必要になる。
果たしていつからそんな仕組みに変化したかは解らなくなっていて、それを追及する行為には死の罰則が待ってい ....
空から見るあなたの町は
海の青と畑の茶色い区画だった
あんなに焦がれた都会を離れて今は
子どもたちとツリーを飾ってる
温かいシチューを振る舞って
電飾を灯す
みなが眠り ....
歌は、
今夜も眠りをいざなうだろう
僕は、
この部屋にながれる
美しくも、切ない、哀しげな調べを
オーティス・レディングの歌声を
....
遠い友達が
泉に雪が降ったら教えてください
というので教えてやることにした
だが雪は降らないよ
当分
降っても泉には
積もらない
たぶん
間近に迫る山の頂が
雪を冠った
晴れた ....
空を何かに例えなさい
薄いノートに綴りなさい
たとえばひどく年老いて
頼りない犬のような
寂れた町のおじさんの
何もない後ろ姿のような
空
空がゴロゴロなっている
雪迎えの ....
人はいつか死ぬんだなぁ
ぽつんと呟くと
目の前の息は
なお一層 青くて淡い
小さく繰り返して
また繰り返し
・・・蘇生するってさぁ
・・・苦しくてねぇ
海底の沈没船 ....
日々の傾き
わたしたちは
あかくなる木々にもおびえて
言葉のすき間に
場所をもとめた
磨りがらすのように
ざらついた気持で
いっさい誰のものにもならない
なにひとつ手にもたない ....
名指され得ぬモノ
今刻々と
降っている降っている
*
獣の声、
響いていた
死者の声、
響いていた
師走も端に走りいき
年の瀬都会の大渋滞
怒涛の静けさ霊園墓地に
ほの ....
小さなもののことを、
小さなものが話した。
それは針の穴を抜ける糸のように細く、
ティーカップにスプーンを浸したときに沈んでいく、紅茶の葉のよう。
大きなもののことを、
大きなもの ....
手放したコートが風に舞い
風がコートを羽織っているようだ
見知らぬ少年がそれに目を
奪われている足元には
踏みつけられた草花が痛々しい
何も人に与えられないから
たまになんでも手放してしま ....
おはようと さよならと
犬の鳴きごえ 耳の色
右手のかたち 指のおと
この世界を忘れるために
規則ただしく生活をして
この世界を忘れるために
夢中で愛や夢をして
おはようと さよ ....
黙りこくって下ばかりみて 歩いていたら
花が咲いていた 枯れ葉が落ちていた 色とにおいと
たまに ぽかあんと 空をみあげると
ひろくって 青くって ちょっと吸い込まれてしまいそうで
....
歳を重ねる度に
人間の落とす雫の大きさは
段々と小さくなり不安を感じるが
そんな時は気晴らしに
美術館の近くを散歩をして
入館して色々な絵画を見る
偶然か
横断歩道の向こうに
....
「イルミネーションが点灯する季節になった」
と書き始めてやめた
苦しいときに苦しいと言い
俺のために俺のためと言った
会社員はやめたから空は明るく
ここは田舎で風が冷たい
悲し ....
枯れたバラ園のそばで
鮮やかな過去に埋もれて
もう聴こえないヴァイオリン・ソナタの
朧げな旋律を追いかける
厳しく美しい冬
風は心の奥まで
凍らせようと目論んでいる
死んだ土をす ....
そういえば蛾を見ない
みのむしなんかも見かけない
Wi-Fiのせい?
そんな気がする
もうやけになって
いっそ世のため人のために生きたくなる
そう決意するのでは ....
夕暮れという輝きが街を流したのは
言葉が言葉になるよりも、ずっと前のこと。
地平から幾筋にも分岐した時間は
人びとの膝下で、打ち寄っては引いて……。
わたしは誘われている。
どこ ....
*
それでもいい
遠い足音の偬しみも
かわした言葉のすべてが いつか跡形もなくても。
ぼくらの中にだけ積もってゆく
ただ、それだけ、であっても。
純度の高いまだ ....
夏コミ
ガロイ先輩の冊子の山は夏の氷のように無くなり、最後
の一冊を手に、どうしてこんなもの、と皆目見当もつか
ない僕に、代々木駅掲示板のカリスマだったんよ、とチ
ブラさんが明後日を見なが ....
女の人には閉経があるのに
男にはそれに相当するものがなんでないんだ
女の人は閉経によって妊娠と月経から解放されるようだけど
男は生殖からけして解放されないって訳かよ
ある意味公平じゃないん ....
ソテーされた鮭が
鮮やかなピンクの身を
煌めかせ
固く炊き上げられた玄米が
香り立つ
岩のりが添えられた
ほうれん草の緑は
彩りを添える
しかしながら
これらの魅力的な惣 ....
青い雨が
灰色の空から降り落ちる
夢の中
白百合の頭部が
ポツリと
落ちる
小さな三角形の帆を張った胸が
なみだの波紋で揺れている
だれにもしあわせを
届けてあげられないので
....
光の空、
いよいよ透明に青散らし
冬、深まる
深まる冬に
強い熱放つ、
太陽は天に貼り付いて
霊園に佇む墓石たち、
しづかしづか 白骨を打ち鳴らす
水を運ぶ両側で
一つの墓石 ....
燃え上がる
刃、突き立て
燃え上がる
沈黙の極みのこの夜に
刃、突き立て
燃え上がる
コトバ、ことば、言葉よ
おまえの響き
俺の脳髄を串刺しにし
後頭部から抜けていけ
....
私には友だちが
100人くらいいるけれど
ペンだけで繋がっているのは
あなたひとり
あなたが何処にいるのか
私は知らない
都会か
田舎か
火の国か
水の都か
....
ねずみ色の雪が降る
空は赤く明るく
紫の月が欠けてゆく
ほころびて
深まる冬が
満ちてゆく
少し怖くなって
駆け出した
他人のことを
ジロジロと見たりしてはいけない
それくらいのことは
分かっている
けれど見てしまったのは
決して見とれた訳ではなくて
動きが怪しかったから ....
まぼろしの人は戸口を開けて、歩いていった
後ろ姿が遠のいてゆく
夕映えへ連なる… 小さな足跡
――それを誰かは数珠と云い
――それを誰かはロザリオと云い
*
木漏れ ....
夢の蝶、舞う
遠去かる
宇宙の縁に触れ 燃えあがり
忽然と消え また現れ
あらゆる現の美をよろめかせ
その軌跡のおぼろな輪郭を
響かせて 響かせて
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