鶴橋の町で五〇年 湯を炊いてきた
百草湯の源田のおやじが 今年亡くなった
あれは夏の午後
「湯を炊く」と言い残して赤十字病院で息を引きとった
おやじは享年七七歳
銭湯が寂れる中 おやじは ....
朝が黒い
青黒いし
青灰色の
朝が白い
シン・ゴジラを1.7倍速で観ていた
多くのひとが早口で喋ることが
正しいかは別にして災いを遠ざける
朝が黒い
....
語り過ぎるのだよ
いつだって
僕たちは
母が母でなくなる時 母の手はふるえる
乗り合わせのバスは無言劇
親切だったおばさんは 母の乗車後には夢になる
向かう先はお山の真上の病院で薬をもらえば
また手が ふるえる、ふるえる、大量の薬を ....
あなたは
野の花のよう
風に吹かれて
揺れている
喜んでいる
微笑んでいる
自由なんですね
教えてください
そんな生き方を
わたしにも
教えてください
キラキラと輝く瞳
よどみ ....
僕たちは、また新しい朝陽に出会うだろう。
僕たちは、また新しい夜空に出会うだろう。
僕たちは、また新しい言葉に出会うだろう。
僕たちは、また新しい自分に出会うだろう。
僕た ....
気にしないでいいからと
そんな優しい嘘を
ぼくみたいについてくれ
閉店まぎわのパン屋にはいつも
じぶんの好きなパンをとって隠す
アルバイトの女の子がいるから
....
三万粒の種を蒔こう
言の葉を繁らせる
たった三本の木のために
三百の花を摘んで捨てよう
人の心を蕩かすような
たった三つの果実のために
その一つは
時鳥に啄まれて逝った
またも ....
こんにちは。(これは人工音声です)
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ぼくたちは普段生活をしていて、だから電化製品が好きで、きみの名前はコジマで買ったからコジマで、コジマは買いたての頃、すごくカタコトだった。ケーコートーの ....
秋の横顔は
暮れる空を向き
旅立ってゆく鳥の影を
ただ見送っている
あなたも早くお行きなさい
手遅れにならないうちに、と
バスは来た
回送だった
けれどいったいどこへ戻るというのだ ....
仕事もテストも駆け引きも
さいきん連戦連敗だ
もう少し若ければ
人生を投げ出してしまいそうなくらい
生きてきた自信かごう慢か
叶わないことに慣れてしまったってことか
....
安心やよろこびというものは
じつに居心地のわるいものだ
だから不安にもなるのだろう
不安や悲しみというものは
だれにとっても心地いいものなのだろう
だからいちいち
....
伝えようとした
なんども 白い指先が
――風のすべり台
すばやくくぐって
冷やかさ
保てず
触れるや否や
潤みほどけ
数えきれな ....
うそつきで軽薄で
また、いい加減で
仕事が長続きしない
have a good life
have a nice day
透明な、透明な自分が
日銭、また日銭
ここにある体 ....
払い落とされるのが
私自身の精霊と言えるものであるならば
もう悩む必要はあるまい
リンゴが落下する
画家は決して筆を取らない
これに関しては逆らえない伝手はないし
永遠の壺の中 ....
足したあとで引いた
寒い店で電気ブランを飲む
夜の新宿 昔の女の耳の形で
魂は柔らかく{ルビ凝=こご}っている
お前には情熱というものがないと云われた
....
少しだけ人になる人
背のびをして
外を見る
雨の花がひろがっている
光は近く 遅くなり
音は速く速く伝わる
何もかもが光ではいられない
水の水の水の底まで
....
蒲公英の繊毛には色がある
白色は視覚化されるが
赤、青、紫、橙は花の妖精しか見ることができない
その色によって着地点は既に決められている
人間の心も同様である
人間の妖精は太古に滅んだ
....
うずまいている
くちびるのはしっこ
うすむらさきの花が咲く
あおむけに
空をながれて、雨になり、
しみてゆく
漂白されたつぼみ、みたいな
女の子
こわれないで
きりきりとはりつめては ....
あさめがさめたらなにしよう
ゆめのつづきはよるみよう
きょうのごはんはなにたべよう
だれかとあったらおはようさん
ふたことめにはなにいおう
おひさまのぼればこんにちは
てくてくあるいてどこ ....
冷え込んだ街の空気がしつけ糸になる
瞬く間に指先から地球の温度に馴染んでいって
フェルトのように絡み合う
人間も冬眠できればいいのにね
美味しいものをたくさん食べて
寝床に綿を敷き詰 ....
AK-47の薬莢が
地面で弾ける音をヘッドフォンで聴いている
厨房ではたった今
ナンプラーが回しかけられ ぼくたちはまた一歩
首都から 遠のいていく
海岸に並べられた
籐のゆり ....
ゆーらりと
死のただ中で生きている
明滅するたましい
骸骨が怯えている
カタカタと音を立て
ボルトが緩まり 腐食する身体
錆びついた心に映る闇と光
絶望か諦めか
すべてを受け ....
昏い水の底で物言わず
新緑の葉の中で光を浴びず
紅の空に鳥は飛ばず
左翼を失った飛行機が大気圏を超えた日の話
毒入りの林檎を食べてしまった少女は
想定内の死を受け入れて
夕立の中美しく ....
内堀通りを青山通りまで
皇居は暗くて見えないけれど
そんなに高くはない高層ビルの明かりが
なんだかとても優しい夜
自分を傷つけたら追いかけないで済む
だから自分を傷つ ....
こうやって行き交う人びとや車を見ていると
気が遠くなりそうになるよ
いったい私は
どこから来て
どこへ行くのだろうかと
生きていくための仕事も疲れるし
毎日同じことの繰り返し
気を失 ....
雨が降っていて
部屋が暗いので
昼ひなか電灯をつけ
本を読んでいた
一冊読み終えた頃
午後の日が
レースのカーテン越しに明るく射してきて
半透明のゼリーの中から
外を見ているよ ....
時は
風のように流れ去り
人は
いなかったもののように去っていく
老人は
思い出に生きる
夢のような思い出に生きる
昨日のことすら
昔のことのように思えてくる
取り壊された実家跡に立 ....
私の声は気まぐれで
声が出たり出なかったり
原因不明の失声症
おそらくストレスのせいらしい
私の生活は不規則で
心を病んでからというもの
ほとんど家から出ていない
たまには外出もした ....
とりあえずのチキンは食べられてしまって
ぎゃばんのseasoningが恋しいクリスマスも近いし
ぼくのなかの騒がしい自由は休憩しているのだろう
忘れさられる歌を今日もうたっているし
....
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