ちいさく頷きながら君が去ってゆく夢を見た
現実はそう変わらなくてなにもたくらみは仕掛けられてはいない
年老いた少女はいつも夢の花をアレンジメントしているのだろう
丘の上の孤独な愚か者はさらに ....
原色が好きだ
亜熱帯のようで
故郷のようで
真夏のように明るく
子供のようにシンプル
楽園のようで
希望にあふれていて
好きだ
原色に染まりたい
....
玄関前から姿を消して
死んだと思っていたジニーは
台風が去って
ほとぼりも冷めたころ
ウッドデッキの隅に見えない糸を張っていた
風よけに集めておいたプランターを
少し動かそうかと身をか ....
いのちやたましい
こころとかからだ
ニュートンもアインシュタインも
森敦もサルマーンルシュディーも
この宇宙の法則性や人生のからくりを
知りたくて知りたくてたまらなかった ....
早く夏が終わんないかなって
思っていたのに
終わってしまうと
なんだかさみしくて
早く秋が来ないかなって
待っていたのに
秋は
なんだかよそよそしくて
友達だったはずなのに
....
不機嫌な顔を見る度に
私の中には灰が積もる
決して消えない黒い灰
怒鳴られる度に
風が吹く
押し殺した怒りの熱風が
出口のない憎しみが
私の心を蝕んでいく
私の手足は憎しみで動き
....
イスラエルで扉が閉まる
イスラエルで風呂蓋が閉まる
全ては南からやって来た(時には西からも)
ガンダムの閉める扉や風呂蓋が
ゴミをまき散らしていた
イスラエルのガンダムだった
癌で死んでも ....
音楽が辺りを小刻みに震わせる時
からだが先に踊り出す人
静かなうねり 心地よい慣性
グラスの中のブランデーのように
心は 甘く揺らめいて
音楽が辺りを小刻みに震わせる時
暗い片隅に ....
カニの絵を描いていると
エンジンの吹かしがあり
ポケモンマスターのサトシが
やって来る
「ええ」が口癖の社長が
ジードを連れて来て
カニの絵を邪魔するから
私はエンジンの吹かしに
注意 ....
五十も近くなって
懺悔の意味がわかりはじめた
世の中は夢まぼろし
そこにとらわれていたら
真実と同居できない
夢まぼろしにとらわれてごめんなさい
真実と同居して ....
ある日
詩人の詩を読んで
自分は詩人であると知る
ある日
詩人の詩を読んで
自分は詩人ではないと知る
ある日
同じひとりの人が
そんなふり幅で
弦も響いて
からっぽだから余計に ....
ジニーが死んだ
名前なんかつけたから
何度壊してやっても
やがてまた同じところに低く浮かんで
逃げもしないし
玄関横の
しろい壁とオキザリスの
プランターの間を斜めにつないで
全然邪魔 ....
前は呑んでたけど
今はもうやめた
酒に縛られ ....
月までは案外近い
いつか行き来できる日もくるかも、と
あなたはいうけれど
それが明日ではないことくらい
知っている
人は間に合わない時間が在ることを知っていて
間に合う時間だけを生きてゆく ....
小石を拾うと
小石が落ちるときと
逆の音がした
それはつまり夏の音であり
連日の雨から集まった夏の電信である
つめたい夏には
小さなものばかりが集まる
小鳥が鳴いたあとの一瞬の静寂や ....
突き動かされるように起き出して
昨日の残り物を食べている
いよいよ目がおかしくなってしまったかと思うほど
朝陽が濃い水色に輝いて
鉄臭いカーテンがそれにならってたなびいている
地獄のよう ....
工事現場の空を
トンボが
とんでいた
過ぎ行く夏に
思い出の詩たち
とまどい
惑った
言の葉のリボン
また来る夏のどこかで
ほどけばいい
それまで
しまっ ....
行きたい場所があると思う
過去の感情を大切にしたい
空洞になったとしても
続いてゆく所作に美しさがある
真夏でもひやりと冷たい樹皮のような
さめた しなりとした摘み心地は
暖かくな ....
.
伝言:〈先に、宇宙に居ます〉
2つの宇宙が語り合っている
互いの法則を探り合っている
何処までも飛びつづける
卵のような艇内に閉じ籠められて
一輪の華
がお互いに咲いて ....
キーボードの上で
テントウムシが{ルビ触覚=おぐし}を直している
ENTERの右の
7HOMEと8←との間
溝にハマった姿勢だが
寛いでいるようにしか見えない
{引用=どこから とか
....
ああ なんていい風だろう
みんみん蝉が緑の木立に鳴いて
大きな鳥が素早く飛び立ち
鬱々とした気分が
涼やかに洗い落とされていく
この高曇りの八月十一日
[目を閉じれば未だ
橙 ....
蝉時雨我も蛹となりて眠る
繰り返す八月六日は蒸し暑く
破れ傘握りて走る通り雨
花火見る横顔真夏のピークかな
趣味で生きているんです
死ぬこともできるかもしれないが
くだらなくとも
生きてゆくことが
せいいっぱいの趣味なんです
まだまだ生命活動を続けたいと
こころが言っているようなので
....
日々の暮らしの中で
言葉の海を泳ぐようになった
なにが良いのか
悪いのかわからぬまま
てきとうに
真剣に詩を紡いでいる
私という一人の男が
悩んだり
叫んだりして
右往左往し ....
私は泣いた
君という海の波打ち際で
不器用さを
愛おしさから
短所に変化させたのは
慣れすぎた歳月と
甘えすぎた気もち
海辺に向かって
手を繋いだ瞬間を
覚えてい ....
明滅する光
影を作りだしては消す
サーカスという点滅
ね、サーカス
象のカラフルな背に乗り
地平線から浮かび上がったその高さ
夕暮れが近い
飼い慣らされた虎が吠えて
震えて踊る ....
健康で
天気がよくて
女房の機嫌がよければ
僕は満足だ!
生きていることの内にしか僕は生きない
気にしなくても佇んでいる
僕は僕以上になりはしない
様々な色を水面に映して いつも感情は儚く色をまとう
その細やかな手触りを生きていることが内包してく ....
盂蘭盆会
暮れてゆきそうでゆかない
夏の空に
うすももいろに
染まった雲がうかぶ
世界はこんなにも美しかったのですね
なんども見ているはずの景色なのに
まるで初めて見たように思うの ....
朽ち落ちた向日葵の花が
愛しく種を産み
また新たな花を咲かせる
繰り返される
繰り返してはいけない日に
祈りを捧げる
鮮やかに咲いていた
黄色の花の思い出よりも
握りしめたこの小さな種 ....
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