もしも今夜が最後の夜なら、
誰に知らせるだろうか。
どこに行くだろうか。
どこにも、だれにも、
帰る場所が解らなくなってしまって。
もしも今夜が最後の夜なら、
そん ....
思うようにうごかない心に嘘をついて身体が出掛けて行く
愛とか夢とかそういう言葉は
壁を飾るのに使ってしまった
もたないまま靴を履く
どんなにいいだろう
わたしが誰かわかるんだったら
....
たくさんの
本当、が
ながれていった
ぼくらは
橋のうえで
それを ながめていた
カナカナカナ
ひぐらしがないていた
私の心はいつまでも若くいたいといっていた
それを枯れた体が巻き込んでしまい
くすぶり湿った一部を置いて
あとは全部干からびさせてしまった
枯れ木から思い出は零れ落ち
伝えきれるはずの想い ....
まあるい形状
さんかくの形状
しかくい形状
そんな単純な形状ではなく
そう
例えるなら鍵
人はみんな、心のなかに
鍵と鍵穴のような形状を持っている
人はみんな、自分 ....
僕の前頭葉の
セキュリティソフトが
更新警告したまま
日没を迎えた
第1水曜日
スマホを握り締めて
君は帰宅した
君は
いつもの
お一人様ソファで
スマ ....
たどりつけない浜辺に
たどりついたものが
ひとり花を詠んでいた
たずねてもたずねても
花は
名のることはなかった
花の後ろの絵を
忘れた
はじまる前の
世 ....
電車の窓から見える景色は
近景がこんなにも速く流れるのは何故?
遠景よりも遠ざかるのは何故?
僕の傍にいる方が早く消えてゆく?
ならば遠ざけておかなくちゃ
大事なモノほど消えてゆ ....
丘にぽつんと咲きました
海が少しだけ見えます
キミの声が聞こえてきました
耳を澄ますと
キミの指に摘まれました
カーテンの隙間に
ボクをかざると ....
赤い光を背負った父が
海の彼方の岩山から帰ってくると
闇色のかまどに張り付いていた
母の顔が白く浮かんで
子ども達の祭り囃子が
囲炉裏の周りをはね回った
しがらみを肴に
また一杯
まったく酔わせてももらえないや
かすかな圧力の記憶が
背筋を降りて
冷たい床へ逃げていく
せめてそこに
ある景色を描写する声が
あったと思うことにしよう
もう何年も前から
窓は一つだけだった
表面はざらついていて撫で ....
山道の草木を横切る
ギンヤンマの蒼い複眼に
私たちの過去が沈んでおり
どうやら今も放熱を続けている
遠く 手放してしまったものも
未だ近く 触れられるものも
....
なぜだろう
トンネルに入る汽笛が鳴った
青い春の旅路
なぜだろう
トンネルにもきづかずに過ぎた
赤い夏 白い秋の ....
ここで石を降ろせ
お前の背負っている石は
他界への動線に満ちている
人間のつくった組織は
あかるい論理とうつくしい体系を
表皮まで張り巡らせているはずだが
その組織は必然のよう ....
毎日夕焼けが違うという人たちの
感動を強要させようとするきしょい行動
同じ夕焼けなんてないの
だからなに
全部違うからなんかすごいの?
シャッターというチャンスの連続が
この世界という存在 ....
夜空があんまり遠いので
ボクたちは
二本足で立つようになりました
私が死ぬ時
はじめて言葉は息を吹きかえすだろう
私が言葉に命を捧げる時
はじめて言葉はよみがえるだろう
私の身体が消滅する時
はじめて言葉は受肉するだろう
書けないなら
書けないと書かね ....
馴らされた日々に漂ってくる
なにげないコーヒーの匂いに
ふっと 救われるときがあるのだ
どんな舟も決して満たすことのなかった
完全な航海を ゆっくりとわたしは開始する
宇宙を辷るひとつの ....
想いを切り刻んで 記憶は泣く
スマートホンもデジタルカメラも 人の目に映らなかった頃
思い出を自販機で買い取った彼女の空は
空白のまま歳月を渡る
数年前傍にいたはずの笑顔は カラカラに ....
隣に寝ている祖母の髪をいじるのが
幼い私が眠りにつくための儀式だった
人差し指で祖母のぱさついた白髪交じりの髪を
くるくる巻き取る
眠る寸前までやっているものだから
翌朝の祖母の髪は縮れて
....
気怠い午後の窓に
コウノトリが連れてきた
甘い匂いの衣をまとう
真っ白な 汚れのない 詩
しばらく考えて
抱いてみる
泥のついた手で
目はおれ似じゃない
さて誰か
道傍の ....
ドアの向こうで息を殺して
貴方が眠るのを待っている
洋服ダンスに潜む
黒いマントの貴公子
蒼い月の光に
薄目を開けて
耳を欹て寝息を偽装し
貴方は待つ
さあ飲みに来て
この ....
海がもしも優しくするって約束してくれたら
あたしは沈没してもいい
船になる
長い雨のレースを開けて
六月の陽射しが顏を出す
反射して散らばる子供たち
ビー玉みたいに素早く駆けて
ひとり離れて
シロツメクサを編む
首の細い少年
意識されることもなく
満ち ....
本の中になんてこたえはない
だけど本屋がすきだ
本と本のあいだに
立つひと ひと ひと
あるであろう心に
さわらないように
避けてあるく
私も本になにかをさがす
絶望のたゆたう夜空に黄緑色の言の葉は寄り添い、
音楽を友として今まさに昇天しようとする魂よ。
君のその美しい羽はなんであるか。
此岸より望む大河の流れに身を任せるのか。
ああ ....
今夜は
新月だよ
小さな
なにかを
さがすのに
月の光は
ちょうどよいのです
でも
今夜は
新月だよ
小さなささ ....
死に化粧の父は
歌舞伎役者のように凛々しくて
酒で枯れ果てた唇が
潤っていたのを初めて視た
・
回顧する夕暮れ
鳴いている壊れた時計
線香の香りが夏の空気と合わさ ....
兄が建てつけの悪い窓を開けると
光がよいしょ、と部屋に入ってくる
光は物珍しげに
部屋の中を見渡して言う
「ずいぶんおかしな所に住んでるね
一日中しめきって
じめじめしてるし、かびくさ ....
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