焼き海苔に
祖母のこだわり
いま思う
均衡は崩れている
もうとっくに
地面の空の裂け目から
鮮血に染まった手を伸ばす人、人、人
同情でも訓戒でもなく
ただ助けを求めて
〇
独り冷え切った身体を震わせ
汚れて ....
秋と冬の境目の
限りなく冬に寄り添う秋だから
ならべてみたくもなる
あったかいものをしこたまに
{ルビ炬燵=こたつ} 湯たんぽ 綿入れ{ルビ袢纏=はんてん}
焼き芋 甘酒 鍋料理
{ルビ熱 ....
間違いだと思っていた正しさを
意地悪だと思っていた優しさを
蚊の鳴くような祈りを聞いた
僕を守る両の腕を払い退ける勇気を
偽憤を溶かす真実を受け入れる力を
朝の光に赦し赦される勇気を ....
真夏の鳥取砂丘には
ただ一本の樹さえなく
にぎわう人と数頭のらくだの黒い影を
その茶色の肌にゆらしていた
運動靴を履いてきたけれど
砂に足をとられて歩きにくい
切れる息
額から滴る汗 ....
成る可く期待しない
成る可く絶望しない
成る可く夢を見ない
成る可く流行りを気にしない
紙クズのような逃避の欠片を
無理矢理貼り合わせたそいつを夢などと呼んでくれるな
ぽろぽろ零れる口 ....
無音の夜
食卓を引き
白い骨壺
カタカタ鳴る
「寂しいのか」と尋ねると
無音の夜
ますます深く広がり
足許カタカタ鳴り響く白い骨壺
不意に亀裂走らせ粉々に
沈 ....
太った
ぶくぶくと
心はやせていくのにね
あなたが水草だった頃
わたしは産まれた
あなたは水草の味がした
ここにつどうすべてのいのちは
いのちをきょうゆうしている
だから
それをざんこくなどとおもわないでおくれ
あなたは ....
憧れの地を目指し
長い旅に出たはずだった
針葉樹林が空を突き刺し
波頭が眠たげにまばたいて
気球に乗った少年が
スローモーションで手を振っていた
漂う筏に寝そべって
分厚い書物を読み ....
映りの悪いカラーテレビ
メンヘラ歌手は歌う
恋愛至上主義
悪い薬を飲みすぎたせいで
心に溜まる濃厚な沈殿物
お湯を注いで約3分の即席恋愛に
手のなる方へと理性が散らばる
致命 ....
がらんどうの音楽室
壊れたオルガンを解体している
ばらばらと散らばる鍵盤
わらわらと湧いてでる歯車
錆びたネジを引き抜いたら
マネキンの首が転がり出てきた
どうしてだろう
いつも窓際 ....
街がジオラマに見えるのは、音もなく電車が走っていくからだわ
遠くの雲が雷鳴しているのをわたしは歓声をあげてみていた
駐輪場に折り重なったそれぞれの帰り道は
街灯が濡れ始めたときにどこまで辿り着け ....
勝たなくていい
負けなくていい
それで、いい
休日の
朝は苦手な
むかえ酒
君は破裂した
突然破裂した
何の前触れもなく破裂した
笑顔で破裂した
もの凄い音を立てて破裂した
複数に分裂しながら破裂した
変な液体を飛び散らして破裂した
....
深海に眠る
青年の宴の余韻が波のように
私を侵食する
酒宴は彼らのものだった
眠れない
彼らの酒宴は果てもなく
今も続いている
若い君は金曜日のカレーに夢をみて
年老い ....
人は忙しい
食べなければならないし
時々泣かなければならない
すべてなげうって
頁のなかほどでずっと
うずくまっていられたら
どんなにいいかとも
思うけれど
ごめんね
もう行 ....
そして
翳りなく空はかがやきを増して
ゆくりなく月日をもちさる
あなたの舵でもって
トー
という音がきこえて
それは地鳴りのようでもあった
つられて飛びたつ鳥 ....
誰かを磔にしたまま錨は静かに沈む
泥めく夢の奥深く月の眼裏火星の臓腑まで
黒々と千切られた花嫁が吹かぬ風に嬲られる
カモメたちは歓喜と嘆きをただ一節で歌った
私刑による死刑のための詩形おま ....
世界に色を添える人というのがいる
あなたがいないと
世界が終るというほどではないけれど
世界がちょっとだけ色あせる
そんな人たちがもうたくさんいなくなって
世界はもう青ざ ....
きみが奏でるインプロビゼーション
太陽がさししめすデスティネーション
私はずいぶん整理されたのかもしれない
まるで骨格のように洗われるだけになりたいと
素朴な島人でありたいと心底おもっ ....
キャンピングカーとパトラッシュと運転できるあなたが欲しい
山椒はけなげな樹だ
人に若芽を摘まれ
実を横取りされても
再び芽を出し花をつける
山椒は優しい樹だ
青葉に隠して
揚羽の幼虫を育て
幼虫に臭いをすり込ませ
ああこの臭い
幼虫はこ ....
明るい日
中・低の木々
さざめく路
ボンジュール
父母に土産
花々散らす
器あり
黒い影
時計カチカチ
テーブルの砂糖壺
闇がさらけだされる
十三夜
君ものぞき見しているだろうか
そして今週も誰にも会わなかった
今日も 寂しい夕暮れを見る
誰のことを 思えば 今は
いいのかわからない 自分の中で
誰かにいつもの路地で会えた気のするような
スーパーで すでに ....
覚め切らない皮膚 あまおとの影ふみ
ギターはたどる言葉のない遺言を
心から剥離した音は捨て猫のように理由を探さない
薄物のヒューマニズムを着せてはまた脱がす
週末の脈略は絶たれどこか乾いた ....
いっぱい食べてね
おかわりあるから
その薬指から
約束がこぼれ落ちないくらい
いっぱい食べてね
水のない球体
光のない反射
あかく くねったり
きんいろに あがめられたり
輪っかや虹や黒ずんだりして
きれい とか 不気味 とか
好かれたり 嫌わ ....
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