私の光だった
あなたは空をみつめて泣いていた
世界はひとつだけ私に意地悪をして
彼女の記憶のいくつかを
ブラックジーンズのシミといっしょに
手洗いで消し去ってしまった
私は痛い寒さ ....
答えを探している
答えは至る所に
極めてさりげなく
あるいはこれ見よがしに
散りばめられているのに
コインを拾うように
極めてなにげなく
自分のものにしてしまえば
楽になれ ....
生命線をなぞる
左手のひとさし指でいちど君と
出会った気がした真昼に
やさしく訪れるように降る雨が
こころに刺さる氷柱を一欠片ずつ
溶かしていく夜に冬が泣く
何度も読んだ小説の
一行 ....
誰もがそれとわかるように
名前をつけてみましょうか
花と名前をつけます
蜂と名前をつけます
光と名前をつけます
だけれど君がそれを指さすとき
花と戯れる蜂や蜂と戯れる花を
輝かせ ....
夏の花巻
駅を降りたち
しばらく歩くと
緑の草地の中に
北上川はあった
イギリス海岸に
たどり着いて
小高いところにある
一つのベンチに腰掛けたとき
思うこと考えることの相違が
....
吾の蕾綻ぶ前に枯るる定め慕情よ芽吹くなどうせ散るのだ
左側の
下から二本目には
幼い過ちが
絡みついている
右側の
上から四本目には
小狡い鳥が
棲みついている
左側の
上から三本目に
温かい実を
結びつけてくれた人
....
「あの日から運命が変わってしまった」
そう嘆く人がいる。
「自らの努力で運命を変えるんだ」
そう意気込む人がいる。
運命ってそんなに身近なものだっけ。
僕は、思う。
....
次の面接は
猫の事務所
氷河期だから
買い手市場だ
面接官は三匹
目つきの鋭い黒猫と
まだら模様の虎猫
そしてスラリとスタイルのいい
ペルシャ猫
お土産のつもりで持参 ....
透明な雨が降り
冬の夜を静かに濡らし
私は宇宙の孤独に座る
群れを離れたコヨーテなら
後足の
仕留め損ねた獲物に嚙まれ
血を流し続ける傷など舐めるな
私はお前の獲物ではない
まして谷底の
河原の土に掘られた巣穴に
敷かれた生暖かい毛 ....
ネクタイの結び方を知らずに
目の前にあるお手本を避けた
慣れた手付きとヨレたイニシャルで
社会という橋に虹を架けて
はみ出さないように生きていくこと
不器用なトレンチコートの紐が
....
てのひらで
強くは握れないほどの
熱さになってる
夜の自販機の缶コーヒー
けれど
冷めるのは早くって
宇宙の熱量法則からみても
あまりに早すぎる
なぜなんだろうか
....
愛想笑いで過ごした昨日は可哀想だ
そんな反省を笑ってる
感傷的に慰めてくる君も結局不干渉
そうさ僕は「対岸の人」だね
抱えきれない想いを綴って
折り畳んで君の知らない僕を脱いで
....
別れの手紙が届いて
窓ガラスの凍った朝に
きみは家を出る
食器も家具も置いて
チケットを握り締めて
雪の馬車に乗る
ここで変わるのね
未来から声がする
....
来なくてもいい。
なんども待ち侘びた声の残滓が
まじわる心のゆく先に咲く
いっぽんのありえない人生に追いついて
その熱さに目もそむけ
2度と見られなくなったと ....
ポストに投函した手紙が何処へ届くかは解らない
宛名と宛先を忘れた
差出人とその住所も忘れた
そんな封書の中身は便箋が数枚
便箋には文字を綴るのも忘れた
そんな手紙は迷子になって
い ....
開けた窓から雨の匂いが流れ込み
濡れていく遠い森のざわめき始めて
貴女の声は透明な水底に沈んでいく
空から見るあなたの町は
海の青と畑の茶色い区画だった
あんなに焦がれた都会を離れて今は
子どもたちとツリーを飾ってる
温かいシチューを振る舞って
電飾を灯す
みなが眠り ....
いったい自分が誰なのか
何者なのかさえ
解らなくなるまで忘れた去った覚えはない
母親に罵声を浴びせた記憶はこびりついて剥がれてくれないけれど
あれば反抗期には誰でも沸き上がるに違いない
....
現実を直視できない眼は
はるか彼方遠い空を見ていた
現実から逃げたい自分がそこにはいた
夢のような物語りばかり思い巡らして
えがこうとする絵図
だけど
画用紙は破れて
色の欠けている ....
夢の蝶、舞う
遠去かる
宇宙の縁に触れ 燃えあがり
忽然と消え また現れ
あらゆる現の美をよろめかせ
その軌跡のおぼろな輪郭を
響かせて 響かせて
くらい 翼をひろげて
古い調べから とほく紡がれ
凍てついた 水を恋ふ
しづかな もの
ひとの姿を 失つた日
ひとの心を おそれた日
雪を待つ 地へと降り立ち
ひそや ....
自分が真面目に正しくやってさえいれば
社会がどんなに悪くても
何時か良くなる
きっと良くなる
神さまが助けて下さる
きっと
必ず
そ ....
青い青い
空の下
沢山の
ニッコウキスゲが
咲いている
吹き抜ける
風
核兵器
そんなものなければ良かったのに
原子力発 ....
(慟哭)
世界に影を落とした優しい諦めを知らないで惨めな豆腐の角はたいせつに磨いたアクアの舌。はもうないけど人狼の夜は深く更けゆくばかり火の鳥を知らない?
(うそ。知っている。)
悲 ....
静かさ
静かさ、といふ音があると思ひます。
秋の夜長、しをれかけた百合を見ながら
静かさに耳を傾けます。
{引用=(二〇一八年十一月八日)}
....
赤いランドセルの少年が
右手に描いたピカチュウで
セイダカアワダチソウを抜く
人見知りの鼻息を止めたら
もっと楽しい生き方ができる
さよならを自分からは言わずに
後出しジャンケン気持ち悪いね
白いキャンバスは食パンみたいに
耳を切り落とす神聖な場所
何も ....
横断歩道の
真ん中辺りで
立ち止まる
逆行が背中に
突き刺さって
立ち止まる
誰にも気付かれず
すれ違っていく
自動販売機の
真横に立って
空を見上げる
夕日が瞳 ....
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