私のペンは「あなたたち」を描くことには一切の関心を持ってはいない
* * *
雪は白いから尊いのよ
透明だったら見えないでしょう
ほかの色だったら世俗を纏うでしょう
* * *
一つの部屋では未明を迎え
東京の骨が窓辺でうたう
(白い白 ....
日差しは入り江を満たす穏やかな波のよう
ちいさな冬も丸くなった午後の和毛のぬくもりに
鉢植えの場所を移しながら
――古い音楽が悪ふざけ
週日開きっぱなしのトランクをむやみに閉め隅へ蹴る
―― ....
風が伝える想いがある
風が伝える死もあるだろう
さびしさもある
かなしさもある
日日のなみだも
やりきれなさも
そして
それらを
きっと誰かが
拾ってくれると
信じること、そうして ....
夜が明ける
東の空を赤らめて
陽が昇る
誰も知らない一日が始まる
泣いたり 笑ったり 妬んだり
喜んだり 怒ったり 微笑んだり
生きる 生活を営む
始まりの ....
私は悪い人間だ
悪党ではないが悪い人間だ
鼻つまみ者で
嫌われ者だ
悲しいが事実なのであろう・・・
生き辛い・・・
ATMに寄って
壮絶な家計状況に直面して
コンビニで東電に電気代を支払い
クリスマスプレゼントもあるしなあと
曇り空なんて見ないふりしてバス停へ
あたしの仕事って、いつ人口知能に取って代 ....
漂いの中に浮かぶ船はとても空虚だ。
空虚は僕の心を浸潤する。
広がり、閉じる。
この情緒こそ難破船にはふさわしい。
水面に移る悲しみを鳥たちが啄む。
僕は自分が何か勘違い ....
ビリビリに引き裂いた
力任せに 泣きながら
それでも気が済まなくて
鋏でジョキジョキ切り刻んだ
その切れ端を 徹底的にシャッフルした
元の形などわからないように
二度と思い出さな ....
「孤島」
樹や動物と共に棲み
助け合うことを知っている
ひとに蹂躙されない
蹂躙しない
等身大の月のひかりにただそよぎ
喜び 哀しみ 反射する
時に痛い波濤をかかえ
消滅を怖れない ....
つかのまの休日に天使がやってきてしばし話をすると
迷走する天界のことやいま抱えている天使間の軋轢のこと
ほんとうのリベラリズムや偽物のプロパガンダの見分け方や
彼?にもいるらしい兄弟姉妹や縁 ....
もう部屋じゅうに
季節が終わる報せが届きます
ネットポートは再び夕空でジャックされ
きっとポケット深く携帯電話にも
微かに振動は繰り返され
むかし聴いたあの唄が
そっと鳴るでしょう
波音 ....
光を打つものの影が
空に映り揺らめいている
二本の穂の墓
影が影に寄り添ううた
切り落とされても切り落とされても
見えない部位は羽ばたきつづけ
音の無い風が生ま ....
冷たい雨音を遮りながら
仕事帰りに紺色の雨傘は
静かに溜息をついていた
鉄道駅に着いたので
ちょうど雨傘をたたもうとして
夜空を閉じるときに
満月がみえると本当はいいのにねと
何か反実仮 ....
この夜に目が覚め
この夜底に触れる
私にはもはや
親兄弟家族親族はなく
現世的無縁仏だ
円やかな現世孤児だ
そこでは
私という存在が剥き出しで
そこでは
私という存在が真っ裸 ....
さようならアメリカ
たぶんぼくはアメリカが好きだった
ジーンズが好きだった
コーラが好きだった
ポテトチップスも好きだった
さようならアメリカ
自由と平等と人種差別の国よ
民主的で覇権的 ....
昔、{ルビ通=かよ}っていた中学校の屋上に
天体観測の丸いドームがあった
天体望遠鏡を覗き込むと
こころの暗がりがみえた
こころはどの星だろうと
それから何十年も探 ....
夕陽はきっと溶けるように
水平線に抱擁されて 海の底
人魚の里で明日を孕むのだと思う
そこでは どんな哲学をさかのぼっても
たどり着けないとわをしる風が
淡水の泉を可愛がっている
つぎつぎ ....
冷ややかで
静か
ただの一夜で
世界を無色にしてしまう
寄り添って
何も言わない
いつもそう
あなたはそこに居る
人生の半分以上の時を
あなたと過ごしてきた
なのに
熱病 ....
あなたは夏をみる人だ
うつむいたレースのカーテン越しに
あなたは白い夏をみるひとだ
窓辺にもたれながら、口をすこし閉じて
花模様のレースの ....
161103
そこに
あったはずのものが
見あたらない
そんなことが続いて
数十年
子どもから大人に
そして老境を迎え
あの世に戻るのだと
人はいう
横町を挟ん ....
大人になると嘘つきになると
思っていた
正直に生きようとして
棘だらけのつる薔薇みたいに
剥き出しの自我を絡めあい
傷つけあった
あなたとわたしは同類
どうしようもなく我儘で ....
風切り鳥の巣は、美しものの世の通り門なんです。
風切り鳥が鳴くとき、誰かは何かを思って
守られて、衣帰りをします。
選ぶことで誰かを守ることがあるってことです。
ラベンダー畑でふっと空を見上げ ....
浮いている
{ルビ圧=の}しかかる重力
月は平衡する
走る遠景を
雨の滴で回避して
狂っている
歩行する緑の
あらがう能役者が噂する
平成の{ルビ螺子=ネジ}
とまらな ....
あなたの微笑み
落ち葉を踏みしだく音のよう
深まるほどに
冷たくなって
高くポプラの梢を揺らす風
渡らなかった深くない川のせせらぎ
なにかが去って往く
色鮮やかな痛みを灯して ....
唇に針を刺して、
ぐるぐるとかき混ぜる。
歪んだ赤い月が、
いくつもうまれる。
その月のなかに、
あなたが映っている。
人形を抱いた幼いあなた。
小さなあなたは泣いていた。
唇をかみし ....
溢れる海の{ルビ思想=おもい}を
透いた生命の鼓動にのせて
ぼくはきみに語りたい
{ルビ灼=あつ}い 熱い視線の息吹に恋い焦がれ
ひとり 沈んでいった人たちのことを
ふるえる ....
独りでいたいのです
休んでいたいのです
ゆっくり
のんびり
秋の黄昏のなか
孤独を身にまとい
一言も語らずに
ただただひっそりと暮らしたいのです
騒がしい世の中に背を向け
超高速の時 ....
そろそろ すとーぶだしてよ ともいわない
きみは けなげだね
ねどこでほんをよみだすと
かならずわけありがおでじゃまをする
うるさいけど にくめない
たまに てつがくしゃのように
あおのさ ....
腰のまがった老人はめったに見なくなった
まがった腰で
ヨッコラショと
風呂敷をしょった爺ちゃん婆ちゃんは
わたしが子供のころの爺ちゃん婆ちゃんだ
農村や漁村では今だって
腰のまがった老人 ....
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