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ラゴスは、サンクト・ガリの代わりに、
ナハテ・ガルの丘に布陣を敷いた。
その数は四万。その他に、各地にある砦にも、
千人ずつの兵士たちを配置した。

アースランテがどこから攻めても良いように ....
ぬらぬらぬらぬらと
ㅤㅤ黒光りする夜がまたやって来る
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ節操のない総天然色を肉の奥に密閉して
ㅤㅤㅤ夜の重力はすべての脈菅に流れ込み
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤ全身の毛穴に銀色のさぶいぼーを沸 ....
浮かばれなかった頃
どんより曇り空で
僕は必死にもがいてた
その時の もがきが
土台となり
僕を生かしているんだよ

だから
どんな日も
必要な日だったんだよ
あの
退屈な夜 ....
殺戮し、
燃え残った廃墟の街をゆく、
風が死んで、
血溜まりのある道に、
柔らかな非情の陽が射して、
子らが走り抜ける路地をさ迷い、
幾度か女を犯し、
鉄錆の味を舐めながら、
突撃銃を ....
{引用=
「……僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの{ルビ幸=さいわい}のためならば僕のからだなんか百ぺん{ルビ灼=や}いてもかまわない。」
「うん。僕だってそうだ。」{注=『新編 銀河鉄 ....
ラゴスの国王、アウゼル・ローガンテは憔悴していた。
「まさか、これほどまでに早くアースランテと戦争になるとは」
アースランテによるラゴスの海上封鎖は続いていた。
すなわち、海外にいる兵士たちを呼 ....
ラゴスとクールラントの同盟がなった日、
祭祀クーラスは王宮のテラスで微笑していた。
「これでクールラントはわたしのものになる。
 名実ともに{ルビ祭祀=ドルイド}が統治することになるのだ。

 ....
ここに居た
ここに居ない存在は今
どこに居るのか
ここに居た
ここに居ない存在は今
どこにも居ないのか
いいえ
ここに居た存在は確かに
ここに居たの。
無人駅のホームの待合室に並べら ....
クールラントとラゴスの兵隊は、合して八万。
魔導がいくら優れていたとしても、
十二万の兵力に押し切られては、ひとたまりもない。
アウゼル・ローガンテは苦悩していた。

「クールラントは、いず ....
アウゼル・ローガンテは、クールラントからの密命を、
元老院議会の議題にかけた。
軍国ラゴスは、その印象に反して民主的な国家だったのである。
発言はすべての者に許されていた。

「それは、クー ....
{ルビ奪衣婆=だつえば}に手を振って
自分の手の指が
すっきり全部折れているのを
確認し

ゆったり歩きはじめれば
蛆這い回る
糞と血とはらわたの汚泥が
優しく足をなめる

ただい ....
二〇一九年十三月一日 「断章」


おまえの幸福はここにあるのだろうか、
(リルケ『レース』Ⅰ、高安国世訳)

単純な答えなどない。
(アルフレッド・ベスター『虎よ、虎よ!』第二部・14 ....
ラゴスの王、アウゼル・ローガンテは、
祭祀クーラスからの密使と会見をした。
祭祀クーラスの密命は、「ともにアースランテと戦いましょう」
というものだった。アウゼルはそれも予感していた。

ラ ....
そのころ、北の国クールラントでも政変が起こっていた。
国王と王太子が暗殺されたのである。
その首謀者は、誰ともわからなかった。
クールラントでは、国王の孫ジギリスが後継者となった。

しかし ....
幾千のよるを乗り越え僕たちは生きてきた
神経質な世界は宇宙と融和していないけれども

目の前にある真実をいつも取り逃がしてしまうのだ
プーチンの病気見舞いにラップを贈ろうかと

中村佳穂と ....
アイソニアの騎士は、すぐさまその面影を追い払った。
エインスベルへの愛……それは無償の愛だ。
盟友と言っても良い。あるいは、戦友と言うべきか。
(いつか、彼女と争うことがなければ良いのだが……) ....
「あなたは年を経てなどいません。わたしは本気なのです」
「本気とは、どの程度の本気ですかな?
 夫が戦で命を落としても、貞節を保てるほどの本気ですか?
 それとも、次の夫を見つけ出すような貞節で ....
君が揺れている


君の声が聞こえるよ



でも言葉にしない


ふふ  

ふふふ


春と
呼んでいるんだ


きらきら

光に舞う

ちいさな ....
 一日の襞をなぞるように日は翳り、あわただしく光は綴じられていく。
万遍のないあからさまな炎天の午後、しらけきった息、それらが瞬時に夜の物音にくるまれる。光のない世界のなかで、何かを照らすあか ....
底冷えの日が続いている
夜明け前の除雪車の轟音に目覚め、ドアを開ける
階段のコンクリートの端をなぞるように雪を掻き落とし
人力除雪が始まる
ずっともうこんなことをやっている
固い空気が微動す ....
アイソニアの騎士は、アースランテでは、
グーリガン・ハルガンテと名乗っていた。もちろん、
これは偽名である。アイソニアの騎士が、
自分の出自や来歴を語ることはほとんどなかったのである。

そ ....
少し時間を遡るが、これはハッジズが、
ラーディガンと盟約を交わす以前の話である。
アイソニアの騎士は、アースランテの聖騎士に取り立てられた。
そのことを覚えている者も多かろう。

アイソニア ....
朝8時の虎ノ門ニュースで解説していたが、忽然と消えた卵の行方を捜している母親が、自分は世界と捩れた関係にあるということが理解できないのは、母親には卵の抱いている密かな悪意が認知できないからだ。母親とい .... ハッジズがラーディガンと盟約を交わしたという情報は、
二か月遅れで各国にも届いた。
「なんと。アースランテはこの世の破壊を望んでいるのか?」
「ライランテを、魔物の闊歩する土地にするつもりか…… ....
アースランテがラゴスとの戦いに敗れてから、
二年余りの時が経った。アースランテは、
それ以来、急激に軍拡の道に突き走っていった。
アースランテは、ファシブルとラゴス、

二国の敵国をかかえて ....
その日
僕の存在は失われていた
川は何もなかったかのように流れ
まわりの人々は息をし、笑い
変哲もないことを話していた

できるものなら僕は
思考さえ失われた
本能だけの野鳥になりたか ....
ゴミ収集車が走り去るにおいを青空に運び去る春風 ボウ 遠のく作業員たちの掛け声
電線の雀たちが放つビーム
桜が咲いたね
ハロー ユース

/
遊びたりない わけない
風に育てられた髪 ....
蒸す日だった
私たちは山林の中の枯葉の上で
一服をしている
同僚の、ほぼ禿げた頭部が汗に光り
涼風が渡っていく

目の前の葉では
太さ一ミリに満たない、尺取虫が
長い首を伸ばし ....
川原に浮かんでいるのは
ほたる
闇の空気を纏い
黒い重みに浮かぶ
森の深遠のそばで
悲しみの傍らで
現実の重みから脱皮して
ほたる  ほたるよ
粘る闇が重い空気と連結して
夜をもてあ ....
しかし、この話には裏の話がある。
「これを、カシュガルさま」ヨランは、
ギボーシュのネックレスを差し出した。
「まあ、なんと美しい」カシュガル夫人はため息をもらす。

「しかし、このネックレ ....
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