リアルな夢 / 最近ぼくは不思議な夢を見るのだ!?
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最近不思議な夢を見る。
ぼくが眠ると夢の中のぼくが目を覚ます。
夢の中のぼくが眠ると現実のぼくが目を覚ます。
会社の会議中に居眠りをしていると、
夢の中のぼくも居眠りをしていて、
ふと肩を叩かれて目を覚ます。

「ちゃんと見なよ」

映画館で君に起される。
夢の中だとぼくは君に素直になれるんだ。
これは夢で
夢なんだと思いながら
ぼくは君に微笑んで見せる。
夢の中のぼくは不思議と余裕があって
手を伸ばして君の手を握るんだ。
君は煩わしそうな振りをするけどうれしそうなんだ。
この頃分ったんだけど、
夢の中のぼくの方が幸せそうなんだ。

「ほらほら、ぼーとしてちゃだめだ。
 ちゃんと自分の意見を持つことが大事なんだよ。」

課長がぼくを名指して呼んだようだった。
分かっている、分かっているよ。
ぼくは現実の世界の仕事で食べており、
だから現実の世界でしっかりと生きて行くのが当たり前で、
ぼくを心配そうに見守る母親の顔が頭の奥くに浮かんでは消える。
でも、夢の中のぼくが呼んでいるんだ。
だって夢の中のぼくの方が幸せそうなんだ。

「どおしたの、居眠りしちゃいやよ」

うつらうつらして意識半分、眠り半分、
夢の中の世界と現実の世界が綱引きをして
夢の中の世界が勝ってしまう。

「昨日典子ったら変な事を言うのよ。
あなたが時折霞むように見えるって。
私笑って言ったの、
何馬鹿なことを言っているの。
のり君はのり君よって。」

ぼくは調子が良いからのり君なのか、
海苔巻きの「のり」のように、
何にでも巻かれて行くからのり君なのか分からないが、
夢の中でぼくはのり君と呼ばれているらしい。

ぼくたちは映画を見終わって近くのカフェに移っていて、
ぼくは君の横でビールを舐めている。
ぼくはアルコールに弱くてすぐに眠くなるのだ。

「こら、そんなことでお客様の気持ちを掴むことができるか。
 いいか、ちゃんと正面から向かって話をするんだ。」

課長が眼を剥いてみせる。
どうも今週のノルマが達成できていないのはぼくだけのようなんだ。
みんなが課長の勢いに負けて顔を縦に何回も振っている。

ぼくはますます首を縮めて
会議テーブルの下に沈んで行く。
ぼくはみんなに埋れて
左手で顔を隠して大きなあくびをするんだ。

「のり君の横顔をこうやって見ているのも好きよ。」

君が隣から凭れかかって来て、
ぼくは想はず身を寄せてしまう。
いやいや、だめだめ
こんな時こそ正面から向かって言うんだよ。

「今日の君は特別に素敵に見えるよ。」

ぼくは幸せな気持になってきて君に微笑むんだ。
身体がほかほか暖かくなって来た。
アルコールに顔が上気してしまう。

「ためだ、だめだ。
 そんな言い方で気持が伝わるか?
 お客様に好きになってもらうためには
 まず自分が好きになることが大事なんだ。
 まず自分が想いを掛ける。
 笑ってもらおうと思えばまずは自分から笑うことだ!? 」

どうやら現実はどこまでも僕を追いかけて、
ぼくの幸せな夢を邪魔しようとする。
でも君の顔が遠くから覗き込んで微笑み掛けて来る。
目元がトロンと甘くてぼくはシロップの海に溺れてしまう。

「前から言おう、言おうと思っていたけど、
 きっとぼくは君に夢中なんだよ。」

「どおしたの、のり君
 今日は優しいのね。
 私も大好きよ。」

ピー!って審判が笛を大きく鳴らした。
ゴール! ゴール! アナウンサーが絶叫する。
課長のアシストの元
のり君が試合終了間際のゴールを決めたぞ!
会議テーブルの周りの仲間が立ち上がって寄ってくる。
K君が握手を求めて来る。
Y君が良かった良かったと拍手喝采だ。
入社以来僕を鍛えてくれたN主任は
今までよく我慢強く見守ってくれていた。
今は目に涙が光って見える。
更には肩を叩く係長の目にも優しい微笑みが溢れる。
最後に密かな憧れの恵子先輩が祝福に歩み寄って来る。
ぼくは思わず感動のハグで答えよう!

「馬鹿野郎。
 いつまでも居眠ってるんじゃない。
 営業会議は遊び場じゃないぞ。」

やっぱり夢は夢で終わりを告げる。

どんな美味しい食事の夢も
やっぱり食べられなくて終わる物さ。
それでもぼくは周りの顔に
恥ずかしそうに笑いながらも、
そっと隣の恵子先輩に手を伸ばした。

恵子先輩の笑った顔がOKと言っている。ヾ(@⌒ー⌒@)ノ

「のり君、営業会議中に居眠りしちゃだめよ。」

夢と現実、
境界線がますます分からなくなって行く。
最近ぼくは不思議な夢を見るのだ。

夢の中のぼくが眠ると現実のぼくが目を覚ます。
現実のぼくが眠ると夢の中のぼくが目を覚ます。
夢の中のぼくが居眠りをしていると、
現実のぼくも居眠りをしていて、
ふと肩を叩かれて目を覚ます。

「今週は一緒に頑張りましょうね。」

隣に座ったあこがれの恵子先輩が声を掛けてくれた。
現実の中だとぼくは? 素直になれるんだ?
これは現実で?
本当に現実なんだと思いながら?
ぼくは恵子先輩に微笑んで見せる。
今日のぼくは不思議と余裕があって
手を伸ばして先輩の手を握るんだ。
先輩は煩わしそうな振りをするけどうれしそうなんだ。
この頃分ったんだけど、
夢の中のぼくより現実のぼくの方が幸せそう?
これは現実で夢なのだ。

最近ぼくは不思議な夢を見るのだ !?

 


散文(批評随筆小説等) リアルな夢 / 最近ぼくは不思議な夢を見るのだ!? Copyright beebee 2012-02-19 05:00:21
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