モンパルナスのキキ
信頼できる男は
愚痴を言う集まりに
えげつない
どんちゃん騒ぎ
ロスト・ジェネレーションが
....
紺色の
浴衣かったが
ほたる柄
かぜのつよい日に
まどを開け放して
ねそべっている
ちいさな
こどもたちは
光の輪を抱いて
右から左から
上へ下へと
舞い上がっている
雨は
そのうち降るだろう
月が ....
金色のマヨネーズが冷蔵庫のドアの間から
にゅるにゅると出ており、
まるで××の○○みたいに
にゅるにゅると出続ける
あたしはスリッパの先で食い止めようとしたけれど
マヨネーズはヘビみたいにす ....
少女は見ている
座って見ている
木のベンチに座って見ている
公園の木のベンチに座って見ている
鳩が降り立つのを
鳩が飛び立つのを
豆が飛び散る
乳母車が通るから
――赤ん坊の目
....
ぼくはまだいちご泥棒と眠りたい置き忘れたものばかりの園で
衝動を積み上げていく指先に梶井のレモンわたしのオレンジ
気だるさはインクに滲み水底の青い散文髪に絡まる
....
道の歪みのそこここに
溜まって出来る水たまり
昔の雨にはつきもので
道行く人の迷惑で
車が通れば泥をはね
人が踏めば靴汚し
道の歪みの性格を
そのまま見せる水たまり
そのうち道 ....
線路のうえに寝かされた妊婦をみているよう
女は都合のいい神様をすぐ孕む
狂ってるってわらう?
きみをこの浴槽で飼えたらな
愛のはらわたが薄くひらいた唇からのぞいてる
とてもきれい
....
あなたと私の魂の頬ずりは
凝り固まった二人の心を解かしていく
それは氷が解けて板の上を流れていく
そんな さらっとした風ではな ....
{引用=
紙上に佇む
痩せ細った枯れ木
磨り減ったペン先がつけた
掻き傷の隙間に
深く根を張るインクの滲み
どこに行くとも
なにを残すとも
示さぬままに
埋まってしまった行の終わりの ....
空が高い日は、鼓動がおちついている気がする。雨のふる日は、だからきもちが落ち着かないのかというと、それはそうでもなく、落ち着かないというよりは、鼓動をきれいに落としてしまっているから、からだは空き ....
あたらしいかばんの中に
あたらしい男の子
あたらしい男の子の手で
あたらしいわたしになる
わたしの泉はあふれ出る
窓の向こうには雨が降る
あたらしい一日の手前で
あたらし ....
{画像=100613231219.jpg}
{引用=
黄昏たちの回廊
夕闇に漂う影が伸び
遊び疲れた風がぬける
....
砂に消える火
煙さえ無く
手は振りかえる
軒下の蝶
昼の音の波
ぬれた器
ただひりひりと
なぞる指
遠く離れた
同じ手に降る
聞こえないのに ....
私は舗道を歩いていた
単衣の着物を着て楚々と振舞っていたが
思いがけずつまずいてしまった
犯人は舗道の下をうねる根っこ
照れのせいか上を見上げる私
思いがけず新緑のキラメキに時を忘れ
....
ひとは
潮の途中に
なにを聴くというのだろう
聴くという言葉は
はなはだ都合がよくて
かげかたちが整えば
それは素敵な
嘘になる
耳を聴く耳は
どこにあるだろうか
問う ....
夢の中で
君の腰骨のラインを 指先でなぞる
なめらかな稜線で
硬質なものに触れそうで 触れない
表層を
すべる すべる すべる
光源の分からない 薄明かりの中
....
百三十七億光年彼方の
兜率の天のマリンスノウ
シュレ猫とヒッグスのピッグス
いくつもの眼差しが
宙に浮かんでいます
それぞれの波長に見開いた目をもって
あれらは祈りの小函
見届け ....
なにもない場所で生まれる言葉は
なにもないと思える私の中の歴史
かじっただけのアイスみたいな安価な
浅い浅い川の底にある小石みたいな
それでも私には捨てられない石
生まれたときか ....
海の向こうから来た手紙
躊躇わない見慣れた文字が、
心に触れるのです
確かに
生きる意味があるように
昔を思い出す、力が湧いてくるような
元気でいらっしゃるのですね
少し怒りっぽい
....
骨
その絶望
の
砂
の
把手
穴
のある
石
の胸
あるひは穴
のある
石
の腕
「夜の要素」の冒頭の二連です。
この奇妙な形式の詩の作者は北園克衛(きた ....
くうかんに
ねじをさしこんで
時間を保っている
ひとびとが
無意識にしている
プラスチック製造工場みたいな
くうかん
これは
いくつもつぎをあてられて
ねじをうちこ ....
いたみ このいたみ
今日の闇を 明日の光を
にぶい絶望を するどい希望を
舌に降り落ち 歯を押し入る あの味を
肌にすりより 陰部をかける あの人を
すべてをぬぐい去り ぬり潰し ....
2010/06/10
空気
窒素、酸素、二酸化炭素、空虚、おかしみ
ポケット
ハンカチ、携帯電話、あめ玉、コイン、鍵、決意、手
本
絵画、イラスト、デザイン画、タイトル、著者名、願い
機械
削 ....
からだのそとがわに
うすいまくがはっている
からだのそとがわに張ったうすいまくを含めて
わたしをわたしだとおもっているのでしょうが
わたしは
あなたがたがおもっているよりも
ほんの ....
びょうてきで
うるさすぎます
駅前が
ばいばーい
ばいばーい
ばいばーい
ばいばーい
重なり続ける子供たちの声
君たち
ほんとにばいばいする気があるのか
ものすごく元気いっぱいで
まだまだ元気いっぱいで
そんなに元気 ....
うす青く空にひらいたドアの隙間から
輝く雲が覗いている
今も遠くはなれて君をおもう
見えない手のひらで
君をそっと抱き寄せる
(いつの日もよすがを探している)
(途方に暮れて)
あるいは ....
ライムを搾ればそれだけでいっとうだわ そ
う云ってきみはライムソーダを眺めている
少しばかりゆがんだグラスの底から生まれた
泡が ゆるやかに浮かび上がっては ぱちり
と弾ける きみの瞳はい ....
{引用=上滑りした会話が
水槽の中で泡を吐いた
外は
しみこむような雨
果実を一つ
大きな手が絞ったような
雨
呼吸困難で
死にそうだと
酸素が足りないのだと
嘆く声が聞こえる ....
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