私がモーリタニアでタコだった頃
あなたは宇宙船の乗組員だったので
私の姿に驚かず毎日キスしてくれたよね
私は画家を目指してたけど
人類の壁の前に泣いてばかりで
そんな私の手だか足だかを
あ ....
虹の渦がひとつ
遠くと近く
ふたつの雨を横切った
誰もいない道の終わりに
とめどないものがとまるとき
夜の鴉が一羽増すとき
心は天地の境をひらき
冬のはじ ....
わたくしを。連れ去って下さい
宙をさす断崖の花
月虹の門はひらかれている
太陽風の遺伝子がほとほとと
あるく雲の上へ
声のみする、するする
夏の産声よ!秋に実るか
わたくしを。不問に ....
おまえは信じないのかい?
見上げれば、オウクがたずねていた
答えかえせずに、空から煉瓦の雨がふってきそうで
恐ろしく、そいつの堅固そうな樹の下に入ったままだった
ひとりと一本の目の前を ....
声を出して
らら
柘榴の粒の転がり落ちては
踏みつけて滲む
乾いた地面に照るくだり陽
そして腕を取ろうと伸ばす先の空白
フレア、緑のスカート
輪舞を踊る
遅れてきた風と ....
{引用=
*
どの色も気に入らないの。欲しいのは唇をかむ痛みの赤さ
きつね花、天秤にして恋人のふるえる声を謀りにかける
しろはくろ、くろはしろからあ ....
マスタードが
かかって落ちたんだな
床が汚れてる
かむと歯にあたる
たまに不思議な味がする
粉が変なのか俺が変なのか
水か酵母か
つくったばばあか
コーヒーもろとも喉を掻き分け ....
手のぬくもりも
胸の厚さも
すっかり覚えてしまった
わたしの中には
いつも兄ちゃんの声がある
兄ちゃんの呼吸がある
むかしむかし
あるところに ひとりの少年が
おりまし ....
冷蔵庫の中を見つめながら僕はため息をつく
怖かったのはきっと製氷器が動くことを止めなかったから
文字を辿るのと食べ物を詰め込むことは
どこに違いがあるのだろうか
伸びてゆく爪も髪も既に私の支配 ....
夜の散歩中に迷い込んだ名も知らない小さな神社は
まちあかりも遮ってしまう茂みに覆われている
自他共に認めるリアリストのわたしでも
物の怪の姿を探してしまいそうになり
風で葉がこすれるか ....
朝の薄闇の中
漸く日の光にあたるはずだった蛙は
また暗く深い井戸に
引っ張られ
ボッチャン
暗い闇と死骸の腐敗した臭いの充満した井戸
這い上るはずの壁はあるのだが
真っ暗闇で ....
それは弱まるものである
経年的な金属疲労のように
だが軽視するものではない
それは強まるものである
果樹園に漂う芳醇な風紋のように
だが羨望するものではない
それは見え ....
一篇
どこに
詩 は
....
アスファルトには干からびた雛の死骸
散水の終わったテラスでは
欠けた樋から不規則に水が漏る
深爪の指を舐め
ただそれらを見下ろしている
穏やかな午後だ
路傍に転がる石ころのように
....
今日も太陽はご機嫌ななめで
一面に白い濃淡が広がっている
北風は旅人のコートを脱がせることができなかった
知っているくせに
空がこんなにつめたいのを
「仕方がない」で済ませる人と ....
何をもとめているのですか
住まう屋敷は、祝福の
それでいて、囲いのなかでしか息のつけぬ
囚われの日々なのです
渡された鍵で開ける 日付さながら順番の
カレンダーの四角く区切られた部屋たち ....
聞き耳頭巾をもらったよ
みみずくさんにもらったよ
ひとには何が聞こえるか
訝しみながらくれました
だけども頭巾をかぶったら
急になんにも聞こえない
きっぱりきーんと耳鳴りの
....
熱と光と力学で誰かと
鳥籠の中で暮らしたかったなあ
文学は素敵だったけど
遠くへ往くには枷になるものかも知れない
走る
なぞる
並ぶ
一列にすらりと
みな潔く道路を進む
ルールに引き戻され
ふてくされては
なんとなく安心感
自由に自分らしくなんて
それもまた囲 ....
{引用=神さまが
地球に「?」と書き送り
返事は皆さんご承知のとおり。}
神さまに
地球がいろいろ尋ねたら「ごめん」のひとこと
(^^;)付きでした。
昌平橋から万世橋へ
川面に揺れる提灯の
その先にある柳橋
ゆらりゆらゆら秋の宵
ガード下には赤提灯
ほろ酔い加減のカラスが数羽
家に帰らず蜷局(くだ)を巻き
その先にある止まり木に
....
どれだけ
つまらぬ嘘を聞いたら
あなたを嫌いになれますか
さびしがり屋の
つよがりをみせに やってくる
そんなあなたを
待ちくたびれ
生きていれば
いいこともあるさって
一緒 ....
あ、
鈴虫が鳴いているぞ
あ、
夜空には、まんまる。――お月様だ
あ、
庭の草むらが揺れた
あ、
眼の光る、狸が一匹。
あう、
あぐらを ....
私の詩がどんなに拙い読むに耐えないものであっても
便所の落書き以下の代物であっても
そんなこと関係ないんです。
ポイントが入っていないと誰にも相手にされていないようで
孤独に凍えそうな ....
そう
お月さまをバラバラしたの
あたし
とんかちでね
えいってやったの
いいでしょ
これでおあいこよ
伝えたくて
伝え切れないもの
捨てたくて
捨て切れないもの
慌てふためいて
掴み損ねたもの
握り締め過ぎて
壊してしまったもの
煩わしいものたちを
もう一度抱き寄 ....
泉屋のクッキー缶の中に
アルバムに入れていない古い写真が一枚
モノクロームの色あせた写真には
小さな自分と親父が写っている。
庭の小さな葡萄棚の下
ふざけているのか本気なのか
親父に髪 ....
裂礫を繰り返して
果て、
新しい暮れに出会う
カワラヒワの子供は
膨らみすぎたその羽根を
もどかしげに絡げ
留める
望まれる正しさを経て
邂逅する
みなそこの白骨
長いあいだ
気づくことがありませんでした
そう それは、旅人たちのしごとなのですね
忘れそうになれば 時にさそわれてくる
軒先に落ちてくる雨色の
無定期の知らせは、
空を裂く
雷 ....
この季節になると思い出します
行きも帰りもバスでした
山奥の芋煮会場に着くと
澄んだ風が吹いていました
肌が乾いてなつかしい気がしました
網目になった体を
すうすう吹き抜けてい ....
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