一足 一足と 雨が近づき
一つ 一つ 我々が浄化され

雨 雨の日に崩れゆくビル 
舗装道路が湿り気を帯びて腐乱してゆく

人が人として輝くために全ての物質は滅び

雲が押し寄せて
 ....
人格のスーパーマーケットにて
宇宙の漬物を買う
星と星とが交際している
水生のマクドナルド
切っても切ってもくっつく血液
ピクルス硬貨でお支払い
学校の墜落を授業参観
騒ぐな貴金属ども
 ....
ダイヤモンドが燃えた
白い皮膚で
月が燃えているという
小さな嘘で
笑い飛ばしてしまおうよ
わずかばかりの白い炎が
燃え尽き果ててしまう前に


穴のあいた靴下を
霧雨のより糸で繕 ....
正でも負でもない0

0は虚数のようなものだ

実存から自由な

観念とは

0や虚数のようなものだ


ぼくはきょう

あるひとが美しいことを

発見したんだ


 ....
泣きはらした様な空が
広がり
あたしのうちまたを
細い暖かい体液がまたながれて
玄関の先の土を濡らしてる
うすぎたない腕を
切れそうな糸のように伸ばし
母が若い稲のようにふさふさとゆれ
 ....
凍えてる
なんて
いいわけを隠して
プールサイドに
埋めた
水草の気持ち

僕の
好きだったもの
すべて
きみに見せられない
夜が
こないことに
なんの疑問もないなら
朝に ....
ましろい部屋の空間で 
宙に浮いたペンが 
血と涙の混じった文字をノートに綴る 
開いた窓を仰いだ神保町の曇り空から 
誰かの涙がひとつ、落ちて来た。 
  
 杭
 重い空から
 雨のように降ってくる杭
 黒い杭
 枯れた大地に次々と突き刺さってゆく

 私はそれを
 何処から眺めているのか
 目を閉じれば
 瞼の裏に火花が還流する
  ....
             080525



すべての商いを忘れ
品川駅に行く
新幹線に乗って
旅をする
南から来た男が
北から来た男の顔を眺める
擦り傷から血が滲み
転んだのか ....
帰っていく
町のともしびが
冷たくなって
帰っていく

月の出ない晩
朝まで
何の鳥を鳴かせよう
誰かがきた
また遠のく町に寄せる
手紙と同じ重さの波
海が近い
花 ....
16のころ読んだ

大江健三郎の小説を

古本屋で文庫で百円で買った

道を渡った喫茶店で

39の俺が読んだ・・・


墜落する物体を見る興奮

幻のように確かな手触り
 ....
 
男は椅子に座っている
頭の上には青空が広がっている
けれど屋根に支えられて
男は空に押しつぶされることはない
屋根は壁に支えられ、壁は男の
視線によって支えられている
目を瞑る、それ ....
夜の街道は

甘い匂いに充ちていた

火を付けるまえの

煙草の葉のような

甘い匂いに充ちていた


ぬくもり

ふれあい

ひこうせん


夜の街道は

甘 ....
夜のドレープに裂け目が入る
夜明けが裾にそっとくちづけると
私はすべてを脱ぎ捨て
一羽の鷹になって飛んでゆく
まとわりつく冷気を翼で切りながら
あなたを求めて飛んでゆく


   私は ....
{引用=ふたりきりでも まだ
さびしいので
ラジオをつけると あなたは
雨音だけで充分だと言った}

愚痴を云わないけれど聞けない
つまらない女ですから
晴れ女でいいねと羨ましが ....
好きとか嫌いとか
そのような感情と同じ速度で
五月の空はわたしのこころを蝕んでゆく

そして陽射しに揺れる葉桜が
散り行く先など知る縁も無いように
他者への憎しみを
こころの襞奥に抱え込 ....
罪をゆるすことなどは出来ないが

腹を撫でさせてやる

癒されるがいい
清しく、邪な風に
華奢な下肢をさっと隠した
裾広がりの白地に
ピンクの薔薇の咲くスカート

立襟のブラウスに
光る栗色の髪を
ながく垂らし
ただ、甘く春に散る
花の匂いを漂わせて
 ....
森の夢―古いボート          前田ふむふむ

     1

青い幻視の揺らめきが、森を覆い、
緩んだ熱を、舐めるように歩み、きつい冷気を増してゆく。
うすく流れるみずをわたる動物 ....
暗い暗い、
星も月もない闇夜より暗い
そんな場所に
今、私はいる
想う人は遠く
もはや、出会うことはない
だけど結局
誰がいても変わらないから
たった独りは変わらないから
孤独な闘い ....
街なかで白い小鳥を配っていた
籠に入ったたくさんの小鳥を
小鳥配りの人が要領良く配っていく
受け取らないつもりでいたのに
いざ目の前に出されると受け取ってしまう
わたしが手に取ると
それは ....
朝日が崩壊した港で
人類を魅了していた
光の筋は届かなかった
万能の魔法は無能になり
知恵の実は腐臭を放つ

太陽がひしゃげて
穴から血が噴き出した
火山の噴火だと気付いた
空からは ....
五月の夜の街道は

緑の風の香りする

きのう遅くにつけた香水


藍の影絵に、

刹那な、微小な

罪びとまえの姿形


五月の夜の街道は

緑の風の香りする

 ....
                 080516




偶然と書いて
ぐうぜんと読ませる
ぐうぜんが生まれ
ぐうぜんが目覚める
ぐうぜんが欠伸をする
起きろ!
朝だ! 起きろ!
 ....
息つぎは上手じゃなかった
あるものないもの欲しがって
白く滲んだ指の隙間から
空をめがけて投げてばかりいた

例えば優しくしたくって
だれかに優しくしてほしくって
地球が ....
初めは小さな湧水だった

流れの始まりは
始まりの音
川の変奏へと

流れる川の音を
聴いていると
行く先々で
音が変わる

一人
 佇んでいる
二人
 柔らかなやり取り
 ....
葉っぱたちのとがったきっさきをさっきから風がはげしくゆらして
じべたに並べられた各種弾頭のことを考える
雨上がりのひんやりとしたゼリーのような中を
ゆっくりと自由に空気を押しながら
あたしは記 ....
たくさんの人が祝ってくれるので
何かが始まったり
何かが終わったり
してしまうのかと身構えた
わたしは臆病なんだ
何も起こらないようなので拍子抜けだ

新聞紙がいくつも折り重なり
幾度 ....
白いチョークで
ポケットいっぱいの
言葉をおぼえた


おさない遊び
二本の線を引きながら
公園をよこぎって
道路をまたぐ
景色がだんだん小さくなる


電車のように
かたこ ....
例えば、階段の塗装の匂いや空の高さで
なんとなくひとりだと強く感じても、
世界の濃度があがっているから、
少しきみが近いような気がして
マーブル模様の空を見上げる。

「この空は君 ....
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