マリー
atsuchan69

清しく、邪な風に
華奢な下肢をさっと隠した
裾広がりの白地に
ピンクの薔薇の咲くスカート

立襟のブラウスに
光る栗色の髪を
ながく垂らし
ただ、甘く春に散る
花の匂いを漂わせて

湿った野辺を歩きながら
今日までの哀しみが
まるで嘘のように
眩しい顔で僕に手をふる

厄介な、誰かのマリー )))

レンゲの薄紫が、
草の色に浮かんでは
そよ風に揺れ、
薄い紫が草の緑にまざって

空をつつむ羊雲と、
こぼれる陽射しが妙に
なんだか怖いほど
長閑すぎる、時。

草むらに敷いた
木綿の布にならべた
大きなブールとヴァランセ
リンゴに突き刺したナイフが
一瞬、眩しく光る

蜜蜂のとぶ此処が、
もしも神の庭だとしても
激しく、きっと僕たちは
所かまわずに、
乱暴な仕草でキスをする

ふたり抱き合うと
緩やかな丘を転げて
いつもどおりこの愛を
想いにまかせ、
いくども確かめあう

濡れた唇のマリーは
流れのはやい小川の縁に立ち、
膝を揃えてしゃがみ込んでは
そして天使のように微笑む

徐にタンポポの綿毛を
ひと息で吹いて










自由詩 マリー Copyright atsuchan69 2008-05-18 01:14:04
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