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海へと下りていく小道に
一匹のセミがいた
地面にしがみつくように
じっと静かにしていた
指で摘んでも動かない
すでに命は失われていた
次から間違えないよう
ひっくり返してお ....
 
 
先生、バナナはおやつに入りますか
バナナはおやつに入れますか
入ってもいいですか
構いませんか、そう思っても
皮はついていていいですか
それとも皮はむきますか
皮はむけますか
 ....
 

耳が遠くなった
もう手が届かないところまで
痒くても
かくことすらできない
 
耳は更に遠くなっていく
遠くなるにつれて
聞こえるようになった
知りたかったこと
知りたくな ....
 
 
道路を丸めて食べる
どうしたら草の音みたいに
生きることができるのだろう
 
曲った色鉛筆
間違えないように覚えた言葉
値札の無い指の軌跡
並べることばかり
いつの間にか上 ....
 
 
テレビでクイズ番組を放送していた
面白そうだったので
テレビの中に入ってみる
星空のきれいな高原みたいな場所に出る
子どもの頃、幸せな気持ちで
家族と一緒に来た気がする
振り返 ....
 
 
桜の花びらに見えましたが
それはお墓でした
とても小さな墓石でした
とても小さな人が
入っているのだと思いました
ところどころ緑に苔むして
たしかにそれでも
桜の花びらに見え ....
 
 
やはりカバンが良い
と男は言って
口から出した大きな舌で
炎天下の夏草を刈り始めた

確かにその場所は空地にも見えるけれど
昔、わたしが「草」
という字をたくさん書いた漢字練 ....
 
 
綱わたりをしていると
月がきれいだったので
僕はまっさかさまに落ちていった

形の良い吉川くんがそれを見ていて
僕らはレンガ遊びを続けた
吉川くんはレンガをちゃんと地面に積んで ....
 
掌は舟
温かくて何も運べない
体液を体中に満たして
今日も生きているみたいだ
塞ぎようのない穴から
時々漏らしながら

階段に座って
ラブソングを歌ったり
駅前の露店で
プラ ....
 
満員電車に乗って
家を買いに行く

途中、西洋タンポポが
みんな咲いてて
僕はそっと
保安林を抜けたのだった

その先には
どいつもこいつもの風が吹き
ふざけんなの雨が降り
 ....
一匹のウマオイが
楽な姿で
息絶えていた
緑が
ひと際目立った
 
隣のビルディングから
人たちが出てきた
時間の話をしたり
何かを好んだりしていた
 
 
冷蔵庫の中を
クジラが泳ぐ
今日は朝から
ジュースが飲めない
つけあわせの菜っ葉は
鮮やかに茹で上がり
わたしは指と指の間を
紙のようなもので
切ってしまった
 
 
 ....
 
初夏の光
ひとつ前の駅で降ります
虫かごもないのに


+


栞はかつて
誰かの魚でした
本の中で溺れるまでは


+


夕日のあたたかいところに
古いネ ....
言葉と
拙い花瓶の
間に
めり込んでいる
弾丸
ある日ふと、音もなく
内戦が始まった日
わたしは回転扉の外で
小指に満たない大きさの
硬い虫をいじっていた
失望し
憤怒し
 ....
 
男は椅子に座っている
頭の上には青空が広がっている
けれど屋根に支えられて
男は空に押しつぶされることはない
屋根は壁に支えられ、壁は男の
視線によって支えられている
目を瞑る、それ ....
 
鼓動のように雨戸は共鳴し
残余するものはもう何も無い
火傷の痕は指に育まれ
心の貧しいものだけが
人になることができる
その線をこえてはいけない
黄土色の骨に包まれた肉体
もはやそ ....
 
砂漠の真ん中に
ペンギンの死体があった
穏やかな光の祝福を受けて
左右非対称に腐れていた
耳をすませば
崩れる音も聞こえた
老いた男はか細い腕で
窓を閉めた
風で砂が入るのを嫌っ ....
人体模型は海を見ていた
筋肉の組織も内臓も剥き出しなのに
それは自分の何をも語りはしない
こうしていると
かつては本当の人間だったのかもしれない、と思う
電池の切れた玩具を
大事そうに ....
コピー機の隣に
幼なじみが立っていた
靴を片方なくしてしまったと
挿絵のように
静かに泣いていた

右手を左手首のあたりに添えるしぐさは
昔と同じ感じだった
野で摘んできた白い花を ....
 
父は毎日仕事で帰りが遅く
平日は構ってもらえなかった
父は日曜日になるとキャッチボールをしたがり
僕はよく公園に連れて行かれた
普段からあまり活発な方ではなかったので
あまり楽しくはな ....
 
空をさす小枝のような
父の指に
赤とんぼがとまる
お父さん
声をかけると
赤とんぼを残して
父は飛んでいってしまった
驚かせるつもりなんてなかった
いい年をして、と
笑われるか ....
 
 
海賊が泣いていた
アスファルトの水たまりを見て
海を思い出していたのだろう

海の歌を歌ってほしいと言うので
何曲か歌った
関係ない歌もいくつかあったけれど
気づかれることは ....
 
 
瞬きをすると虹が溢れてしまう目があるので
笑うと発音しないPを吐いてしまう口があるので
まだ誰にも褒められたことのない君が
冷蔵庫に自分の耳を並べている

僕は機関車と同じ匂いの ....
薄い網戸の向こう
何かの割れる音がする
今日は朝から寂しいものが降っているから
話しかけるみたいに一日を生きたい

消えていくシャーペン工場で作られた最後の一本が
同じ価格で店頭に並ぶ ....
自転車はその肢体を空気の隅々まで伸ばし
僕らのささやかな会話は言葉を放棄して
水の海になってしまった
沖へとゆっくりこぎだして行く
すでに失ったペダルを懸命に踏みながら

陸のいたる所では ....
佐々木妖精さんのたもつさんおすすめリスト(25)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
夏の終わり- たもつ自由詩911-8-16
バナナはおやつに入りますか- たもつ自由詩3*11-5-24
遠くなる耳- たもつ自由詩411-2-18
手渡し- たもつ自由詩1711-2-6
回答- たもつ自由詩410-8-14
童話(おやすみなさい)- たもつ自由詩1710-4-5
草刈り- たもつ自由詩709-7-15
月光- たもつ自由詩2508-11-3
空の匂い- たもつ自由詩4308-10-29
ペーパー・シープ(姓)- たもつ自由詩808-9-12
ペーパーシープ(緑)- たもつ自由詩408-9-5
履歴書- たもつ自由詩1408-7-29
海の伝言- たもつ自由詩2508-6-21
姿勢- たもつ自由詩608-5-30
連鎖- たもつ自由詩608-5-22
雨戸- たもつ自由詩508-5-9
祝福- たもつ自由詩408-5-3
記憶- たもつ自由詩2408-4-14
挿絵- たもつ自由詩1208-3-22
卒業式- たもつ自由詩26*08-3-15
赤とんぼ- たもつ自由詩2908-1-29
大晦日- たもつ自由詩1507-12-31
機関車とくじら- たもつ自由詩1307-12-16
網戸- たもつ自由詩807-12-9
会話- たもつ自由詩2207-11-15

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