ホデリはぼんやりと海を眺める。
眺めたであろう。
初夏の風に荒れる海を。
この嵐の季節、
田には水が必要だというのに、
ホデリの水路は乾き ....
落ちていく夕陽が一段と大きかった
真ん中に「キライ」と書いてあった
濃い橙色で燃え尽きる夕陽の真ん中に
真っ赤な色の浮き彫りで
真ん中に「キライ」と書いてあった
なんだか悲しいので目をそらし ....
新横浜の風景を
しばらく品川と間違えていた
その風景にせつなくなっていた
品川にはきみがいるような気がした
白い光を放つビル
白い光に照らされた道
きみが歩いたかも ....
{引用=
近づいたら
遠ざかる
きみの性格
よくわかる
かげぼうし
踏んづけて
石蹴りしながら
帰ったよ
おいしそうな
においがしてる
焼き魚かな
カレーもいいな
....
これは秘密のことば
辱められるでもなく
この部屋は
蒸発を続けている
届かないところで
届かない息をしていた
一日に気付かれぬよう
毎分数センチの ....
080611
六月になると
ブラインドを用意する
晴れたら暑い季節です
陽に焼かれ
暑いのは我慢して
幼い声でいわれても
降りるつもり ....
やらなければいけないことが
たまっている
そんな時にかぎって
思い出すことがある
親水公園からの帰りみち
あの
ふたつめの花がかわいかった
と聞こえたのだけど
あぁ
と ....
つめたい湯につかる
それが
湯であった痕跡は
柔肉や
匂いで感じられる
追いだきは
追憶に似ている
それが
かつて湯であったこと
エネルギーの再現 ....
何かを食べねばと思い
毎日何かを口にするのだが
それがなんなのか
今ひとつわからない
ある日の晩に
思い切ってそれを
まじまじと観察してみたらば
うにうにと何かが動いていた
翌日か ....
半そでの季節になると
肌の匂いが懐かしく
やがてそれは
真夏の音に掻き消されて
懐かしさはまるで
現実とは言えないほど
曖昧な記憶になる
半そでの肌を
すっと
初夏の風が通るた ....
着ているのを忘れるほど着なれたにおいの上に
すっとしてほっとするほのかなにおいをはおり
むわりと包み込んでくる空気を受け流しながら
いろいろな顔の一面をのぞきにいった
家から抱えてきたざらざら ....
物心がついた頃
私の首には、細い紐で作られた長い首輪が掛けられていた
その時の結び目は確か、みっつ
毎年、誕生日に紐が切れる
だから毎年結び目が増える、ひとつ
そして毎年、少しずつ短くな ....
職場の同僚に教えてもらった
初夏の広域農道は明るく開放的で
自然と車の速度も速めになっていく
ストレスフリーで思うがままに操る車
エンドルフィンが漏出して
ハイな気分で
車を操って ....
緑色の雨が降るとき
どこかで誰かが泣いている
そんな気がしてならないのは
あの日君と出会ってから
やさしい心の奥で
僕は君を求めている
このままやるせないままで
雨に打たれるのもいい ....
せいに意味を感じられたらよかった
*
{引用=
意味なんかないと
笑っていえたなら
ぼくらもう少し強かった
ひとみの奥に傷が見えるよ
夜はまだ ....
窓越しの陽射しが
薄いまぶたを通過する
汗ばむ髪をかき上げると
晩夏が私に混ざり合って香る
あの日に帰りたい
そう思ったことの無い自分が
幸せなのか不幸せなのかわからぬまま
季節がま ....
雨は崩されてゆく
透明の灰が静かに積もりゆき
アスファルトの水溜りに雨音の波紋ができた
土地は湿り気を増し
ビルディングは地階から 灰に埋まった
飛び散る 雨
しぶきが足元を濡らし ....
つ、たん、とわずかなタップダンス、軒先を転がるようなリズムがして
時のながれをひとあしおいこして行く
あのひとは、いまごろ猫だろう、思いのほか自由な四肢で世界を掻い ....
{ルビ砂見詩=さみし}くなったときは
{ルビ気意多居伝和=けいたいでんわ}を{ルビ診=み}る
{ルビ素己=そこ}には
{ルビ図真大智=ともだち}が{ルビ羽楽=わら}って{ルビ委=い}るのだ ....
12/9
ばらっ ばらっと こどもたちがかけて
うたをうたうひとは すこしだけ
しずかになった
あれは はとではないね
はといがいのなまえをしらないのだけど
12/10
....
{画像=080602022745.jpg}
波打ち際に沈む
ガラス片のように
毀(コボ)れて
流れて
静かな時間の中で
出会いを待っている
満ち足りた時間が
角を丸く取り
いく ....
けれども胸は 青く傾斜してゆく 怯える意識には
透明なふりをする思惟が 蔓草のようにからみつく
窓の外では 涙のように 果実の落下がとめどなく
そのさらに遠く 地平の丘の上では 二つの白い塔が
....
葉桜のむこうの
三つの波
つながれていたものは放たれて
水辺をめぐり 戻り来る
青に灰に
くりかえす
ひび割れ倒れる間際の硝子に
まだ名のないものが映っては
光 ....
あたまのなか
きみがしめる
わりあいは
ちきゅうなら
りくちくらい
かな
ときに
おおつなみ
りくはしずむ
ときに
だいかんばつ
うみはひあがる
なみはあっ ....
はじめて自転車で転んだとき
きれいな模様の種をひろった
部屋のすみに小さな鉢を置いてまいた
はじめて喧嘩をしたとき
種から芽がでてきた
塾通いを始めてから
すくすくと成長して葉が繁 ....
おそらく灰色の 町外れの停留場は
傘の上のダンスの 懐かしい音がするので
目玉の星が キラキラ光ってしまう
セルロイドは酸性雨に弱く
ネジ式の動力で
スキップをしながら溶けそうにしてい ....
この碗はわたし
ひんやりとした手触り
入っていたのはひと綴りのことば
自分に深い意味はない
ここまで来て
この次に至る中継点であっただけ
どうなるか分からない はいいろの海に
漕ぎ出し辿 ....
ドラマで
そんなセリフがあったのだろう
次男が
階段ごしに質問してきた
気のきいた答えでも言えれば
良かったのだが
ぼくは
じぶんの頭のうえに手をかざして
....
080530
キュー
キュービクル
美しい連想が
恐竜を孵化する
化石の卵から
人間も作る
キュービクルの巨人に
未来を託す
見てく ....
言葉と
拙い花瓶の
間に
めり込んでいる
弾丸
ある日ふと、音もなく
内戦が始まった日
わたしは回転扉の外で
小指に満たない大きさの
硬い虫をいじっていた
失望し
憤怒し
....
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