杭・火花
塔野夏子

 杭
 重い空から
 雨のように降ってくる杭
 黒い杭
 枯れた大地に次々と突き刺さってゆく

 私はそれを
 何処から眺めているのか
 目を閉じれば
 瞼の裏に火花が還流する
 幾たびも

(その向こうに 記憶が視える気がする
 木洩れ日の夏 水面のきらめき 虹……)

 なぜかかなしく
 振りほどくようにふたたび目を開ければ

 黒い杭の雨は降りつづく
 降りながら移動してゆく
 少しずつ 地平のあの丘の方へと
 次々と大地に突き刺さりながら

 私はそれを
 何処から眺めているのか
 あるいは私はすでに
 黒い杭の一本に垂直に貫かれて――

 もう一度目を閉じれば
 火花は還流する
 瞼の裏に 幾たびも
 狂おしく

(その向こうに 視えるものは……)







自由詩 杭・火花 Copyright 塔野夏子 2008-05-25 10:14:43
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