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おだやかに今日も晴れて
廊下を しん と
わたしたちの影がのびていきます
手首を引かれて あなたは
すこし
つまさきで歩いていました
わたしはあなたよりもずいぶん せいが高いから
お ....
集められる限りの写真を集めて、アルバムにすればいい
一人部屋でページをめくり
かつてあった日々の思い出を愛せ
それらの日々をノートに刻み込め
言葉にできないことはみんな行間に遊ばせたまま
言 ....
さみしかったんだ
ほとんど狼みたいに毛羽立った孤独を
ずっと人の死角にかくして
宇宙に旅立ったアホウドリの飛行士の話。
最近、ようやくこの星に戻ってきた彼の話によると、
宇宙の中 ....
沈黙をファイルしつづけた理性は
つぶらな意識をふとまたたかせ
早春の空にくりひろげられる
光のハープを聴いている
おぼろな 三月
見晴らしのいい 場所で
遠く 帝都を仰ぎ見たくなる
両腕を広げると
風に 翼
東京タワーまで
フワリ フワリ 飛んで行けそうだ
春 霞
飛行の航跡に
....
もう、
どこからどこまでが地図だったかなんて
関係なくなって
美しいことをいうよ
きみはきみで
ごらん、
すれ違う人々の両手には、何か
約束のようなものがぶら下がっているね
....
{画像=080302220223.jpg}
ぶくぶくぶくぶく
ぶくぶくぶくぶく
風呂は大きい。
ぼくは魚になって
夜中の風呂場に泳ぐ、
ぐうたら魚。
体にもんもんができて、
ぼくはいっ ....
ああ
いくつもの候補があったよ
さくらとか、みかんとか、まりんとか
植物や風景が多かったかな
もう生まれてくる季節なんか
どうでもよくってね
まろんとか、こなつとか、みさきとか
次々 ....
あしたのことを
考えていました
今が今でしかないことや
過去が過去でしかないことは
そっと忍び来るあしたにくらべれば
ずっと簡単なこと
あしたはいつも単調 そんな貌で
あなたのこ ....
果てのないような冷たさの
季節にあって
白い六角形の粉末は
人間の傲慢を
目覚めさせてくれるようだ
横に吹き荒れる風を友にして
人の造った灰色の道を
埋めつくし
道と道でない境界線 ....
土と肉の熱を計る
なかば眠りながら
蝉の幼虫がさくらを吸っている
土をほじくり返し
あやしたすずめをその手ずからうずめ
いらなくなった枝を突けば
まるでそこだけが日溜まりのようです
....
白い大きなシャツを着た
無邪気な少女が
駅前のロータリーに
集う鳩の中心で
詩の朗読をはじめた
僕も鳩に交じって
道路にダンボールを敷いて
排気ガスを吸いながら
彼女の言葉を聞いた ....
玉葱の味噌汁に
なみだを一滴入れてみたものの
塩加減は少しも変わらず
だれも悲しくなりませんでした
風の強い庭先に鳴く野良猫に
思いつきで名前を呼んでみました
ずざ、と塀を駆け上がる音 ....
1.「ナオタへ」
{引用=すこやかなよるに
知らないこと を
ふたりで 机にならべた
フライ返しで
ナオタは
ひとつずつ
ひっくり返した
ナオタは
ゆびがやわらかくて ....
きっちり塗っていたのに
反対車線にはみ出す
雲が蜘蛛が雲の隙間から太陽や太陽が鋭い爪を
刺す
差す
おおきなおおきな
くも
はみ出た者を串刺し
みんな応援している
手拍子が聞こえる ....
立春を過ぎて
この冬一番の冷え込みが続く
ピンと張った透明な空気に
色づいていくのは期待感かな
早くこの冬を綻ばせて
もこもこに着込んだ重いコートにも押しつぶされそう
あ〜あ、今日 ....
ニワトリ小屋の扉を開けて
射し込む朝焼けの光に
山吹色にかがやく
あたたかな藁をもちあげ
あるか
ないか
たまごが
のぞきこむような気持ちで
布団から起きあがる
....
レクエルド。
砂時計が音もなくなだれを成して舞い墜ちる
夜にあなたは迷いこんできたちいさな銀河を
手のひらでつつむように抱きとめる 葉脈を
透かしてみえる地球の裏側では生れながらに
しろ ....
新しい雪の降り積もった
静かな屋根やねが
水平な朝に焼かれて
私の底辺をもちあげる
増幅する光の波が
うずくまる私の手をとり
青い影を洗う
そうして
裸にされてゆく、わたし
....
時折天井から記号が滴る
灰色の水槽の中には青白い都市が浮遊している
祭壇めいた台の上で
少年はくる日もくる日も
華奢な実験をくりかえす
時々淡いひとりごとを呟きながら
ほのかに ....
血と、ローズダストの色彩が濃く染みた粗い石英の粒子。そしてジルコンを含んだ研かれた花崗岩の階段がつめたい光沢をともなって果てしなくオリンポスの山の頂から薄紫の色に滲んだ淡い雲の間にのびている。エーゲの ....
一秒ごとに
とどまる
時間が
抜殻として
輪郭を残し
なだらかに
連なる
呼吸と
思考
いくつかは保たれ
いくつかは置かれたまま
ふりむけば
うすい
半透明の
殻が ....
ゆうろさん料理をしましたか
ええ、しましたよ
左手 お野菜洗ったので冷えてあかい
右手 あついお鍋を見ていたのでももいろ
今日はどこで
小鳥の巣箱よ
小さなやかんに小さなお鍋
風邪ひいた ....
いつかどこかへ
去るときが来て
道を奏でて
道を奏でて
奇妙にしばられた
音をひとつほどいて
粒のかたちに返し
行方を見守った
ひるがえる午後の
背の ....
いつからか
従えずにはいられないような
ある種の隷属のなかで
炎をおぼえた
つめたい石を蹴飛ばしながら
無言の
雨に
含まれ、ながらえ、
水たちの森は
....
渋谷の外れにあるバーに入ると、スロウな音楽が流れていた。奥のほうのソファに身体を沈めると、隣にお日様が座っていて、誰も彼女に気付かないようだった。それもそのはずで、月や星はあんなにキラキラと光っている ....
不安のきえない夜は
こうやって
雨の音を聞くんだ
ひっそり こっそりと
しばらくはやまないよ
焦ったりしないで
明日に追われたりしないで
そこで ....
くずれおちて 波に
さらわれても いつか きみの渚に
ながれつき たちあがる 砂の城で
愛のために そして死のために
おなじひとつの 星座をうたう
君が手に引かれるままに
ここに来るまでのことを覚えていない
余所見ばかりして 少し眠っていたのは
良い道だと称えられていたから
手が離れてしまうことなんて恐ろしすぎて
そうやって守っているも ....
ころがる
しずかな すいへいせんの上
あさ
お茶をわかしながら
てのひらで
背骨をなぞった
恐竜のように
そらへとつづく梯子の ように
あなたが
つづいている ....
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