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わたしは 多分 あなたが好きです
多分って などといぶかしまず 今は聞いて下さい
わたしが あなたを 想うとき
それは とても 哀しくなるのです
何故なら 恋慕の情 ....
文章が
飛行してゆく
文章が飛行した後を見上げる
たなびく理の跡
ボーイングの羽の撓みのような
少しきょうふ感のある
右上がりの字を気にしながら
ぼくは帽子を深々と被り直す
い ....
みずうみの名は
みどりこ
といいます
その昔、此処は険しい谷で
人も獣も草も水もありませんでした
みどりこは
ちょうど五本指の掌みたいなかたちをした
ゼリィ状のみどりこでした
ひら ....
ちいさな掌を
ひとつ結んでは覚えてゆく指あそび
ほんとうなんて要らない
と言い聞かせながら
それは未だ新しい
老いさらばえた両腕は
調和したスープと
子守歌で満たされる
動かな ....
ロシータっていうおばあちゃんは
サンホアンで一番年取ってて
猫にやさしくて
工房の隣の彼女の家には
いつも猫がたくさんいて
使い物にならないボートが
とまっている
....
僕は明日引越しをする
仕事上の都合で
電車にて
片道わずか一時間半の距離
大げさなもんじゃない
なのに
こんなにも心が寂しいのはなぜだろう
それはきっと
あの少年に会え ....
囁く水の招きに
おとなしくなってゆく
たのしい夢をみて
かなしい夢もみて
ちっとも貧しくならないから
誰にも聞こえないように小さな声で
誰にも聞かれないように大きな声で
蜂蜜みた ....
ずいぶん遠くまで歩いて
きみのクツはまるで
最初と違うカタチのようにみえる
たくさん土の上を転がって
きみの服はすっかり
元の色を失ったようにみえる
何度も傘が破れて ....
?.
一日中ひどかった雨も小降りになって
窓から見る白樺の木は
ここ最近やっと葉を落とし始め
冬時間に変わって
六時にはもう日が暮れてしまうようになった
公園の明かりは ....
いつもとは違う道を帰った日の彼女
もう歩けなくなって
駐車場の水溜まりに降る雨の波紋を見ていた
つめたく完璧な丸を描いて
にびいろの波紋は静かな口調で責めるから聞いてしまう
そうだね幾つ ....
ふるい手紙を火にくべたんか
けむたい朝に眼をしょぼしょぼさせとんね
一番遅くに寝たもんが
一番早くに目を覚ます
土鳩鳴いとるよ
くるくっく
卑しい国には正しい言葉なんてありゃあせん
....
―刺青
そこには船があって
ずっとずっと遠くで
何かを引きずりながら
航海を 続けている
そこには涙があって
ずっとずっと近くで ....
少年と少女のささやきが
午後いっぱいの光をあびて
牛になる
と、牛飼いの男がやって来て
どこかに連れて行ってしまう
もう少年も少女の
ささやきはしない
語られる愛と
愛に似たものは
....
雨が降ってくると
金沢を思い出します。
金沢は年間六十日しか
晴れの日がありません。
大体曇りか雨です。
空はいつも
ブルーグレイの薄雲がかかっています。
雲のない ....
買った記憶もないのに
本棚に入っている本というものがある
まるで私の目を盗んで狡猾に忍び込んできた
小動物か何かのようだ
そしてそれは
小動物となることで
本としての役割を ....
―冬が来る前に一同集って
旧交をあたためようぜ―
Zからこんな招待状が舞い込んで
まあ、行ってみるか くらいの気持ちで
出かけていった
Zは中学時代の番長で
苛めっ子だった
俺はいつ ....
肺ガンでじいちゃんが灰になった
田舎のきれいな緑の世界に
黒の群集が蝕む
晴天がこれほど
嫌なものだとは
長い煙突から天に煙
じいちゃん
太陽もその最後の力で
灰色にし ....
全て 噛み締めておくには
無粋な 感情
でも
口に 出してしまったら
最後
別れを告げる
恐怖に おびえる
夕立の中で君は背骨を読んでいた。
真っ暗な瞼のうらに現れているみどりの正三角形を、
くうきを吸い上げた則妙筆でなぞるように
繰り返してみる。
大地を這う蛇に似た、
千万(ちよろず)の ....
蛍光塗料で
発電したような、
剥き出しのエポック
僕は感動して
いやらしくニヤけていた
ここが先端
ひき裂かれ
乖離した阿吽が
子作りをしていた
終焉の人々は
自由に蹂 ....
◇コスモス
炭鉱の閉山跡を
コスモスが埋め尽くして
炭鉱夫の青春が還つてきた
背景はあまねく
コスモスと青空
◇金魚
金魚は
いくら ....
さくらがみたいのと
おまえは呟く
けれども
おまえの為に
こんな時期に
桜は咲いてくれないのです
ようちえんにいきたいの
とおまえは呟く
しかし幼稚園は日曜日に ....
真夜中
雨の音で目覚めた
まだ家にはカーテンがないから
部屋の中は
街灯のオレンジ色で
隣に寝ているはずのおまえが
窓際に立って
そとを見ている
おまえのい ....
女にふられたので、
稚内へ行って死んできた。
稚内へは、羽田から直行便が出ている。
うすぐもりの空がまるでばけものの飛ぶ空のように広い。
ツアー客のでっかいトランクのなか、
浪人生みたいに手 ....
どんな虚言を吐いたって
xとyの次元なら
すべて真実
立体交差も
ただの戯事
真実も嘘も
自分の中で咀嚼して
勝手に
その身の糧となる
世界に“ほんとうのこと”なんて
ない ....
朝顔の 露に張りつめた花びらは
美しい
しかし 弄れば弄るほど萎れていく
ダイヤは研けば研くほど
耀きをます
あなたはどちらが真に
美しいと思ふだらう
いや 野暮な問ひは止め ....
どうやら
あの絵の具たちに
とりあえずでは
あるものの
蓋をすることが
ようやく
できたのか
足りない色
新たな色
質朴に
買い足せばいい
純朴に
もらえばいい
さらなる ....
マリーゴールドと
マーガレットの区別がつかない
ツバキとツツジを間違えて
笑われてしまう
アヤメとカキツバタにいたっては
はなっから諦観の境地で
でもそれはちょうど
パスカルとサルトルを ....
この時を封じ込めるように
祈る
静かな瑠璃色は
両のてのひらを祈りのかたちに
そこに少し息を吹き込むようにして
そっと閉じていて
ひそやかに夢を育んでいる
あなたは
わざと大雑 ....
ひざっこぞうは
いつでも
こぞうのくせに
ぼくがころんだら
いちばんに
まっさきに
そこだけでいいとでもいうように
すりむけてくれるんだよ
赤チンキぬってさ
カットバンはってさ
....
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