すべてのおすすめ
きぼうをすてたら
おわりがこない
かなしみもこない
いきだけのこるから
いきをする
だいちにくちづける
でんぱのてがみをまつ
まちつづける
こない
きぼうをすてたらいけない
せ ....
唇の皮を剥く癖が幾つ夜を重ねても直らない
横に居る誰かの顔色を窺って
「飽き飽きしてる」
と言われるのを怖がっている
こちらもそう言ってしまいそうだから
窺っている
ほの白い布団
....
人と争うように働いて
話す気にもなれず
押し黙ったまま一日を終える
仕事帰りの公園のベンチ
あたたかいゆげで慰めてくれる
たこ焼を食べていると
目の前の通りを
なかなか客に呼び止めら ....
1
にいちゃん
わたしな
どこへもいけへんねん
うばすてやまにすてられたみたいや
ほんよんでるだけやねん
夕暮れ
わたしは掃除しながら
聞いていて
そんな今 むかし
....
はじまりのない海は、飽くことなく月光を滅ぼし続けた。海の窓はいつでも閉ざされていて、裂き傷のようなものが表面をいろどるだけだ。海の上では乾いた街の幻影が旋転していて、槍のような水柱を呼ぶ。街は律動する ....
(足音が空に響く)
木枯しの吹く 門の影にひとり
傘を片手に
かんざしをなおし空をぼうっと見つめる
黒髪がしん
と光る寒さに
空はなにもいわず
そのままの形で をんなは立ち
「あ」
....
ぞくぞくするものだから
風邪をひいたように思ったのだけれど
なんだ
背中に離婚届が貼り付いていたのか
ついでだから
その上から婚姻届も貼ってしまおう
少し温かくなるかもしれない
それ ....
待ち合わせに遅れそうな時
メールひとつで済ませてしまう
嘘っぱちの言い訳も
おたがいの顔が見えないから
罪の意識を感じずに誤魔化せる
どこへ行ったか
寂しがり屋の待ちぼうけ
....
嗚呼、
空駆ける鳥よ
見上げる僕は土の人
忘れていたね
空白を埋めずに
時は流れて
小春の今日は
黄色い花びら
薫り立つ
グンっと
背を伸ばしても
その翼には届かない
....
化石を拾う
改札口は静かで
足跡ばかりが通り過ぎていく
ぼくはそこで案山子になっている
へのへのもへじ
通り過ぎてく人に
顔は何気にそう書かれてしまったけれど
何か無限のようなかなし ....
月と太陽
どこで生まれたのとむすめに聞くと
ここ、
と指さすのは居間の床
その居間で月見をする
高窓から見える月を
まっさきに見つける子どもたち
私の ....
てらてらひかる 満月の夜
年老いたゾウは 檻の外を見ている
外はすっかり 秋の装いだ
どおりで最近 足の筋がしくしく いたむわけ
長いはなで 鉄柵に触れ
静かに眼を 閉じてい ....
真夜中の
骨の色素が熱を帯びて
暗く
暗く蒸発してゆくのです
未だに守れぬ約束へと
恐ろしく白い
わたしの骨は
いったい何を支えている
夢か幻か否現実か
未来は己で決める
....
めくるめく展開する青
それは淡い水彩画で描かれた
青いヌードだった
彼女のくれた画集の傍らで
煙草くゆらす僕
灰色が包み込んでいく涼し気な青の女体
けして君を汚したりはしない
....
ランブルのデミタスを
すするように飲むと
僕の舌先に
震えるような秋が来た
ドミ二クチノの蒼い絵が
氷のように冷たく見え
飲み干して
しばらく歓談していても
僕の胸のうちの秋は
....
よく晴れた日
ハンガーに吊るして
自分を干してみる
きっと人はこのように
優しく干からびていくのだろう
水分も記憶も失いながら
+
鏡に向かって
笑う
そんな嘘
ばかり ....
アースジェットが
秋のはじめになってもまだ半分くらい残っている
しゅーと夏を吐き出してみる
秋はそんなところから始まる
ぼくは割り算を高い空に置く
割り切れないことは繰り上げるのか
繰 ....
眠りは当局から支給される
月にいちど注文をすることになっている
私は主に スタンダードな「白の眠り」を注文する
けれどいつもおなじ眠りというのも
あじけない気がするので
やはりスタンダードな ....
イチジクを手にとる
あなたの背中を思い出す
いつかの電車内で振った
人体骨格のねじれた手首に
無邪気な笑顔でこたえた少女
そこにみだらな星はなく
鮮烈なスタッカートが鳴り響いていたので ....
母はいつも眠る前に鍋に水をいれ、煮干をいれる
朝になると
はりがね色の文化釜でご飯を炊く
そのかたわらで
煮干のだしでおみそ汁がつくられる
その朝が私のふ ....
人の嘘で
鳥は空を飛ぶ
鳥の嘘で
ドアは人を
閉じ込める
ドアの中で
人は鳥を
飛ばし続ける
+
いつも
三人なのに
いつも
八等分
してしまう
+
....
もう一度、始まるのです
そう言って眠り落ちる人
危なくはないですか
休みたくは、ないですか
瞼の裏側の静かな暗闇で
一人で旅に出るそうです
朝までには戻るから、と
その人は
積 ....
三本目の脚の脈打ちを性器に感じながら、夜はたちうかぶ精気たちを無数の舌でささえてゆく。いまだ散開しつづける空の屍骸が夜のなめらかな声帯をたきつけて、金属のすりあう音をたてさせている。人と人との間には巨 ....
あなたの方で風が吹いている
わたしはわたしで知らないことばかり捜している
秋がそこらじゅうで溶けはじめるとき
空き瓶には夕くれが満たされるとき
幾つもの詩を繋げるようにして
わたしはあな ....
あなたを 美しいと 思った 秋の日
秋の日
あなたは ものごとを わたしの肉に
染み込ますように わたしを 叱るのでした
わたしは 朝露を 飲むように
あなたを 識る
遠くに 近く ....
アゲハのハネは夏の欠片
土の上にパリン 零れる小宇宙
落ちていたハネなんですけれど
日にさらされてか
ガラスのように かわいていて
リンプンは星屑しゃらんりん
本体は見あたらなくって
....
プラットフォームで 日陰のベンチに坐り
僕は詩を書いていた
いいや君への手紙だったのかもしれない
白い午後
静かな校庭のこと
いたいけな青空のこと
いいやそんなことじゃない
間奏 ....
炊飯する
ごはんはきっと海苔で巻かれたい
秋刀魚焼いてみる
秋はその辺りでちりじり色つきはじめる
お米は海を知らない
秋刀魚は畝を知らない
けれどもぼくは知っている
そこでぼ ....
風が吹いておりました
風が吹いている日に飲む野菜ジュースは哲学の香りがするのです
そんな日は詩を書きたくはないのです
空があまりに無知なので
わたしの青春としての位置づけは
もう随分と前 ....
「本を読みなさい」
その人はそう言って
夕暮れて図書館が閉まるまで
わたしの隣で静かに本を読んでいた
映画を観なさい
音楽を聴き ....
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