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まどろみながら
僕が見失っていたのは帰る場所だった
それとも
もしかしたら行き先だったかもしれない
目に見えるものの手触りを確かめて
それをどう思えばいいのかを確かめていた
孤独な色だ ....
哀しみをうたにしたいのだけど、
感情は言葉になる前に溶解して、
つるりと喉の奥へ消えていったよ
哀しみはどうにか優しくなろうとしていたのか
最後にスープのような、甘い味がした
誰 ....
排気音が高く
高く空へ昇って
陸橋を走るぼくは
町並みに連なり
息づかいみたいに
浮かされて
白くあからさまな
積乱雲を
水平して
開けていくにつれ
早く
....
木陰で体温の
呼吸する
と、内と外とが入れ替わり
境目に懐かしい
わたしのかたまりがある
施設の人と集配車の運転手が
簡単な口論をしている
近くのベンチで関係のない
小柄な男性が ....
幼い子の背をひらくと
痩せた背骨の喉奥を渉る
薄ぼんやりとした虹が、
そして
拾うように弾き上げると
それからは早かった。
飛んでいく静かな底の
透明な成長が、
....
幸福の置き場所は
海のにおいのするところ
大事な言葉が生まれたところ
風がとおりすぎて
小さな駅におりると
細い道の向こうがわ
手に持った荷物の
不安定な重さが
私であることの証
....
ひらひらと散った 夏
インディゴブルーに染まる、前に
秋へ化けた
通り雨が隠した
暗い雲に気を取られてしまった
春
もう二度と出会えないかもしれない ....
白い俎板のうえに
水洗いした秋茄子をのせる
遣い慣れた指先でまず、
縦半分に切ると
紫に汚れた
君は構わず
それを乱切りした
その一部始終を
彼らは黙って
観ている
増水の ために
すっかり 荒れはてて しまった
堤の かよって ゆく なかを
猫じゃらしを 噛み ながら
草ひばりの 音が ほそぼそと つづく
すすき野原を ....
八月はしづかに
葉先からくれないに燃え
白い節くれだった骨になる
そのつつましさの中に
芽吹こうとする強い意志を隠しもっている
漂流する鳥たちは
わずかの間のよすがを求め
自らの骨のゆめ ....
蝉の鳴かない朝でした
胸の端からほどけてゆくひかり
できたばかりの海は睫毛に乗る軽さ
静かに浮かぶ顔に人知れず声を燃やす
髪を結んで横たわる
約束、と呟いて水より生まれし数字を ....
二十歳の黒髪のような、
ブルックリン橋から、曙橋を繋ぐ空が、
未踏の朝焼けを浴びてから、
青く剥落して、雨は降ることを拒絶した。
とりどりの青さを、さらに青く波打って、
空は、傘を持たずに、 ....
秋、
そのつぎの
ひめくり
菱形がつらなって
つかめない
光のドロップ
ひらきっぱなしの
本の表面に
ゆらめいて
今
今が
かたむいてゆく
夏の名残を雨が洗うと
淡い鱗を光らせたさかなが
空を流れ
ひと雨ごとに秋を呟く
九月は
今日も透明を守って
焦燥のようだった熱や
乾いた葉脈を
ゆっくりと
冷ましながら潤ませ ....
神が住むという山の麓は、瓦礫だらけの扇状地で、そ
こに掘られた深い母井戸を彼は「マジャール・ダー」と
呼んだ。この場所から井戸の水面を見ることはできない。
カレーズと呼ばれる地下水路はここを水 ....
紅い空に足跡
群れで飛び立つ帰りの鳥たちが
カイトを引っぱって
うごく星座の結び目たち
ゆうぐれに影の成す
シンクロのダンス
花が半ば眠りそうに
しおれていた
風が吹いても
....
私たち 午後には散文を開いてエレクトロニカにする どうしても、というなら黒人霊歌でもいいわ だけど、こうして眼を閉じるわね 表通りのニレの木に(嗚呼、もうこんな時間)絹のつやをした鴉が居る 美しい眼を ....
ほどよく冷えた桃の
皮が剥けるのも
待ちきれない様子で
傾いでゆくあなたの
日焼けした首筋
滴る果汁か
それとも
戯れの残り香か
甘い匂いが
鼻腔の奥に絡んで
涙させる理由
....
砂丘に洗濯機
ウィリーは素朴
上手に筋肉
そのまま届きそうになり
春子、帰宅
ジャングルジムから
人の匂い
道路は名前
生きることは
重力の淋しい過程である
という前提にたつと
....
窓を覗くはにかみ屋の風
夕涼みの教室で戯れる 置いてきぼりの陰法師
季節外れのうぐいすの声を聞きながら
紡いだ詩をただ砂場に埋めていく
鳴らない鐘に聞き惚れて 翼を運ぶことさえ止めてしまった
....
空の種族が おとした
羽根を ひろいながら
あるいている 一千本
あつめたら つばさと
交換してくれる 約束
みどりいろに見えた空は
そりゃ当たり前みたいに青いわさ
そうやって
きかれりゃあ
そりゃあ
なんかいちまい
目に膜が
かかっとる
うすくて
透けとるのが
はがしてみやあ
....
最初の 真昼の 星が
ことばの 紀元前に またたいて いる
やってきた 9月
地には ことしの 豊穣を
やくそく した 稲穂たちや 曇った空
透明な 稲びかり ....
ぼくには声はないよ
さけんで さけんで
声はきこえなくなってしまったよ
ぼくは、うたえないよ
ただ、卑屈な笑みしかつくれないよ
正直、今日も死にたいと思っているよ
病気と言って ....
浅瀬のような空でした
私は止まれない魚になり
そして反芻する言葉の中で
現実だけが薄暗く沈んでいきます
ぴしゃりぴしゃりと時間の岸に
私の影が跳ねています
それよりもあなたは
....
青や緑の絵の具を
うすくのばして
あの透明をあらわそうとして
さっきから
なんども失敗している
{引用=
手をひいて
石を渡る
ぬらりとした光沢に滑らせた足を
からだごと、ぐいと引き ....
午前の陽が
空間に満ち満ちて
こぼれそう
木々の緑に
この陽光は 留まり
深い瞑想の光合成が
効率よく 静かに浸透して
一葉は重く 沈む
地球の裏側で
ラプラタ川のほとりで ....
この病んだ時代に咲き誇る花
その輝きは時代を超える
傷つきやすいガラス細工の心
その心は昼も夜も
霞のかかった丘の向こうを見据えている
飛び出したい衝動を抑えることは
....
*
澄んでいく記憶の端から
水色の汽車が走り出します
ため息や欠伸といった
水によく似たものたちを
揺れる貨車に詰め込んで
透きとおる空の下
滑らかなレールの上
どこまでも
どこまで ....
良くできたうめぼしは
故郷の懐かしい味がする
すっぱさのなかから
忘れかけていたものが顔をのぞかせて
こんなんだったよね
と問いかけてくれるような
ほどよく皺くちゃで
秋アカネの ....
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