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蛍村の事
夜の湿ったシーツ
燐寸を点ければ
一寸先の闇の中の奥まった処に山があり、野があり、兎に小川、優しい鬼たちの里がある
何故帰って来たのかと ....
勢いを失って
引き下がるように身を{ルビ拱=こまね}いて
椅子を押しつぶすばかりの
巨体を投げ出して
{ルビ俯=うつむ}くだけの部屋
その午後
汗ばんだシーツは皺くちゃになって
塵 ....
君の
悲しみが
夏の夕立だったら
いいのに
なんて
ボクは、
無責任で
開けっ放しの
窓際に
飲みかけの
ソーダ水
、と
読みかけの
本が
....
なにげない
なつの ゆうぐれ
そんなに たかくは
とべやしない
ふうけいの なかの
いっこだけの てん
であるところの
わたしが
おさまりきれない
でかすぎる ゆうぐれ
あ ....
とんぼ (あか) とんぼ (朱) とんぼ (あかよ)
蜻蛉 (あか) 蜻蛉 (あか) トンボ ( ....
ここが
せかいのはしっこだ
もんばんが
ゆびさした
しょっていたものを
ぜんぶすてると
からだがかるくなった
せのびやくっしんをするあいだ
もんばんはうでぐみをして
かぎのたばを ....
サンディの煙草は誰にも止められない
と、誰もが思っていることを
サンディはなんとなく知っている
黒く長い髪
茶色のひとみ
その他の身体的特徴
にもかかわらず
サンディといえば
....
九月になれば
誰かが語る
わたしは頷いてみる
そこに誰かはいない
誰かが語る
語り尽くせないほどたくさんの物語を
空には大きなノートが広がっている
鳥はそこに詩を描く
誰かが語る
....
末端の夜で
日常にある
輪郭のない
さびしさを
手繰り寄せる
その顔は
か細くゆがみ
青白い灯火に
照らされて{ルビ寝=い}
さまざまな角度で欠けている
ほおいほおい
呼 ....
タクシーで溺れた
昔はあんなにうまく泳げたのに
手足をばたばたさせても
座席の底のほうに沈んでいくばかりだ
ナイター中継を聴きながら
運転手さんが舌打ちをしている
水の中では舌打ちすらでき ....
わたしの中に森が生まれたとき
その枝は音もなく広げられた
指先から胸へと続く水脈に
細く流れてゆく愛と
時おり流れを乱す悲しみ
わたしを立ち止まら ....
ちいさなふねが
いくつもつながれた
がんぺき
をとおりすぎて
まつばやしをぬけると
みじかいすなはま
でこみちはとだえていた
なみうちぎわから
いっていのきょりをおいて
あるくあ ....
バスルームに聞えて来たのは
ベランダのふうりんの音
さんど ちり〜ん ちろり〜ん ちり〜ん
急いでバスタオルに身を包んで
ふうりんを見に・・・
短冊は揺れてるけれど音は出ない
カーテン ....
知らない
し
暑くもない
し
ちょっとだけ寒かったりする
あ
初めまして
わたしは
あれ
誰でしたっけ?
夏の果てに棲むという
或いは大きな口をひらけて
あれは ....
もし僕のマワリを吹く風に
色がついていたら
たくさんの場所で
数え切れないほど
なまえをもたない
色に出会うだろう
そのとき僕は
シロツメクサの
....
サービスで付いてきた
しおりの柄が気にいらない
本の中身は上等なのに
どうにもこうにも
これではいけない
気にいったしおりを
自分で作ろうか
それでは本に失礼ではないかな
それでも ....
遠のいていく
夢の終りの予感
連続する瞬間の
寓話的イノセンス
遠のいていくわ
雨
音楽的無添加な透過
指の形良く
挟んだ煙草と
くゆる
正視の冷却
覚めてゆく未知数
....
+TATOOの悲しみ
水商売をもれなく売女と呼ぶ
その在庫表の端には
くたびれたドラえもんが描かれている
規則正しく働ける
抜け目ない線とスイッチの裏の
せわし ....
一日終わる 堕天使達の
かくも短き 一夜の宴
折れた翼を 探しつつ
心の氷 溶けざらん
旨き肴と 旨き水
膳に集いし 一時や
心に羽根が 生まれる如く
話し弾 ....
夕ぐれが夜になるふしぎ
月がかけていく夏の朝
地球のかたむきを
人はいつも忘れている
かぜがつよい なにがとんでくるかわからない でもきもちがいい たいふうのせいだ いもうとはねつがでて ねている じてんしゃにのれないし いもうととあそべないので つまらない こんどは ははがねつをだし ....
竹竿の先に灯火をぶらさげて
小さな子から先にあぜ道を歩いて行く
ひと粒の米に
千もの神が宿っていた頃から続く火で
稲の葉を食べる虫を追い払う
のだと言うが
揺れる火はまるで
人魂 ....
熱い日がまた来る
今日も暑いね
あの日も暑くて・・・
父さんにとって人生で最大の危機の日。。
熱い日がまた来る
思い出に熱波が押し寄せる
今日も暑いね
戦争は知らないけれど・・・
....
夏の最後の日差しが眩しくて
何も言えずに目を閉じた
晴れた空に向かって
君は背伸びをして手を伸ばす
それでも僕は何も言えない
ひと夏が終わるたび
....
くらげはもう水みたくなって
やがて海になるだろう
溢れる 空想を両手にとって
きみは穴を掘っている
隣で海を耕しながら
私はそれらを見つめてあげる
....
ぼくらはあまりにも醜いから
醜いから誰かに会うことが恐くて
となりの惑星にさえまだ行く勇気がない
そんな醜いぼくらのせめてもの救いは
この星にうたがあるってことだ
どこを捜しても どこを ....
われらの旅についてかたろう
われらとは わたしであってわたしでなく
すべての旅を ひきついでありつづける
おおいなるひろがり そのなかへ わたしもきえるが
われらの旅にはおわりがない
まるで空に手を伸ばすように
咲いている
マーガレット
欲しいものはなんだろう
太陽も
土も
暖かな空気も
すべてあるのに
乾いた夜のすきまに
星がおちるのをみた
わたしはあなたの声の中に家を建て
夏の風をちょっと吹き入れて
声を聞きながら
寝そべっている
わたしに用事はなかったのですが
あなたの方で用事があるらしく
声色をぴんと伸ばして
いそ ....
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