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詩集「人生の最中に」
批評子
(序)
公子に
薄暗き読書する部屋に
時すぎゆきて30年
海の泡のごと、生きてきしこの方
争いもあり、愛もあり
....
白い桜花のあいだから
かいまみた 貴女のくちびる
いつ どこで そうなったのか
わたしの記憶はさかのぼる
赤い花は嫌いです まして
白い花が降りそそぐその中で
貴女の白い指先がこぼれおちた ....
たとえば僕の場合それは
初めて
しり あった
女
というやつと
つめたい汗を皮膚に浮かべながら
五月
間延びした地方都市のなかで
その延びきったらへんで
道がすこしだけ
ほんの少し ....
貴方はとても大きくて
私は潰れてしまいそう
貴方はとても温かくて
私は燃え尽きてしまいそう
貴方はとても眩しくて
私は消えてしまいそう
それでもずっと傍に居たいよ
....
彼はただ椅子にじっと座っている
赤い林檎のあまさは あたしがみつけだすもの
彼を抱きしめるだけの静かで美しい生活を
いつでも望んで生きている
朝日は遠くにかけていき
あたしはゆっ ....
微かに血の色を混ぜた
純白の火照り。
月光を浴びた濃淡の起伏が、
永くしずかに波打つ夜
幾重にも重なりあう
厳かな山脈を流離う爛漫、
滑り落ちる霞のごとく
裾野へ降りて散る花、死、花 ....
今朝の星占いでは久々の1位で
思わず身を乗り出してTVを見た
いつもと同じ様に家を出たのに
電車の乗り継ぎも
信号の青も
とてもスムーズだった
会社の前で同僚と会い
トークがウケ ....
彼女は彼女
泣きもするし笑いもする
それは彼女の涙で
彼女の笑顔
彼女は素敵な惑星
白いシャツがまぶしくて
目を逸らしてたんだけど
やめた
真っ直ぐ見よう
それは彼女の光
風が ....
{引用=くりかえされる、すべてのいのちと
いとおしきわたしの二人称たちに}
わたしがあなたを産んだそのとき
それとまったく同時に
あなたがわたしを産んだのです
この、配線だらけの街の ....
最寄り駅にあるキヨスクでは
店員のおばちゃんが詩集を売っている
おばちゃんの書いた詩や
駅員の書いた詩や
ホームの柱に落書きされていた誰かの詩が
そこには載っている
地域住民の出した詩 ....
その理論はすべからく間違っている
と僕は彼に言った
この部屋の中を見回してみろ
居眠りしてる奴らばっかりだろう?
教授の経済談義を真面目に聴いてる奴なんて
その数はいかほどのものかと言え ....
不遇、
と揶揄されようがそんなこと
とくに問題じゃないんだ
とにかく馬鹿な話が多すぎる
不条理なことが多すぎる
現実は
なんだってんだ
順列をもっとよく把握してくれ
もっと本気でやって ....
イーサーになりたいと君が言った
そんなものはないと俺が言った
星、星、と君が言うから空を見れば海だった
水と煙に呼吸があるなら
与えられて/合わさって
灰水の洩れる絶望が
生まれる時の絶望 ....
僕らはさみしい子供だから
間違いだらけの夜更けの中で
雨の音を聴いている
最近雨が好きになったのだと
君は言う
明日も雨が降ればいいねと
僕は言う
壊れたテレビを何度でも
....
1
・
・
羽虫の亡骸が
そらに・うかんでる
・
・
・
親指と
人差・指でつまむ・
....
鍵盤の音を確かめるように
ひとつずつボタンを外していく
育ちすぎた夕暮れが息苦しそうに
僕らの仕草に耳を傾けている
一秒がいつでも一秒ではないように
僕らもまた危ういバランスの中で奏 ....
嫁の腹が日に日に膨らんでゆく。
検診に行くたびに倍の生命力で大きくなってゆく。
嫁は四六時中続く気持ち悪さを懸命に我慢している。
風邪を引いてもなるべく薬を飲みたくないという。
嫌いなニンジン ....
花曇の四月から
薄灰色の雨が零れる
桃や枝垂れ桜の
薄紅のあいだから
無垢のゆきやなぎは零れ
春雷の轟きに驚いてか
ちいさなゆき、を降らせている
その様子は
あまりに白くて
白、 ....
ハロー
いま、ぼくのそばにいる、コトバ、は
みどりいろをしています。
ハロー
もう、ハル、なんですから
きっとすべてがうまくいきます。
ぼくの、てのひらで、
コトバ、は、硝煙、の匂いに
....
プラットフォームのうえで
学生が夕焼けにさよならしてる
桜色の空の真ん中では
ぐるぐるトンビが廻ってる
ぼくは君がくれた
読みかけの詩集を閉じて
琵琶湖と比 ....
【100万人のキャンドルライト!】
2003年6月22日、夏至の午後8時から10時の2時間、電灯を
消してロウソクを灯しましょう。それぞれの思いを胸に
秘めながら、暗闇のウェーブを静かに ....
あいつとの想い出を すべて塗り潰したい
記憶の改竄を 密やかに行いたい
本当の終幕を 君の手で引いて
あいつと行ったケーキ屋に突入
苺タルトを美味しく食べて
君の楽しい話に ....
晴れきっている
閃光が停止してる
この路上から垂直に
そのぶちまけられている幾多の天井の上に
切り欠けている
せいかつ
の片側たち
半身の動物園
豆の木 ....
悠々と二羽の鳥が、碧い空を裂いてゆく、
鮮やかな傷口を、
銃弾のような眼差しで、わたしは、追想する。
その切立つ空を、あなたの白い胸に、捧げたい。
・・・・ ....
西日が射している
ヒバリが飛んでいる
あ、誰か来た
青い屋根と黄色い屋根の上に
星が落ちました
僕の家の屋根は白いです
腕時計を買ってもらった
子供がはしゃいで
腕をぶんぶ ....
ふーる、fool、ふーる、who
可哀想に、ひとりぼっちの嘘つきが
櫻吹雪を降らすApril foolな日曜日に
ふっと、footがふと思い付いた足のあした
(そう、あなたはきっと無様 ....
お父さんの背骨の近くを押していく
淋しい箇所がいくつかある
大きくなったら学者かバスの運転手になりたかった
と、よく言っていた
結局学者にもバスの運転手にもなれず
十年前に地方の小さな薬局を ....
母が
「愛してる」、と
言った 父は
私を見ながら
「愛してる」、と
言っている
その私は
貴方に
「愛してる」、と
言って
貴方は
悔しいけれど
愛犬 ....
はるのおなかが
ぷっくりふくらんでいるのは
ぼくがそのなかで
ぐうぐうねむっているから
だけど
はるのおなかは
とってもひろい
だからみんなで
ねむりにくる
たくさん ....
たくさんのさよならを
散り敷いた桜の花びらのように踏みしめて
僕は行く
何に呼ばれて
僕は行くのか
からっぽになった
僕のからだは
何色の絵の具を
入れたらいいのかな
もしこ ....
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