カーテンの後ろに隠れている 風が吹いたときだけ 姿を見せる
か細い足元は少しだけピンク色
潮の匂いと、街の喧騒が混じってる
恥ずかしそうに林檎をかじってる なるべく音をたてないように ....
それから僕は、冷たい生き物に触れるために
僅かな夜を過ごす
山間の人々は自分達の歌を愛している
その歌を聞きながら一枚の毛布に包まって
パンを小さく千切って食べる
滲む群青に少しずつ泣きなが ....
あおい蝶だった、たったひとつの
あおいあおい蝶が飛んでいた…暗い、まばたきを忘れた夜に



さむけに痺れる歯茎の中で、とまどう悔恨のこびと、だらしな ....
ひと筋の唾液色なし雛祭り
包丁のカカカカカッと雛料理
春眠のどこかが海で潮香る
尾の長き生き物らしい。寒さとは
爪並べ指を揃へて朧かな
春の月唐突に死の淵に浮く
わからないものに質問しても
たぶん答は得られないので

秋の初めの風のように
いくぶん鋭い金属質の響きで

愚かしくみえる沸騰には
整った和音で対応すること

冷笑じみた混乱には
 ....
1・メール子

 俄かには信じられないことかもしれないけれど、乳児を育児中の主婦というのは、自宅の電話線を抜いている場合が多い。こどもが昼寝をしている最中に、うるさいコール音が鳴ったりすると、何も ....
 或る三等星を巡る地球は虹に袂があって
 生む糞は三千年の香り
 春秋の朝日に照り映え雨露に溶けず佇んでいる
 五寸ほどの身
 中心を分かつひび
 通る風が言葉を作る
 
 一頭の牝牛が ....
これはあなたの息
匂う糊 舌で封した
透ける封筒に夕暮れ
誰もいない堤防沿いの


机の下で凍える紙
打ち捨てられた 仄暗い
空白が罫線を飲み込む
宙を踊る文字は


部屋 ....
{引用=からだのすべてを耳にしてしまいたい、いっそ}




糸電話から伝わった振動が、
あのひとの声だったと気づいたときには、もう
音もなく、底はふるえない
わたしを塞いでいく夜にも ....
公園でパンを
食べていると
Justiceと書かれた
Tシャツを着た
欧米の人に叱られた

大地にパン屑が
こぼれているじゃないかと
顔を真っ赤にした
欧米の人に叱られた

夕方 ....
光の布が
足跡を聴く
異なる色に
離れてゆく


雲は癒え
残りのうたが降る
視界には常に
羽根が映る


直ぐに落ちた火が
足もとを廻る
光の芯の光
触 ....
エンジンのいらない 未来の飛行機が ひんやりとしずかに 旋回している メキシコのような景色の あちらこちらで 牛の化石が見つかり どれもこれも 老衰に違いない 長い時間を生きたのに 石になるまでには  .... 1.「ナオタへ」

{引用=すこやかなよるに
知らないこと を
ふたりで 机にならべた
フライ返しで
ナオタは
ひとつずつ
ひっくり返した
ナオタは
ゆびがやわらかくて ....
罪の意識について
イメージが可決する
僕は何もやってない
その意識について
呼吸が破裂する

自らに嘘を付かずに生きていく事かッ!
自らをちゃんと理解していないのに?
ああ、手から離れ ....
穴の夜に可憐な花を引きちぎる 心の底から憎まれたくて


『やさしさ』という字はとても丸いのでやわらかなものと誤解していた


ワンピースに西のワインがふりかかる とれない染みに焦がれど、 ....
痴呆の少女が呆然とうろついている裏通り、停止中の工事現場の敷地内を通ってきた汚れた靴底が地面に残す赤土の臭いを、確かな老人が嗅ぎながら後姿を窺う夜中
月はクレセント、クレッシェンドが強すぎる ....
暮らしてゆく
かこいの上

眺めると流れがある

土から 
かえるためだけに
乞う 涙ではない

吹きなれた風の足が
ところどころ 無くした
甘いくぼみに にゃーと泣く

逆 ....
列車から{ルビ放=はな}った鮮花は孤児だから一枚一枚懐柔していく



長針の長さか短針の長さかと午前午後とも振り切れてなお



隣家の瓦のいろを確認する軋む板間にうぶ着の陽光
 ....
批評祭から遠くはなれてみる。
アフリカじゃ紛争が終わりそうもないし、パレスチナなんて終わりもまったくみえてこない。
一方で、キャンパスでメシ食ってのうのうとしてる奴だっているし…たぶん私だってそう ....
批評には苦手意識を感じてしまうけど、書けるようになりたい。
重い腰を上げるには自分の好きなものと関連させてしまおう。
と思ったのですが、余計悩んでしまいました。
犬の詩は犬好きから冷静な判断を奪 ....
おりかけた踏切を越える数が
息つぎの数を超えてゆく
骨にそのまま吹くような
すずやかな朝


沈没船の数
鳥の数
波の数
星の数
誰かの何かになれる数


石 ....
 
話す声が小さくなっていく、朝
きみは一冊の
ノートになった

軽くなった身体をめくって
話の続きを書く
これからは大切なことも
大切、とは少し違うことも
こうしなければきみに届か ....
横を向く指
くちびるの指
そっと押し分け
舌に触れる指


いつまでもいつまでも散りながら
消え去ることのできないもの
奥の奥にある赤いまたたき
にじみつづける音のかたち ....
2.現代詩の記号論的分析



2.1.記号論の基本

 表現が内容を「意味する」という関係が成立しているとき、その表現はその内容の「記号(サイン)」であるという。たとえば「猿」という言葉 ....
1.序論

 本稿では、現代詩を記号論的に分析しようと思う。だが、そもそもそのような理論的分析には意義があるのだろうか。理論的分析に対するひとつの批判として詩学屍体解剖説を取り上げ、それがどのよう ....
一.


舞いそこねた息が
蜜擦れしている

まつげのながさは
わたしたちのいのち




二.


等分できないものをささえる
ゆいいつの幕間
背泳される 水は
 ....
よしこちゃんは ピアノをもっていかなかった

彼女が五十一のとき のこっていたじいさまが死んで
よしこちゃんはもう 親のない子になった

その家は 彼女が大人になる頃に建って
夏と冬の休み ....
 
郵便局の方から来ました
と言い残して校長先生は
ぼくの枕を盗っていった

庭ではぼくを産んで
その後育て続けた両親が
淋しい冬の作業をしている
三年前、僕の腕を
きれいな形だと褒 ....
間遠に灯るガス燈の火を
ひとつひとつ落としながら
どこまでも
迷い道をたどってきました

鳩色の街に
静かに降り積もる粉雪
きしきしと
水晶が発振する音が聞こえます

いつの日にか ....
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