朝5時のバス停をゴミ袋がゆく
それはたまに人だ
紙やすりの這うような声で、暑いといったら
それはひとだ。
合皮ビニルのギュウタンコートが、皮脂でなまびかって
それはそれは暑かろう
もう ....
積み木のような背骨が
薄宵に連れ立ち
赤剥けた涙腺を
産毛を
風の巷に洗っている
空洞は無力を湛え
石の沈みへ身を委ねる
きみの海底
その燦光に滲む街
体温を貫けて伝わる
....
大声で花粉症の話をするおとなになどなりたくなかった
雑踏でふと耳をすます。どれが僕の足音かわからなくなる。
工事の人が標識と同じ格好になった。さっき一瞬。
ゾ ....
楽しいショーの始まりだ!と言いながら僕らは産まれてきたはずだ
僕に名前が無かったころ、魂は行き先を欲してなかった
たくさんの人、たくさんの名前、溺れそうになって君の名を呼ぶ ....
ペットボトル
父さん
色エンピツセットの中で一番きれいな赤色エンピツ
母さん
観覧車の置物
兄さん
粘土
妹
テーブルに並べて
バカ男はいつもの席
....
痛みを痛みとして見つめながら
あなたは眼差しを地には与えず
自分だけの痛みだと言って、
誰かに分け与えることさえしなかった
花びらは凛として
項垂れること ....
一秒ごとに
あいまいにぼやける
まちの、輪郭
潮騒がおしよせて
すべての境界線を消してしまう
抱擁する、
抱擁する、夜の、
水槽
よじれるカラダで
白い波をぬって
見つから ....
ミルクが欲しい1歳は
男が欲しい21歳に
あっけなく捨て去られる
新しいゲームソフトが欲しい12歳が
プラダが欲しい32歳の
財布から金を抜き取る
夢が欲しい33歳は
安定が欲し ....
ダヒテ。
ダヒテの発音は砂のようで
ダヒテの腕はいつもきみどりいろな気がする。
僕の魂は重みにつぶされたりはしない
青梅線を走る送電線に巻き込まれたりしない
そうなったら
....
何度も何度も触れてくるのに
けして苦しくなることのない
数え切れぬ手 ふたつの手
近づき 重なり
離れゆく手
離れ 離れて
響きわたる手
さくさくと向かい風
にじむ ....
魂の破片の場所。よいみず。茜色。きらきらと走りすぎる水。見える終わり。夢見ている憎しみのような誰か。図鑑のパリの足音。呼びかけのような眠り。舗道の祖父。曲がっている庭。静かな茶色。銀の鈴を夢見る椅子。 ....
ずーっと
わたしを
傷
コーラの泡
思いのほか痛くて
もう一口
軽音楽
骨の折れる音は案外
ポップスじみてたよ
現象でくらいそうになる
にじけた光線をぬるりとした衣服にねじ込み
固まっていく木ねじを肉ビデオに録画した
いつでも愛玩ベクトルで
小鳥の影腹切り込んで
圧迫感あるくらいで
天使 ....
ビラビラの花内部は空想の迷路
瞬時に変化する明滅色のコビトタクシー模様
遙か北部の山岳地帯にある自殺者の頭脳を
ブロック崩し的色彩で抱き留めるピン留めの肉体
丘の滑り台から
春の雪解 ....
ゆらんとした
わたしのおなかのなかで
じゅうぶんな呼吸をし
みちみちて
のんだり 跳ねたり 食べたり
していた
もう うまくは
おもいだせない
ゆうべ
かっこうわるい
シャツの柄
....
詩評がつらい……詩を書くのもつらい……書く自信、皆無なり。文章の書き方忘れた(笑。つらくて腹こわした。下痢ぴーである。すーぐストレスで下痢しちまうんだ、私は。とはいえ嘆いていてもしかたないんで、慣らし ....
100円玉2枚と10円玉何枚かを
レジのお姉ちゃんに渡して
ブランコの上で開けるプリングルスが
俺の中学校の時の夕飯だった
ある火曜日俺はいつものようにプリングルスと
その日はココアシガレッ ....
冬はまだ続いている。海からの光で、部屋は青に包まれている。神話の本を繰り返し読んだ。岬には女の顔をした鳥、ハーピーがいるという。元は風の精ともいわれている。そのハーピーが舞う岬から、水平線の彼方を見 ....
冬になり、女の顔をしたバードは飛び去った。わたしは、あの時の車をスクラップにして、海の見渡せる丘に部屋を借りた。情報誌でバイト先を見つけた。倉庫の仕事に就く。朝七時半、精神安定剤を飲んでから、家を出 ....
虹を見つけるコツは
こまめに空を見上げること
雨のたび
忘れず雨上がりに期待すること
四つ葉のクローバーを見つけるコツは
誰かのために探すこと
本当は自分で見つけないと意味がないん ....
一人でいることに、何年も飽きなかった。シートの、海に伝わる神話を読みながら、永く暇をつぶしていた。精霊の女、の横顔の表紙。空腹の中、海に向かう道、カセットで、オペラを聴きながら、わたしは車を走らせた ....
1.
シナ子
今、列車に乗っている
田舎に帰る
トンネルに入るとヒューィって音がこだまするの
それは列車の車輪の音
昔よく吹いていた草笛にも
車掌さんが切符を切る音にも似てる
....
逮捕されたそのオトコには
十億円の借金があったそうだ
四十年のジンセイで
どうやったらその借金が出来上がるのか
そしてそのオトコの数年は
十億円の価値のある
ものだったのか
それとも
....
*
目覚めると音のない世界
カーテンの隙間から灰色の光が射している
明けていくカーテン越しの光のなかで
青磁の肌が鈍く輝く
この部屋はこんなふうに朝を迎えるんだね。
僕は君を置き去りに ....
櫃、入れろよ。パンでくるみ
大きな鳶と人々亡き
おお、ミルク?電波?ヨロレイッヒ
いまそこにピアノ教室があったの、って
水銀のけむりのようなわらいかた
こどものバイエル 残酷な風景に寄り添う
音楽
あなたが舌のうえのやわらかいスイッチを押す
(どんどんだめになる) ....
絶えず不自然なコイルのように
終始が連結されている紫煙は母乳から吹き出している
おばあちゃんの皮膚のような
破裂したビーチボールは
闇のなか微かに縁取られガサガサと呻いている
夜中海 ....
あわくふくよかな海洋特急列車
が ぼくらを南へはこぶ
間断なく規則正しいマリンバのエンジン音
海に敷かれたレールをゆっくりと
エルスール エルスール エルスール
仲間は海に喰われた
....
午後には、カーテンに漂白され、
白色に、夏の気はふれてゆく
目蓋で覆い尽くすも、白光する夏、白光する、午睡混じりの
夏
色など要らないと叫びたかった私は、
今は、誰
....
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