カズラが花をおとし
森に住む蝶が
深々と死にゆこうとする八月
砂地から
こころないひとが訪れる
こころないひとは
分銅の肩を持っており
踏み入ると
腐葉土からは
ムクゲの細かいし ....
1
西野は佐川透あてに手紙を書いていた。佐川は西野の年来の友人である。
「……先日はお招きいただきありがとうございました。佐川君の知的刺激にあふれた話を聞けてとても楽しかったです……私はと ....
空を行く
風ほどに軽く満ちていたい
鳥の翼を
ささえ得るほどに
空に吹く
風ほどに軽く満ちていたい
様々な音を
伝え得るほどに
何かあるように見えなくて
それでいい
雲はた ....
川辺でグラタン食うソーセージは笹舟で来る
美しい涙に沿って目をさがす
覚えたての言葉で「疲れている」と言う
板立てる音の目覚め深き上海
黒い咳計る無傷のメトロノーム
流れ ....
正常な者は立ち去れ 死の言葉を目撃してはならない 幸福を求めるものは立ち去れ
二十二時二十二分二十二秒二十二二十二二二イコールイコール類コール胃胃袋増増殖食食
ああ、気持ちええ。きもちいい。 ....
{引用=あなたは歌うような
あしぶみで
まぶしくかすむ
曖昧な 八月十五日、は
さいわい
のびやかな放物線をえがいて止まる
おともなく
あたしは
きょう
部屋 ....
丸い生きもの
閉じかけた
小さく細いまなざし
右よりも左が大きい
風で傷んだ
艶の無い肉体
自分のための四肢を失い
うるおいだけがあふれんばかりの
何も感じず
何も見 ....
あれは忘れもしない
一年前の8月6日
仕事を終えて
家に帰ると
あなたは待っていた
フリルのお母さんエプロンを
ひらひらさせて
おかえりなさい
待ってたよ
ばんごはんの支度が ....
石灰岩を持ち出すと秘密が暴かれる
理科室の白衣はいつもハンガーにかけてあって生きてるみたい
夜十時にすべての生徒がその話を思い出し
目を覚ます時のテレパシー
放射状に伸びてちらばる色付き針金
....
パンダの毛皮のコートが欲しいの
と、彼女は言い、おれは上野動物園を襲撃した
帰りは
おれと弟のふたりで
パンダが抱きついたままのタイヤを物干し竿にぶら下げ、
それぞれの端を肩に担いで走 ....
濡れている地面を
数を数えながら一歩ずつはじいていく
はじくたびに足の裏がわから波紋がでてくる
地上という大きなかがみの湖にどこまでもひろがっていくどこまでも
やるかやられるかみたいな ....
痛いとかかゆいとか
間抜けな人は嘘でもいいやと
マルをつけた
早く治るといいね
ピンクが好きだと言ったのね
そんなのもう
鳴り響かない
ずっと弾いてないから
静電気を放った
早く ....
夏をつれてくる妖精がいないから冷やし中華を初められない
泣きながら闇夜に響く帰り足コンクリートは{ルビ夏=プール}の青み
ウェディングドレスの中で夏に埋む指の日灼けを抱いて遠くへ
....
水深5キロメートルの恋に落ち プールサイドで墜落する午後
砂浜の午睡からうつら目を覚まし すいかの縞の波に溺れる
ピーラーで削がれ半裸になりしきみ 水にさらせば ....
カタカナの文字をでたらめに選んで
並べてみる
見たこともない言葉ができあがる
けれどたいていは
どこか遠い国の言葉を探せば
なにがしかの意味が見つかるだろうし
ネットで検索すれ ....
辛抱堪らんな溜まったまんまだったわ私、ラッカーでも浴びたかのようにして息苦し、
ほら空!
見ててね、荒れてる雲の鱗粉が乱交してんだわ正午っから馬ッ鹿。
ずりい、ずりいのね。
で、
痺れた豪雨 ....
※この詩は、下の行から上の行へと読んでください。
人間というものを。
私たちは知らなかったのです。
私たちアンドロイドは、母の葬式で涙を流しませんでした。
だから私たちアン ....
毎度のことながら、
女にふられたので、
ラブホへ行って死のうと思った。
どうしてラブホかといえば、
情死かと思われるかもしれないからだ。
死んだ後のことなどどうでもよいかと思えば、
にんげ ....
暴力的なラフランス
狂ってごらんなさい
もともと腐った友達と
一センチの三枚刃
氷砕いて乳首の前でひるんだ夕べ
焦げつく匂いが屋敷の合図
ジュマペール黒のJ
歌っていたら泡吹いて倒 ....
寝起きは、不機嫌
な ぼくなので、
世界の終わりの
ような顔をして、
何もかも、どうでも
よくなっている。
なので、
ぎゅ ぎゅっと 後ろ
から だ きしめて、
さらりと キ ....
傾いて
その周囲に小さな
豊穣を張り巡らせながら
季節の同調を軽んじてゆく
絵の中の成果
熟れすぎたくだもの
(あるいは くだくもの)
裂かれるために実る
歯のいのちの前でおびえるもの ....
身分証作るのに要る身分証
mixiの日記で嘘をつく私
弟に他人行儀で呼ばれた日
お兄ちゃんと言ってくれた知らない人
俺の家と教えられたのが彼女の家
寝たまんま仕事ができる ....
夜明けの街を
一台のインクジェットプリンターが
走り抜けていく
どこからか受信した文字のようなものを
ありったけの紙に印刷しながら
おそらくそれは全力で
疾走していく
雨上がりな ....
三脚に遺品くくりつけて昼食
不要論飛びかう机上にロケットの窓
笑う距離だ 爆発しながら
風の広場と石に書かれて内部は土だらけ
足音浸って錆びる線路を無空の車輪
頬伝う飛び ....
カレーライスが食べたかった
あなたと通った高田馬場早稲田通り
夕食にはちょっと早すぎたけど
なにげにカレーライスが食べたくなった
あなたの好きな福神漬けをたっぷり乗せて
おひやをスプーンでか ....
{引用= あのひとの記憶がしずむ海は、いつしか防砂林で見えなくなった
越えられない高さに、すこし安心した}
砂が、降って
深く深く沈んで 底まで
皮膚 ....
1.
手紙は書きかけのままテーブルの上で黴びてゆく。
青黴、赤黴、黴の色ってそんなに単純だったかしら。
ふくりと黴が起きあがる、
まき散らされる胞子は常に薄い紫で、
私の部屋はすっかり煙 ....
?.
旧市街のプラサに
仮設テントが建って
ワインの試飲祭が行われた
一週間続く
ぶるじょわなお祭りだ
入り口で
一ユーロでグラスを買って
あとは一杯一ユーロで ....
{引用=小鳥のあおいへ}
君の目の
レモンのかおりするかたちで青い輪にふちどられた高く清んでいる空
少女だった
君は、
妻になり
母になり
私の恋人でもあって
今日、{ ....
凍りつく落日が、煌々と浮き上がる、
退廃の翼が燃えている丘陵地帯を
毅然としたまなざしが、顔を引き攣らせて、
走り抜けてゆく。
夜ごと、記憶の手帳に書き加え続けた
凛々しい言葉は、荒れ狂う午 ....
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