二番地の内田さん    前田ふむふむ

白いあごひげをはやして、美味しそうに、キリマンジェロを飲む、二番地の内田さんと呼ばれている、この老人は、若い人と話をすることが、何よりも好きだ。よく、真面目 ....
森の夢―古いボート          前田ふむふむ

     1

青い幻視の揺らめきが、森を覆い、
緩んだ熱を、舐めるように歩み、きつい冷気を増してゆく。
うすく流れるみずをわたる動物 ....
葉っぱたちのとがったきっさきをさっきから風がはげしくゆらして
じべたに並べられた各種弾頭のことを考える
雨上がりのひんやりとしたゼリーのような中を
ゆっくりと自由に空気を押しながら
あたしは記 ....
苦し紛れに吐き捨てた言葉の中には見るもおぞましいいびつな感情が梱包されていてそれは解かれる必要すらないほどに歪んでいて情けなくそしてあきらかにそうというほどではないのだけれど決 .... 山岸さんは、
もう いない。
おさるさんに似た顔で
さようなら
もいえず
むねにちいさく根づいたきずが
うずくのである
おさるさんに似た顔で
いま
さようならをいおう
山岸 ....
一説には窓である茎暮れだす町

うつむけば夜の野原ひとり歩く誰

消えねば風鳴る 消えても風になるばかり

足首しか見えぬ石段からコップ

鏡からせり出す背中森に行きたい

塩の塊 ....

わたしの家の郵便受けには
朝になるといつも
赤い花がいっぱいに届けられる
露を含んでぽったりと
流れ出しそうな赤い花だ
どこかにわたしを好きな人でもいるのだろうか
捨てるに捨てられな ....
篠田美優
「新しいスタート」


我らがミユタンの久しぶりのニュー・シングルは、
なんと彼女自身が作詞を手掛けている。
近頃では声優での活躍が目立っていた彼女だが、 ....
 こんな湿気の多い午前は
 ツタヤの試聴コーナーで過ごす
 ひりつく音楽をちゃんとケースに戻せないんですかって

 曇り空の上で太陽は御産しているんだ、父親は三百億光年先の、要は宇宙の向こう側 ....
波線の午後を
すりぬける腕
指の大きさ
夜のまぶしさ
花に埋もれ 花となり
花を生み 花を摘み


深く鏡を被る人
無数の火の穂の歩みの先へ
冬の浪の浪の浪へ
着 ....
わたしの棲む場所を流れる川に
水はない

誰かが
橋の上から捨てた言葉を
灰色のさかながついばんでいる


     *


夏の暑い日、わたしは
忘れてしまいたい過去の過ちと ....
 
鉄鉱石の蜜が街に溢れるころ
虫は人の文字の中で
急激に羽化を始める
かじると化学物質の味がして
その年はひどくうがいが流行った
水は水を乾かし
水は水を空席にする
証言台に立った女 ....
 水面に、静かに輪が広がり、女が浮かび上がってきた。
 そしてその女は、青緑色の沼の表面に浮かび、まるで肘をつくかのような格好でこちらを見た。

 時刻は、薄ぼんやりとした昼間で、のんびりと釣り ....
  
朽ち果てた石
その微かな記憶
落葉樹は閉ざされたが
薄く匂っている
末端という末端に
隙間という隙間に
うずら料理の美味しい店で
わたしは女に求婚した
手の甲の静脈は変わること ....
雨を待つえぐれた頬塀から突き出し

銀河身の投げようもないほど暗い

影ひろい大木おもう紙のこと

大円盤の片鱗星座と触れ合い光る

裾千里ほども隔たるぼくとほか

ずっと昼ハの字 ....
 夕暮れ近くになってムーフールーが海を見たいと言い出して、海に行くことになった。海辺の街とはいってもこの坂の家からは、海はすこし遠い、なので車で行くことも考えたが、思い .... 一歩ごとに浮き沈み
左目は左足を追ってはもどり
原の左半分を見る


下だけが明るい道
上だけを聴き歩む
鳥が落ちては消えつづける道


これがのぞみ これだけがの ....
山のあなたの空遠く
はっきりはっきり目が覚める
布団を押し上げて
燃えてしまっている
あなたが幸いではなく
きがかりだ
何の関係もなくきがかりだ
そう
そういうこと
きがかりだ
み ....
{引用=
Meruki『海に似た形の』
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=151980



 何から話し始めるべきだろう。この作品の「彼女」、 ....
脚を焼く火が
胸にとどく前に消え
ふたたび冠のかたちに現われ
両肩を抱き燃えつづけている


まばらな陽のなか
あなたは身を反らし
地と空のきわ
水と空のきわを
飛 ....
人々の行き交う夕暮れの通りに 
古びた本が 
不思議と誰にも蹴飛ばされず 
墓石のように立っていた 

蹴飛ばされないのではなく 
本のからだが透けているのだ 

聴いている

時 ....
 
 
言葉の近くで
酸素を見ています
午後に置き忘れた椅子から
ずり落ちているあれは
靴の始まり
裏側を覗くと
もう誰もいません


+


金歯の中に広がる曇り空を
 ....
朝露の反射が前頭葉を貫いた
古い文字盤が12時間前から
崩れ落ちてリビングの雪になる月曜日
イエスタデイズ・ペーパーのまだ疲れていない端で
世話焼きな精霊どもが次々と指を損ねる
 ....


眼を閉じるとそこは
金木犀の香る秋のベンチで
横には
もう何度も思い出しているから
びりびりの紙のようになってしまった
いつかの君が
黙って座って煙草をすっている
周囲がいやに ....
 鱈の干物、すなわち干鱈を、ベランダで黙々と割いている。
 春の日差しが少し眩しい、三月の最後の日曜日の午前中。どうやらおれもついに花粉症になってしまったらしく、さっきからくしゃみが止まらない。にも ....
 彼はひとりで戦い
 あたしは彼を見殺しにした
 それで話が終わって
 あたしたちは目を覚ますの

 
 そこは、人造の公園の一番すみっこ
 それなのに、楽園だった

 公園には ....
指をすりつぶす音が水になる。椅子にはびっしり僕の名前が書いてある。妄想のわりにはよく動く左足だ。下半身を覆う毛布の毛束は鱗のようで、撫でると白くなり、逆に撫でるともとの緑になる。君は社会の群れを見たこ .... いいですか
すべてのニワトリは
自分で殻を割って
生まれてきたんですよ

と叱られた思い出

いまなら言える
僕はニワトリじゃない


   *


あまりの暇にたえかねて ....
{引用=
静かの、川が
逆流する
しなやかな動きの連続で
えたいの/知れないものたちが
反射するから
少女は、もう一度
夜を怖がらなくてはならない
そういうものなの
と、 ....
{引用=近道して
とおりぬけた石段に
昨日の雪が つもっている

桜に降る
ちいさな雪が
毛布のように 町をくるむ


あなたは
商店街のゆるやかな坂を下り
あおく ひかる
 ....
ピクルスさんのおすすめリスト(1095)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
二番地の内田さん—デッサン- 前田ふむ ...自由詩21*08-5-18
森の夢ー古いボート___- 前田ふむ ...自由詩24*08-5-18
夏至- モリマサ ...自由詩28*08-5-16
形見という概念をどのへんに位置づけるか、それはあんたがたの自 ...- ホロウ・ ...自由詩1*08-5-15
山岸さん- こしごえ自由詩6*08-5-14
祖父粗大- 黒川排除 ...川柳308-5-14
日常- 吉田ぐん ...自由詩1308-5-13
アイドル。- ホロウ・ ...散文(批評 ...5*08-5-13
_媚態- 鈴木自由詩208-5-13
夜の声- 木立 悟自由詩508-5-13
水の空席- 望月 ゆ ...自由詩49*08-5-13
水の空席- たもつ自由詩4*08-5-12
沼の主- チアーヌ散文(批評 ...708-5-10
それでも世界は美しい- たもつ自由詩10+*08-5-7
転じて歩測- 黒川排除 ...川柳308-5-7
「_ムーフールー。_」- PULL.自由詩4*08-5-6
はざま(ひとつの笛)- 木立 悟自由詩208-5-6
マテリアル- 石川和広自由詩8*08-5-3
海に似た形の、しかし実体のない女を語るように- 2TO散文(批評 ...4*08-5-3
むらさきの_むらさきの- 木立 悟自由詩608-5-2
詩人の肖像- 服部 剛自由詩11*08-5-2
童話の続き- たもつ自由詩1808-5-1
徐行運転を続ける旧型のブルーバードの不安を煽るような排気ガス ...- ホロウ・ ...自由詩4*08-5-1
君を思い出している- 吉田ぐん ...自由詩2508-5-1
干鱈- 大覚アキ ...散文(批評 ...208-4-30
ボックセトラ- Ohatu自由詩1*08-4-30
善悪の部屋- 葉leaf自由詩408-4-30
壊さない人- RT自由詩28*08-4-30
水死体と黒点と観覧車- しもつき ...自由詩24+*08-4-27
家路- はな 自由詩1008-4-25

Home 戻る 最新へ 次へ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37