#6
        屋根裏の姫


廃屋となった古い旅館を安価で買取り、なにやら得をしたような気分で引越しをした。築100年の余を越え、廊下の椋の板も黒ずみ真ん中がへこむ。梁や柱の材も曲 ....
一番線のホームを
羊の群れが通過していく
海の近くに
美味しい牧草地があるのだ
その後を
羊飼いの少年が
列車でゆっくりと追う

夕暮れ近くになると
列車に羊を乗せて
牧舎へと帰る ....
 
採石場の跡地を
ヒトコブラクダが
ゆっくり歩く
かわいそうな気がして
コブをもうひとつ
描き足してあげた
耳の奥を覗くと
夜が明けるところだったので
慌てて帳面を閉じた
 
満たされぬ言葉想いて立ちつくす
足元に身をすり寄せる猫

故里のなまりやさしく語る友
友も故里をとく出でしなり

何着ても似合はずなりし我が年を
哀れがりつつせめて紅さす

故里の老 ....
小さな影に
小さな水が触れ
小さな手のひらのかたちとなり
雨の木陰に結ばれてゆく


風を後ろに
花はひらく
ひろく けむる
ひとつ ゆれる


野に落ちる光
川に立 ....
花弁を剥きだしの裸にして、白い水仙が咲いている、
その陽光で汗ばむ平らな道を這うように、
父を背負って歩く。

父はわたしのなかで、好物の東京庵の手打ち蕎麦が、
食べたい、食べたいと、まどろ ....
ほこりせしゴムの鉢をば雨に打たせ
ついでに心もなどと思えり

梅雨明けの豊かになりし賀茂川の
水しわに照る夏陽が眩し

云ひわけの言葉聞くとき掌に
猫のまばたく感触も知る

忘れたき ....
  タクシーに乗って
  道を歩く

こんな時間までお仕事ですか?
運転手が尋ねるので
ええ、まあ
と答える
今日は暑かったですね
暑かったですね

  本当に暑かったのだろうか
 ....
朝日影にふくまれた わたくしの陰影が
ありのままの白い骨格で
よるべなく
この家に嫁いで来たのです。

その
わたくしが、
わたくしであるが故に、
わたくしを焼べねばなりません。
そ ....
北の北の大みそか

美香子はおこたでうす茶色の玉ねぎ一つ見つめてた
小さなめんこい玉ねぎを

電気きれた ガスもとまった お水もとまった
おさいふには一円玉が2つだけ 石油を買いにいけない ....
ー盲目ー
まだ陽の上らぬ未明の朝
風紋が鮮やかに浮き出る灰色の砂丘を
暁の月へとむかう 黒烏


凄絶な月の海に至る道は
煌々と白い光に照らされて
泥だらけの足で踏みこんで ....
            2007/06/05

かりんとうを
長万部で買う
駅の待合室には
仕事にあぶれた人たちが
冷えた弁当をストーブに載せて
暖めている
ヤカンから湯気が出てい ....
水たまり
シロツメクサ 浮く
かがむ肌 薄く
おちる髪 黒く


むね
百合のようにかぐわしくは
なく
シロツメクサの、浮く


水たまりに
これからめぐりゆくだ ....
水平線に帽子を被せている人を見た
世界と対等に向き合うということは
それほど
難しいことではないのかもしれない
子供たちに蹴飛ばされた波が
海の向こうで
砂浜に描かれた絵を消している
 ....
お父さんが紙をつくってる
つくった紙を僕が並べていく
それがお父さんの廊下
なんだか淋しいところだね、と言うと
お父さんは土を持ってくる
足りないので
何回かに分けて持ってくる
だからお ....
加茂川に降る雨と共に昭和逝く
 何時もと変わらぬ景色まぶしく

編隊のかたちに鴉帰りゆく平成となる日の夕空を

永かりし昭和の御代も終焉となりて
小雨降る 夜となりけり

親しめぬ言 ....
  
   「いつか奇跡」

霧雨の向こうに遠い日の日記 差し出した手が迷い濡れてく

影送り透けて遠のく僕たちの眩ばゆいほどにピュアな夏の日

吹くはずのない甘い ....
遅れて響く真昼の音が
午後をゆらりと追いかける
畏れのかたち
雲に去られた
空のかたち


緑と金が
ひらいては呼ぶ
空の端 地の辺に
呼び覚ます
呼び覚ます 火
 ....
帰宅する途中
コーンスープの匂いがする
家の前を通りかかる
中から男女の諍いの声が聞こえてくる
少年が一人
玄関の外に立っている
ドアにもたれてただうつむいている
どうかあの少年が
私 ....
はばたく度に
世界は変わる
窓を重ねる
まぶた手のひら


グラス フォーク スプーン ナイフ
午後を切り取る宴の先に
波のように繰り返される
拙い夕べの唱がある


 ....
お前の母さんだよと恐竜が言う

地下室の扉はひんやりしている

地下室の天井から縄が一本降りている

恐竜が肩を抱き、母さんに会いに行こうと言う

恐竜の皮膚はざらざらしている

 ....
思い出し笑いしてる花びらの話

目があって目が散って
隠そうとしたら吹き出した
晴れた空の草むらで
花びらはまだ続いてる

散らばった四本の足に巻き付いた
始まりと終わりはいつも仲良し ....
新しい町で
食料品を買う
就寝の手順について
思いをめぐらす

建物はどこかに
年輪を隠し持っている
タンポポの茎が
配管されている
新しい町への食欲と
昼時の食欲と
どちらが本 ....
寒い、と言うと
あなたはわたしの肩に
そっと
うなぎをかけてくれた
 
ぬるぬるして
うなぎも鳴くのだと
初めて知った
うなぎのさばき方を
教わったのも初めて
 
大人の恋は
 ....
知らぬ盛り場の暗闇で
合金が茹だり少女の吐息を赤く待つ今夜
古い毛皮を人毛と取り違え
それは
それでも良いのだと電灯の下で上手くくすむ古母
切れた人毛から吹き出す液体を照らす太陽は
常 ....
自らのベッドで夜が襲ってくる日
雨はかなしいという詩人と
孤独はさびしいという詩人の
穴という穴にキューピーマヨネーズを
入れたくなってしまった自分は
果たして自らが望んだ本当の自分なのだろ ....
君思ふわが名流るる滝つ瀬の
   はやき心をたれか止むらむ

紅の色に夏の葉かくす{ルビ山躑躅=やまつつじ}
   いでやかなしき人をぞみゆる

こころありや宵待草にあさつゆを
   ....
道端に表札が突っ立っていた
YAMASITA、とだけあった
YAMASITAさんとはぐれて
困っているようだった
家までの道順を教えてあげたが
わかりにくいところもあったので
いっしょに行 ....
木曜日の朝の雫が絶叫をあげている。
尖った街頭の佇まい。
通勤の熱気をはおったDNAのひかる螺旋の群は、
わたしの散漫な視覚のなかに、
同じ足音、同じ顔を描いていく。

振子のようなまなざ ....
{引用=
***


ashley's ashes

黙々と浜辺で流木をひろい、こわきに抱える
あるく
波打ちぎわが
日没の汀が
潮騒のざざわざわ

降るまえにあれを灰にせね ....
ピクルスさんのおすすめリスト(1095)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
「ものとおん」#6- リーフレ ...自由詩607-6-12
行程- たもつ自由詩1907-6-11
- たもつ自由詩2407-6-10
10P_「短歌2」より- むさこ短歌13*07-6-7
緑と金_Ⅱ- 木立 悟自由詩1307-6-7
森番—透過する森のなかへ- 前田ふむ ...自由詩38*07-6-6
9P_「短歌2」より- むさこ短歌11*07-6-6
- たもつ自由詩1607-6-6
薪_(たきぎ)- こしごえ自由詩26*07-6-6
玉ねぎ一つ- 池中茉莉 ...自由詩7*07-6-5
月の朝(あした)- リーフレ ...自由詩9*07-6-5
東京パック- あおば自由詩28*07-6-5
月を殺す- フユナ自由詩407-6-4
考察_〈海辺にて〉- Tsu-Yo自由詩2007-6-4
スケッチ- たもつ自由詩1207-6-3
12,13P_「短歌2」より_平成元年- むさこ短歌11*07-6-3
■共同作品■_カゲロウと花- Rin K短歌26*07-6-3
緑と金- 木立 悟自由詩1007-6-3
粘度- たもつ自由詩1307-6-2
ノート(呼軌)- 木立 悟自由詩307-5-31
きょうりゅうとわたし- ミゼット自由詩6*07-5-30
眠り姫- アサリナ自由詩13*07-5-30
新しい町- 葉leaf自由詩15*07-5-29
大人の恋- たもつ自由詩23+*07-5-29
灯す- 瓜田タカ ...自由詩407-5-29
厳しさと厳しさとキューピーマヨネーズ- 土田自由詩4+07-5-28
恋夏草(れんげそう)_______■古語の宴参加作品■- Rin K短歌28*07-5-28
言い訳- たもつ自由詩1007-5-27
五月の街- 前田ふむ ...自由詩31*07-5-26
aerial_acrobatics_9- mizu K自由詩4*07-5-26

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