淡く
夢にいた人は水彩でした
*
(あ、)
こめかみとシーツの間に
かすかに染み入り、そこから
まぶたに明けてゆく一筋の朝の滲みに、すっと
打 ....
{引用=
鱗はがし
}
ぐったりとした坂の両脇
片付けられたばっかりの ここは小さな店屋さん
向かいではやけくそなハンマーが突き出た骨を打っていて
....
朱銀のスプレーを吹きかけ
月が街灯に拡散し立ち昇る黄蝶の渦巻き
肌寒いモノクロリボンを路地裏に解き放したまま
退廃のエアープレインが
氷雨玉の群れを爆撃してる
なみき通り
倒錯したガー ....
片目ばかりが傾く夕べに
しあわせの少ない膝を抱き
花はつぼみのうたをうたう
午後にひたいをしたたるものは
すべて血のように感じられる
その熱さゆえ その太さゆえ
....
まずは、
背中の秋を追いかけて
レダの卵を採取しなくてはなりません。
(ゆめです。きづかれぬようにかくしてしまった、)
それは、此処からずっと北、
一つ長い橋を渡って弓なりに沿っ ....
砂原を歩いていると、人間の手が蠢いていたので、掘り出した
父だった
父はこんなところに埋まっていたのだ
途中から誰かがわかったので、指先でなでるように、焦って掘り出した
息をし ....
満天の星空をつつむ静寂の下
潮騒を聴きながら横たわる身に纏う砂粒
はてしなく投げた仕掛けを海に任せて
ケミカルライトの点る竿先を微かに揺らし、
甘い潮風がコーヒーの苦味を慰める
アタリな ....
1
かみさまから
えいえんのやくをにんめいされたので
しろいあきちにたってみました
ねていたときのことだったので
ほんとうはかみさまじゃなくてわるいもののさしがねかもしれない
みーみー ....
骨のような柱が燃えている
燃え尽き くずおれるまで
ただ波のなかに立っている
流れ着くものが燃えている
山の影が土を覆い
波だけが明るく揺れている
昨日の足跡が残ってい ....
星の雲と砂
夜の水かさ
わたしが生まれた理由より
さらに遠くへ
離れゆくもの
サーカス 移動動物園
肉から物から聞こえはじめる
わたしではないわたしのかたち
ぬかるみの ....
窓を無心に磨く雨音で
鉱石のように凝り固まった背中
手元に空白のノート
ペンは柔らかく握られたまま
冷めてしまった珈琲が
あなたの唇を忘れていた
とても低い声で唄い出せば
思い出すような ....
{引用=風の脚が遠ざかってゆく
あさいわだちは
春の周りをくすぶっていて
いろとりどりのかざみどりが
ゆるゆると迂回しては
家を さがす
信号が青に変わり
ひとなみは と ....
浅草あっちゃん油虫
青葉青山案の定
インドイギリス硫黄島
イカの色したイイおんな
うどんウクレレうりふたつ
梅田鶯運の尽き
エンドえげれすエロガッパ
駅の易者のエビふりゃあ
浅 ....
夜の輪郭が瑞々しく
他の夜の暗さから起き上がるとき
波を湛えた器を抱え
灯りの無い道を進みゆくとき
声は牙の冠のように
おごそかに髪に降りてくる
ふたたびからになる器を ....
昨日の月は
尖った 細い 月爪だったので
夜を枕でくるみこんで
空を引掻いてしまわないように
唄を歌って
ふかい、ふかい 息を吐いたら
枯れた冬 ....
空の、あまりの青さが
出逢った日と同じ色をしていたから
なんだか違和感を覚えてしまって
それを誤魔化すように
むきになって笑ってみた
ここは夜景もいいけれど
飾り気のない素顔の街が見え ....
最果で
今年最後のさくらが咲いている
あの日、工場の辺りにはやっぱり同じような工場がたくさんあってね、その中ひとつの敷地に桜の大木が並んである。
バスも届かないくらい、おおきな桜だ。 ....
朝から支えを刻々と縮め
影の長さが水際を割る、。南中に際し
まず柔らかな鳩尾を
下にして((私達は))後頭の
窓に
手をついており
嵌め殺しの空も高いと思う、。恐ろしく
液晶 ....
君は
君の家に入らない
雨が降っているというのに
軒下の風を嗅いで前足を舐めている
私の上には屋根があるので
髪に降るよりも
雨は、
硬質な響きで
音の羅列を渉っていく
....
たまねぎの黄色いところないしょだよ
固結びこれでいいよねって胡瓜
大根がググと突き抜けてブラジル
むずかしい顔をしていても
だれかに名前を
許すとき
見えない風に
腕だけ乗せる、ような
わたしはひとつの窓になる
だれかの背中のさびしさに
おもわず声を
かけるとき
....
脱税しました
空は晴れていました
脱税したお金で
スポーツカーを買いました
お金が足りないので
模型のスポーツカーでした
海の近くでした
風に匂いがありました
一輪車が得意でした
上 ....
1
眠れない夜は、
アルコールランプの青白い炎に揺られて、
エリック・サティーのピアノの指に包まれていたい。
卓上時計から零れだす、点線を描く空虚を、
わたしの聴こえる眼差し ....
まとわりついてくる光の粒を
まとわりつくまま歩き出せば
光はしびれをきらしたように
ぽつりぽつりとうたいはじめる
ああもうこんなに沈んでいたのか
足を持ち上げ
足のかたちが ....
1.
高く掲げた手のさきには指がなかった
ただ丸い肉塊である手は
指を持たぬのに天を指さした
天下人と呼ばれた男は
その指のない肉人を
食えばよかったのに食わなかった
食われなかった ....
気化に耐え盆地に移り住む水滴
旅先のしじまに杖をなくすだろう
洞窟の続きは青く夢でみる
家具から饐えた匂い 窓に海を貼り直す
腕見えて口の位置からカウントダウン
危機はカ ....
{引用=星の椅子に腰かけ
流れるままの時間の粒子を浴び
誰もいないという
ひびきからはじまる水面の波紋が
夢見るまま紅の空へ続いていくのを
永遠に眺めながら
なつかしいことばは
やさ ....
3・31
波打ち際で砂をすくい
「これで世界は救済された」と
両手いっぱいの満足
守られるものは
両手いっぱいの満足のため
あとは
波が足跡を消すのを待っている
待っている
....
頭の中につまっているよ
つららのように出来たんだろうねこの
目にうつるものたち
首の後ろがちりちりしてるんだ
太陽にあきらかにされた
急勾配の斜面の野原を
こわれかけているしずくがたくさん ....
ぼくは没落しよう
三角錐にきみをうつそう
頂点からわらいかける運動は
ひろがりかけては相殺されてゆく
そしてきみの弾力が
つきささるだけだというのならば
ぼくは止まりきっていて
ほんとう ....
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