一 琴引浜

さくら貝は、はかないという言葉がお好き
はかないという枕詞がつくものには
とりあえず歌ってみる
それらはかつては量産されたものだが
貝は、そんな厄介なものは持ち合 ....
松の湯


跳ねる湯船も恐ろしく
あれは白鯨モビーディック
いかつい背中の倶梨伽羅紋紋
あまりにも鮮やか過ぎて
タオルで隠さぬ前を横目に見れば
なぜか思わず猿山の猿気分
ラッキョの皮 ....
身分証明書を
と言われて財布を探ったが
パン屋のレシートがぱらりと落ちただけ
カード入れにはブックオフのカードだけ
午後の図書館だった

カウンターのミセスは
住所と名前が記されている  ....
 ●ひい『切ればみんながついてくる』


新木場綾之子(以下S)「雑木林を切りますよね、すると抗癌剤が売れます」
真下草継(以下M)「火の無い所に限って煙が立つ(笑」
S「それは煙がみんなを ....
「マーブル」
盗む手の平の中に赤溶ける机に隠した白い罪たち

「ラム」
砂浜に焼け跡残して乙女去る贄の羊が丘の上で鳴く

「頭痛」
病む棘は所詮誰にも分からない晴れた日曜泣きたい独り ....
ごらん
はらはらゆく、
あれは、
空気から砂地へ
落下してゆく、あれは、


公園の
あらゆる輪郭をなぞる夕刻の光の
限られた範囲をなぞられればいい
限られた範 ....
マリーゴールドと
マーガレットの区別がつかない
ツバキとツツジを間違えて
笑われてしまう
アヤメとカキツバタにいたっては
はなっから諦観の境地で
でもそれはちょうど
パスカルとサルトルを ....

ひとあし歩くごとに
わたしの身体からは石が落ちます
からからに乾いた石は
薄い色をしています
わたしはそれを
さらさらかちかち と踏みしだき
疲労し続けましょう
名 ....
{画像=061008035546.jpg}
ふとした隙に これが現実だと崩れ去るのは
トランプの尖塔と 君のいた日
今 君に届かぬ声を出すのは
次々狂う 出会った人間
僕はまた この世界へ目 ....
くすむ孤児院の支柱誰かである時間

鉄吹雪やんでくれ動悸がとまらない

かんむり授かる牙 まみどりからやりなおし

目が冴えて月光よりも静かな猿

もう末代本能寺から髪の傷み

草 ....
マグマみたいに燃えタギル涙を流すことが出来た
二十歳の頃、何でも誰の前でも迷惑なほどすぐ泣けた。
好きな人はひとりだけだったし、裏切られて
責めることもできた。そしていつでも明るい朝が来た ....


最近
妻が出来た
嫁を娶ったのではない
わたしは女であるから

正確にいえば
嫁の方から勝手に来たんである

或る夜のことだった
四百円を手にちゃらちゃらさせながら
 ....
また会いましょう)


その黒髪の薫りは
つげの櫛に波立つ海原であった
その深海にひそむつめたさのかたちに
ささえられている波が
{ルビ風色=ふうしょく}の移行を生んでいた
静まったか ....
すずめばちが
私の鼻の頭をかすめてすぐに
黒い影になって
薄くなって
細い軌跡を残して
小さな河原の巣に帰る

すずめばちの
しなやかな軌跡をかすめてすぐに
自転車のタイヤの擦過音が ....
かちかちの空にもささる うろこたちを登って
こすりとった星たち 毛の中にむこむこ掃きこむ
仔猫たち 海に放ってやって
溶けていく星を追う爪が
厚い雲の覆う海から 出て行けない月までも
ねばね ....
暗澹と試掘し立役者の前で

砕かれてむらさき

打ち寄せる波予感して震える花

牧師殺しても殺しても白い態残る

人格得て同義語と化す口と靴

布背負う重さ服もその一枚に数え

 ....
あたたかい寝まきです
でも
あたたかいふとんです
おかあさん
頭のほうが寒くて
しんとします


眠ったとたん 朝でした
お昼を食べたら
もう夕ごはん
ふしぎです ....
 休日の朝、西野は8時ぴったりに目を覚ました。
「なんてことだ! 8時ぴったりに目を覚ますなんて! きっとこれは、俺が幼い頃母親に欲望を抱いていたから罰が当たったにちがいない。時間のやつが、世の中の ....
 
 降れば泣き濡れる弱虫の彼女は
 大雨の通知表に耐えられない。―
 リッツのヴァイオリン弾きの彼女、
 今日も目を反らし、聴かせてくれる。
 黒い雨傘は、これは僕のためのものだ。
目のなかにちいさな音の遊ぶ夜



通りすぎまた通りすぎ唱は降る



手をかすめ消える笑みたち金のいろ



生と死を斜めに飾る毒の花



天と地の ....
孤独を繕う句読点を無造作に並べて
線でつなぎとめただけの街
意味のない言葉は
空白を満たし
ちからなく溢れた
(思いのほか冷たい。)
それから
未消化の確執のように
近づいて
近づい ....
ちらつかず
そ、と留まっている、あれは
振り払えぬ外灯を振り払わず
硝子に帯びたままの、あれは
蛾だよ
その在り処では
既にひとつの夏が締めくくられている
夏ではない今となっ ....
遊ぶために生まれてきたんだ
それだけだ
それが人間だ
仲良くみんなで遊べばいい

それなのに俺はここ最近
とらわれてる
檻の中に
自分の模様に

なあ月が 
見え ....
かかとが脱げちゃう
つま先が脱げちゃう

溶けそうな足の付け根
そっと触れてみたんだよ

小指が脱げちゃう
親指が脱げちゃう

ほんのりカラメルいいにおい
外で野良猫鳴いてるよ
 ....
ムーンは名犬ではなかった
おれが不良にからまれたとき
まっさきに逃げた
のびているおれのそばにきて
目のよこの傷をなめた

ムーンは名犬ではなかった
堀内と土井と高田の
サインの入った ....
砂時計まで辿り着けずに錆びる鼠

誰にも言わない物置静けさ滝の跡

地球かかる空眼底の真空つぶる

肺に泉転移して斧咳き込むたび

故郷を捨てて砂金と蟻を握ったまま

疑う余地をシ ....
Is that a banana?
No,it isn't.It's a gorilla.

あれはバナナですか?
いいえ あれはゴリラです。

俗にいう一人の少年が英語を見限った瞬間を
 ....
※ 頭が痛くなったり、具合が悪くなる場合があります。
※ another あなたは12月生まれですか?  Yes/No
※ another あなたは11月生まれですか?  Yes/No
※ an ....
眼科で診察中
次 眼を洗うから そこに座って待ってて
と 看護婦さんに言われて

長いすのはじに腰かけ
緑内障の眼の見える範囲などかかれた
ポスターをみる

すぐ 隣りに 杖をついた  ....
少年少女の斜線部 成長のたび減る

針金で縛られた書簡霞に吊るす

コンパスの上半身を他国から見る

栞は砂しかもサハラの貧しい村

魚の形の輪乱すダンスいつか陸へ

火の粉に礼  ....
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