猫来るな
猫来るな
猫こっち来るな

ああ嫌だ
こいつはこうやって
私の側にさえ来れば
その美しい漆黒の毛並みを
私が撫でないわけにはいかない事を
知っているんだ


どんなに ....
水を、欲している
のどの ずっと奥のほうで
さかなが泳いでいる



季節が融けはじめていることに
気づいたときには もう
わたしのなかの海は 浄化され
沈殿していた過去があふれ出て ....
その1
爪のにおいを嗅ぐのがすき



その2
口げんかで負けることをよしとしない



その3
すぐ怒るなんでも人にせいにする



その4
甘えるのが苦手


 ....
木の枝が重ならずに生きていくことを
描き言葉と伝え言葉が生まれる
それぞれの心の在処を

まるでひとり言でも呟くように静かに
少し楽しげに君は教えてくれる

大きな木の根元に寝転んで
 ....
飛ぶ鳥から抜け落ちた羽根が
地面に墜落する運命に気付かず
いつまでも空を飛び続けていることがある
これを残鳥という

猟銃で撃たれた鳥の
飛び散った大量の羽根が
そのまま鳥の形をして飛び ....
あなたはわたしの眠っている横で
わざとらしくページをめくる音
つよく立てて
降り始めた雨を受け入れる
くらいまぶたの中で
弾ける赤い頭痛
あなたの読んでいる一行が
鮮明に浮かび上がる 夢 ....
保育園の窓の外では
世界童話全集が産卵をしています
孵化したばかりの童話は
粘液で汚れしかも鋭い牙があるので
先生たちがきれいに拭いて
牙を一本一本抜いていくのです
暴れて困るものはダンボ ....
移動後にセッション5
6枚の写真に残された
さ迷えるフレーヴァー7

経験の為の円軌道
その上にいるうちは
誰かの左足の動き以外は
何も捉らえたりできない

揺らぎの合い鍵に
例の ....
吹雪を歩む子の喉を
ぬぐうようにすぎてゆく火
忘れかけた尾のかたち


飛び立てずに泣く夜の
足もとに凍り重なる光
土の底の根を照らす


波も血も笑みも
こがねと涙 ....
暗いから楽譜燃やして音を出す

戸を擦る皮膚をして階段の裏歩く

異なる星の青空まで抜けるような青空

コラージュ画さす指思いだまるオウム

トンカチ持ちシーソー脅しにいくひ孫

 ....
 その少年は、少女で動いていた。
 少年のどこかに少女が埋めこまれている。
 少年はときどき吐き気がする。
 そういうとき、たいていそれは夜だけれど、砂浜を思い描く。すると、少女が少年の砂浜を歩 ....
亀を背負って
懐かしい人の苗字を呼びながら
塩を舐め続ける
水が飲みたい

+

かまきりの新しい
亡骸を
司書は黙って
見ている

+

カンガルーが直立したまま
波音 ....
古いじてんしゃのように
朝が下ってゆく


風邪声の
のどに ちいさなにがみと
這いつくばるようにおとずれ
さらさらと消えゆくよるを
くちびるに
にじませ

朝が下ってゆくと ....
ウィスキーを舐める

回想を重ねる

画像が荒れてゆく

煙草がスカートの端を燃やす

後頭部にあてがわれたあなたの手を想う

耐えられなくなり、誰かと営む

営みは儚く、 ....
バスに乗り込んで
マーマレードをパンにたっぷり塗り
ラジオの側から離れずに
ストロベリーシェーキにアイロンをかけて
トマトジュースをエッフェル塔にぶちまけたら
アマリリス!時計の長い針を ....
暗闇の中/外灯/マンションの光/走り抜ける自転車のライト
鈴虫の声/ざわめく木々/血に飢えた獣たちが横切る
ポケットの中から取り出した一粒の飴を
震えた手が地面に落としてしまう/砕け散った飴
 ....
眉村卓の古い短編小説に「わがパキーネ」というのがある。私が最初にそれを読んだのは1982年。十四歳の夏だった。ヒマでたまらない十四歳の夏休み。自分自身の汗の臭いと、隣で飼ってる牛の悪臭と、それらをぐる .... 階段を上っていく
ホールには明り取りの窓から差し込む光が溢れ
かつてそれは観葉植物の大きな葉を照らしたこともあった
河口の近くで手をつなぎバスを待っていたとき
足元には確かに雨ざらしになった動 ....
空から下がる紐の影が
円を描いて泳いでいる
姿かたちの失い生の声
幾度も土へ打ち寄せる


源を抑える手は緩く
光も水も渦巻いている
したたり落ちるもののなかに
灰と緑の ....
視線の低い僕に繋がれた
のんびり足先まで溶け出す夕暮れと
女の子の目は右に左にゆれだすのが
振り子みたいだと僕は思ったり
たとえばあの踏切の手前に出来ていた
水溜りが死刑囚をモチーフにした絵 ....
白く鮮やかに咲きほこる、
一本のモクレンの木の孤独を、わたしは、
知ろうとしたことがあるだろうか。
たとえば、塞がれた左耳のなかを、
夥しいいのちが通り抜ける、
鎮まりゆく潜在の原野が、かた ....
空につるされた
大きなはねがまわる
からおとたてる
かいてんが どこか
はげ落ちたがいへきのさびしさ
人の形をしたうすいかげが
つめの先にあつまる
ことばを探している
おびえてかくれた ....
   やさしさもみんな抜け落ちて
   そいつはセーヌの流れに消えた





キリストマリアを引っかいて
破れた爪で十字を切った

 ....
散らさなくとも
散りゆくもののそのままだから
    浜辺
    知らせ
    島を生んで
同じ高さが
同じ高さのままで違うから
    猛り
    迎え
     ....
鏡がふいに斜めを向き
部屋のすみが溶けて明るい
鏡のなかには無色の柱
扉の前には銀の曇


銀はひとり歩き出し
窓を向いては立ちどまる
たたんたたん たたんたたん
素足の ....
「いまきたとこ。」笑って裂けた唇を何度も舌で撫ぜるチューリップ
 
 
 {ルビ辛夷=こぶし}です、わたしはずっと。咲き終わりの白木蓮じゃありません
  
 
 長身のあなたは隣にいないけ ....
折れた枯れ枝に添ったまま
消えていく水時計を持つ土色の葉

陽射しを後にした地の床への風くぐり
通りの方から聴こえる小声

渓谷は乾き こぼれた石
切れた羽に 埋め込まれ

飛ぶ ....
春になりましたねぇ
と叫んだら
おまえっていつもじゃん
と言われてしまった
それって何なの

グラデュエーション

今の季節
はっきりとした区切りのようなものを感じる

北の国よ ....
日曜の朝
一人の娘が固まっている
俺の妻だ。
枕元に携帯電話が二つある
電池パックを入れ替え
その機種でしか出来ないゲームをするらしい
いまはモンスターハンターというのをしている。
雨が ....
遠いロンドンに宣戦布告してみたり
そばに立っててくれと頼んでみたり
それでも飽き足らないので
火星の蜘蛛と宇宙に飛び出してみたり
それでもどうしようもないから
私に火をつけてくれと懇願してみ ....
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