すべてのおすすめ
確かなものが欲しい、と泣いた
そんな日々には
野良犬たちも
たんぽぽも
いつもの帰り道さえ
他人だった
君の小指と僕の小指を何度絡ませて
....
雑居ビルの中にある小さなライブハウス
彼女が鍵盤に指先を下ろした瞬間
スタインウェイは真っ直ぐに彼女を見つめた
たたみかけるような熱い音の重なり
スタインウェイと彼女の間には
透き間 ....
好きとか嫌いとか
そのような感情と同じ速度で
五月の空はわたしのこころを蝕んでゆく
そして陽射しに揺れる葉桜が
散り行く先など知る縁も無いように
他者への憎しみを
こころの襞奥に抱え込 ....
朗読会の司会を終えて
{ルビ塒=ねぐら}となったネットカフェの個室で
目覚めた朝
古びたタイルの便所に入る
鏡の前に
薄桃色の花柄の
トイレットペーパーが
置かれている ....
臨み込んだ剣士 飲み込んだ欠児
傾れ込んだ食物 腹のなかで もう二度通す
痒いんだ身体 地面を転がって
風の蹴りで胸をやられる僕
土から虫の生えた夢を
どうして眠るときの夢 ....
ささら
降る雨は
きらり
きらり
あたたかい
曲線を
なぞって
温度を
中和する
泣き崩れた
君も
柔線
逆撫でて
可愛いよ
と
ちらつかせて
吐いた
かくれ ....
都市伝説の革命が毎秒誰かを殺めている。
リモコンの電池が切れたから僕はそれを見つめている。
ハイヴイジョンの向こう側には名前も知らない小さな世界で、
逃げ惑う子らの悲痛な叫びが鼓膜を震わせ響いて ....
忘れるために楽しんで
楽しむために忘れない
チックの消えぬ心の傷を
少しほじくり血を流す
愛なんて重過ぎて
右手の震えが止まらない。
鼓動する
線路上の心臓の
信号ではじまる旅
信号で終わる旅
点滅する
信号の果てにある
命の駅
信号は
出会いの青だから
別れの赤だから
動脈と静脈が
行き交う街に ....
電気をつけないままの部屋で だらり 弛緩
久しぶりの死体ごっこ
死体の損壊状況は脳みそが酷くただれている位
胃の内容物は八海山と寒梅、久保田
最後に電話で話した人物は元バイト先の先輩
ホ ....
瀕死の夕日がこっちを見たままで
もう三十分が過ぎようとしている
愛しさえしなければ
関係は容易に築けただろうに
名前も知らなければ
容易に愛しあえただろうに
昔あった出来事か
昔 ....
空白のページに
跡をつけたのは私
全体の四分の一にも満たない
まだ短いストーリー
ベストセラーになんかなりっこない
本屋の端の方で埃をかぶっている
ちょっと悲惨なストーリー
....
三ヶ月前に死んだ夫、二吉の
葬式代の支払期日が迫っていた
今夜夜なべして内職をすれば
明日の期日にはなんとか間に合うと
お芳は思った
一条通りから小間物屋の
横道に入ると
あとは暗い夜道 ....
?値の概念
きっちり敷きつめた箱
早回しの時計
生まれたばかりのドットに侵略
引き裂かれた白地の残骸
曖昧なグレイの幸福
水色の融合
ユデタマゴを食べる風景
ピンクの破壊
極 ....
きみに
あげるものは、
ない
どうやって、わたしたちは
他人同士なのか、
きみも
わたしも、
何も
分からなくなったとき、はじめて
何かを
送る機会がおとずれる
....
{画像=080518024305.jpg}
疲れた後の浅い眠りのように
私を誘う女の手よ。
私を誘わないでくれ、
私は弱き男なれば。
死の後の深い眠りのように
私を見つめる女の目よ。
....
言葉が時代の上空を走っていく
夜も昼も黒も白も
ハイソもセイホも
自民も民主も越えて
想いがやせ衰えて行く
かぼそい真実が怯えている
見過ごすのか生贄か
選択を洗濯に ....
森の夢―古いボート 前田ふむふむ
1
青い幻視の揺らめきが、森を覆い、
緩んだ熱を、舐めるように歩み、きつい冷気を増してゆく。
うすく流れるみずをわたる動物 ....
たんぼの土手に立つと
風が強くあたる
しろかきが終わり
水の上に浮いている
稲わらをとって
土手に集める
もうすぐ田植え
晴天の太陽が たんぼの水に輝く
強い風は水の上をう ....
小さな まぁるい
金魚鉢の形した器
浮かぶあなたはビー玉
ぷかぷかくるりん
今にも融けそうだ ねぇ あなた
助けられないの
あなたはすっぽりはまっていて
金魚鉢を独り占めするあなた
....
風のバラ
とはわたしの愛した詩人
の五月
をうたう冒頭のことばだ
しかし
肉厚の花びらをかさね
内部へ密度を増す花は
きみに似合っていない
むしろもろい花弁に
あざやかな色彩で
緑 ....
初めは小さな湧水だった
流れの始まりは
始まりの音
川の変奏へと
流れる川の音を
聴いていると
行く先々で
音が変わる
一人
佇んでいる
二人
柔らかなやり取り
....
少年が瞬きをする間に
世界は始まって終わった
髪の長い女の睫毛の下には
よく潤った泉がある
古くから伝わるやり方で
劇場の赤幕を閉じた
背中を丸めた老人が
その前で立っていた ....
大雨で
強風で
桜の大木が
折れる。
栄枯盛衰
古いものはすたれ
新しいものが
栄える。
若者は
老人を
馬鹿にする
何も知らずに
カッコをつけ
人を傷つける
....
男には戦わなければいけないときがある!
男には自分の強さを証明しなければいけないときがある!
男には暴力に訴えなければならないことがある!
男には心に浮かんだ疑念を振り払う必 ....
まるいかたち
ぱすてるなおれんぢ
やらかくはねて、すいてき
ゆびで
かるくつぶすことも
くちびるで
つみとることも
わるいこ、にしない
やさしさ
....
思い出がスライドしていく
綺麗な言葉でくるまれて
一点の曇りもなく磨かれて
愛しているよと
愛していたよと
優しく思いを投げかけるばかり
君の瞳の中でも
あの光景は映 ....
あなたの傷を数えてあげる
いつ傷つけられた
どこで傷つけられた
誰に傷つけられた
僕も同じだから
なんとなくわかるよ
でも
明日の朝日を見てごらん
美しい
輝く光が
....
仰向けになった僕の胸に、女がうつぶせていた。二人は裸で、繋がったままでいるから、少し動くたびに、女は小さくため息をこぼした。キスをするとその湿った息で、重たくないかと聞かれた。大丈夫、胸の上で寝かせる ....
テーブルの向こうには
崖しかないので
わたしは落とさないように
食事をとった
下に海があるということは
波の音でわかるけれど
海鳥の鳴き声ひとつしない
暗く寂しい海だった
....
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