ぷかぷか
恋月 ぴの

ぷかぷか波間で浮いているのが
一流のサーファーだと思っていた
金づちのわたしにとっては
それでも素敵すぎて
おなじようにぷかぷか浮いている
ボードの数を数えたりして
どれがあのひとなのか
サングラスをちょっとずらしてみたりする
おじさんが立ててくれたビーチパラソル
やっと夏らしさを波音に感じられて
ひとりお留守番は物足りなさと
読むでもなく眺めるでもない雑誌に
さっきから気になる怪しい視線
腹ばいになっているあなたには見えない
もくもくと逞しい積乱雲
沖合いが霞んでいるのは何故なんだろう
どこまでも日焼けした怪しい視線が
たいくつしていたわたしの素肌を遮って
ひんやりとした飲み物の音がする
「ひとりってわけはないよね」
見上げた逆光にも
爽やかすぎる白い歯並びが笑って
沖に向ってパドリングするあなたには見えない
ちょっとぐらいならいいかも…
黙って受け取った紙コップのなかで
溶けはじめた氷が
夏の日差しを呼んでいる



自由詩 ぷかぷか Copyright 恋月 ぴの 2006-06-06 07:17:26
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
ラヴ・ジェニック