回想録 「山鳩と桐の花」
LEO

石垣に肩を預けて戯れは
我が身を石に初夏の景色に


それは‥

季節で言えば
今頃の
濃さを増す
木々の緑も鮮やかに

天気で言えば
曇天とも
雨天とも
言えるような
言えないような
そんな日の

あたりはいちめん
うっすら白く覆われて
雲の底辺なのか
霧なのか靄なのか
区別はつかないけれど
もっとも好きな風景の
ひとつ、その中で

暑すぎず
寒すぎず
薄い布目を通して
肌を湿らす空気
ゆらゆら漂う中で
それらの一部に
なったかのよう

杉の木立の合間から
顔を覗かせるのは
薄青紫の桐の花

  初夏に花を開く
  と、知ったのは
  最近のことでした

私は石垣に
桐の花は枝先に
何かを待って
何も待たずに
ただじっと
  
  耳を澄まして
  ごらんなさい

てーてぽっぽ
てーてぽっぽ

もっとも好きな風景の
ひとつ、その中で
現在からあの頃へ
あの頃から現在へ
時間の針を動かすのは

てーてぽっぽ
てーてぽっぽ

山鳩の鳴き声が


自由詩 回想録 「山鳩と桐の花」 Copyright LEO 2006-06-04 22:57:00
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