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丸みの無い水平線の向こう、
空と海の境界が
白く曖昧になるあたりで
春、が転寝している


寒気から噴き出した風が止み
陽の降り注ぐ砂浜には
くろい鳥のような人影が
水面に微笑み ....
一枚の写真のなかで私
笑っていた
卸したての制服は似合っていないし
表情もなんだかぎこちない

引越しの準備とかで慌しい最中
久しぶりに開いてみた
アルバム
こっちへ出てくるときに母が ....
雨のリズム
秒針の鼓動
一定に停まる気配もなく
ただ無機質に

「只今、午後4時39分になりました」
電子音が遠くから聞こえる
見えるはずの海のむこうは見えない
もやがかかって曖昧に直 ....
薬で眠る
あなたの一日は
たぶん
誰とも違う一日

ときどき
あなたは目を覚まし
ありもしない
歴史を説いて

目が合うと
もういい、とか
すまんのう、とか

もう
語り ....
上巳の日
川で身を清め
穢れを流す
不浄を祓う

香る花
おぼろな月
のどかな心

桃の酒 ひとくち また ひとくちと 弥生に酔う

春来たりなば夏遠からじ

からすのえんど ....
おもいでの形見
私にとってこれは
変わらないことのひとつ
ここには風は吹いてこないけれど
ほがらかなひだまりがぽうっとしている

いつまでも
微笑する宇宙のふちで。
私の子午線 ....
 きみへ
ぼくは今日でおわるんだ
 なんて言わないで

わたしはとりあえず

自分の今まである全てのきおくや経験から
 とりあえずどうしていいのか
(おちついて/おちついて/)
かん ....
沈黙をファイルしつづけた理性は

つぶらな意識をふとまたたかせ

早春の空にくりひろげられる

光のハープを聴いている
毎日働いてると 
なかには 
いろんなボールを 
投げてくる人もいる 

前のぼくなら 
しかめっ面で 
乱れ飛ぶボールをそのままに 
取ろうともしなかった 

これからのぼくは  ....
ひやり 
頬にひいやり
まばたきをしたら
お日さまのこぼした泪は
空にひろがって
くりいむ色の野に
しろい花が咲いた
ぽつぽつぽつ 

鳥が落ちて
風がめくれあがり
足音がかけて ....
らいおんは
つかれ切ったのか満たされたのか
あまいかおをして寝ている
ぐるるる
 
 かみをかきあげながら
 はにかむ
 {引用=Honey come?}
 じょう舌になるほど
 な ....
物語は
いつからはじまったのだろう
あれは遥かふたばの記憶

いろおにの
むらさきが見つからなくて
忍びよる気配に耐え切れず
かさぶたに触れた、指先

―――ふるえていたのだ
―― ....
遠くから
貨物列車の轍の音が響き
耳元まで包まった毛布の温もりは
夜への抵抗を諦める

暦が弥生を告げて
色づき始めている、
翡翠を纏った木々の芽吹きを
さくらいろの気配を
止めたい ....
着ぐるみの中の僕は、隙間から見える君を見て泣いたんだ。
渡そうとした風船はスルリと抜けて藍に溶けた。

泣き顔の君は、大きなウサギを見上げたんだ。
真っ赤な目をした僕をじっと見てたんだ。
月をじっと見ていました

***

  細い銀の格子に囲まれて
  床はモザイク
  天上には白い月の天体写真
  四辺に青いクッションを敷き詰めて
  お気に入りの羽根枕を左腕 ....
  チェーンがディレーラーをすり抜ける音
  始まりのいつもの儀式
  数秒間の加速のあと静かに静止する
  制動機の動作確認、これも儀式
  そして百メートルごとの加速機を通過しながら

 ....
かべにいつまでも描く手をやめない
(やさしさまでこすり付けないで)
夢のなかで きみは
何もない荒れた家
かまわず境をなくし触れてきた

少しだけある地下室
何もないと思わせる、 ....
ああ
いくつもの候補があったよ
さくらとか、みかんとか、まりんとか
植物や風景が多かったかな

もう生まれてくる季節なんか
どうでもよくってね
まろんとか、こなつとか、みさきとか
次々 ....
じょうずに結えない髪の、かきわけたその奥に、
海が広がっている
黒い底は伸びて、光を吸いこんでいる
あなたがその闇へと、手をのばしては
救おうとする影を
あてずっぽうに踏んで、遊ぶ


 ....
夢の中に落とし物をした日の朝
猫になっていた
仕方がないので
夫を会社に送り出してから
家事は明日にしようと決め
日向ぼっこをして過ごし
夜になったので眠った
明日はせめて、猿になりたい ....
月、外側にある言葉 照らされて空にある
蒼夜の路地裏で僕は 影を必要としている
月光は誰を求めるか

  太陽、秘めた声
  心灼きながら
  生まれ続ける
  聞いて、聞いて、
   ....
リネンの隅に
残された匂いは
何を恋しく思わせる
布地の波の
泳いだあとの曲線に
躯を添わせ
ぬくもりを懐かしみ
満たされた想いと
満たされなかった願いと
抱きしめ夜を往くのだろう
 ....
ぼくが、
ぼくだけが
知らずにいるこころは
どこにありますか

どんなふうに
転がっていますか



ぼくが
たずねることで

だれかを
知らずに傷つけるとしても
汚 ....
予定のない週末に
予定を入れた


 噴水を見に行く。

それで噴水を見に出かけた
ぼんやり缶コーヒー飲んだ
マラソンする人をながめた
虹が出た
ひとりぼっちだった


予定 ....
気づいたら
いろんなひとが
両手で込めて 
差し入れてくれた

おにぎり

箸もつかえないくらいに
元気なくなったとき
たべるといいよ、って

おにぎり

すかすかの ....
無垢なるいのちをみつめる光は
かげることのない心臓だ

だからそのいのちの影は
しずむことなく
みちるばかりで
月の亡霊のように 果てしがない海原をひっぱる

陸地の無い水平線上に ....
また後で携帯にメールでも入れるから

あなたの去った
バスルーム
鏡に映るのは恋に疲れたひとりのおんな
乱れきった髪が物語る
しがみつこうとしてしがみきれなかったものへの思い

シャワ ....
あの古い家の二階の窓に
いつか見た雲が流れてゆく
雲はいつもあの窓に吸い込まれ
戻って来ない日を数える
そっと指折りをする


窓ガラスに昼の陽がさして
辺りはぱっと明るくなった
物 ....
あなたが美しすぎるから 僕らは狂ってしまう
時間も距離も歪んで 上手に掴めなくなってる

錆びないセンス ステンレス
たまたま言霊 手玉に取って

夢を見てるだけでしょう
わかってて ....
{引用=からだのすべてを耳にしてしまいたい、いっそ}




糸電話から伝わった振動が、
あのひとの声だったと気づいたときには、もう
音もなく、底はふるえない
わたしを塞いでいく夜にも ....
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