あおぞらが
おしえてくれた
あおじろい
あんたのうた
無声音でうたう
あんたのうた
ナイフはひびわれて
ナイフは鈍くなって
とびっきりで
ひとりきりの
うた
ここは
あかるい真 ....
くぐり抜けていく
いつも裸足だ
闇のそばでは
どうして自分だけは
かわらなくていい、などと
つぶやいていたのだろう
ああ、それはちがうよ
タングステン
熱で溶 ....
わたしはくま
バニーにも
子猫にもなれなかった
ちょっと可愛くない女の子
だって言われても
好きなのは甘いハチミツ
大きな森の小さな家で
あなたと暮らす夢を見る
わたしはくま
バニー ....
ある日
少年の中に
戦争が充満する
少年の中に
潮騒が充満する
少年の中に
愛情が充満する
少年の中に
故郷が充満する
ある日
少年の中に
憎悪が充満 ....
人は
過去を切り捨てられないまま
今を動く現在がある
人は
今を動く現在があるから
変えることのできる未来がある
人は
生まれてきた事実を否定できないまま
今を生きる現在がある ....
【硝子の川】
川の水の結晶
鋭角の紋様を形作り
白く切る
葉が流れる
白い血潮の上
銀色の岩が
透明すぎる心を
切り裂いている
きっと夜には 涙も流れる
流星の軌跡に ....
見覚えのない住所から
冬の匂いの封筒は届き
記憶の引き出しから
銀のペイパーナイフと
あらん限りの想いの欠片とを
わたしは交互に取り出す
かさり、と開くと
月夜の薄明かりのなかで ....
生きれば生きるほど
しなければならないことが
多くなってゆく
いいことが続かないことが
多くなってゆく
昔に恋した想い出が
まぶしいままに
生きれば生きるほど
すべきことが
多く ....
目の前に広がっているこの海を
神秘的という言葉で片付ける
向こう側の世界なんて
想像する事しかできないから
こちら側では
とても小さな世界があって
誰が望んでいなくても
救いようもな ....
駅前の寂れた広場
少年がギター片手に
この世の終わりを歌っている
死んだ魚の目をしている
完全だろうが不完全だろうが
事態はすでに起こっていて
動いていて生まれては無くなっていて
....
どこにでも行ける
風になりたい
遠くへ行ける
風になりたい
どこにでも飛べる
光になりたい
速く飛べる
光になりたい
風や光は
人間ではできない
すごい力をもっている
そ ....
1
ゴルゴダの丘の受難が、針のように、
人々の困惑の眼を包んで、
砂塵の闇に、厳かに、消えてから、
すべてを知った空は、
瞬きもせずに、顔色を変えることなく ....
冷たい風が吹く
誰もいないススキ野原で
遠い音を聞いていた
はるか彼方から聞こえる
俗界からのメッセージは
幼い僕の心をとらえた
遠くで車が行きかう音
汽車の行く音
夕方のチャイ ....
雨は降る
無情の
恵の
日は注ぐ
旱魃の
神の
一本の幹に触れる
真っ直ぐな
曲がりくねった
別れた妻を想う
不肖の息子を想う
置いてきた過去 ....
さくらがみたいのと
おまえは呟く
けれども
おまえの為に
こんな時期に
桜は咲いてくれないのです
ようちえんにいきたいの
とおまえは呟く
しかし幼稚園は日曜日に ....
Ⅰ
小さな日だまり きらきらと
光のカーテン揺れている
小さな日だまり ゆらゆらと
そこだけ光の輪ができた
誰にも内緒教えない
あれは妖精の輪なんだよ
妖精たちが踊っている ....
子供の頃は
船乗りになりたかった
世界中を旅して
冒険して
人食い人種にとらわれて
奇跡の脱出
漂流して
魚食べて生きて
雨を集めて
さめを殺して
奇跡 ....
セトウチジャクチョウ!虫の名前。
メソポタミア!テレビに出てる眼鏡かけた外人の名前。
トランスフォーマー!!!駅の中にある機械の名前。
ホワイトバンド!!白人音楽グループ。
ケーヒンコーギョー ....
一 琴引浜
さくら貝は、はかないという言葉がお好き
はかないという枕詞がつくものには
とりあえず歌ってみる
それらはかつては量産されたものだが
貝は、そんな厄介なものは持ち合 ....
宛・モラリスト有識者諸兄
1・腐りきった水を湛えた水槽に男の四肢が浮いている。
故にその言動もまた腐りきっております。
2・濁りきった汚水が流れる川に男の瞳が漂っている。
....
本当の暗闇と出会う
それって
なかなか難しい
ひとつひとつの灯火を消しても
寝付けぬ夜に何処より話し声が漏れて
この街の闇は仄かに明るい
本当の暗闇
それは遠い日の感触
胎内にいたとき ....
雲ひとつない秋晴れの中
海に向かって歩き始めた
理由はない
心地よい秋風が
海から吹いてきて
正面に向かっていくかのように
歩いていった
理由は必要ない
海は輝いていた
きら ....
つきの誘いにうみは揺れ
えいえんのわかれが
ちぎられてゆく
みずのかがみに映るのは
浮かびのひかりか
しずみのそこか
こたえをつかめぬまま
円い波だけが
のこされて
ここ ....
まめクジラの水槽には
売約済みの札が貼られていた
まだ幼いのか
さざ波を飲み込んだり
小さな噴水をあげては
くるくる浮き沈み
はしゃいでいる
こっそり水槽に指を垂らすと
あたたかい ....
どうして兄弟でもない男の人と
いっしょに暮らさなければならないのか
結婚前に、たずねた
そういう決まりになっているんだ
と 彼氏は言った
あんまりあっさりと言うので
笑ってしま ....
いとうさんと飲んだ
あしたのあたしはあたらしいあたし
という一文があって誰の詩か思い出せない
みたいな話をしたような気がするけれど酒のためか思い出せない
いとうさんと飲んだ
みた ....
あの日
花を活けている母のそばで
私は
剣山を手に押しあてて
痛み
その直前で手を止める
残虐な笑み
横たわる百合の花
その白さと
花の奥
見てはいけない遠い闇
青い花器 ....
海辺を散歩していると
王様が降ってきた
星を掴んで
冥土の土産だと
王様は差し出す
星は掌の中で静かに砂になった
涙も流せない柔軟な弱さ
君の世界の一部でいたいだけなのに
なだらかな野辺に{ルビ錨=いかり}をおろせば
緑色の秋がふりそそぐ
やわらかな雲の群れを辿れば
まぶたは風にまどろむ
じっとしていなければ
追いつけない季節
木漏れ日を新呼吸し ....
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