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「生き春巻」です
店員は言った
メニューを見直す
確かに「生き春巻」とある
生き春巻は時々皿の上でもぞもぞ動くが
その間も気持ちを見透かすかのように
目のようなものでこちらを睨み続けて ....
コンパクトに映るわたしに
わたしは誰と尋ねても
何処まで行っても、あなたはあなた
としか答えてくれない
(何だかつまんないなあ
こうやって電車のなかでも鏡を覗き
アイラインなんか直してみる ....
こどもは夢のおとなたち
絵皿の中で遊ぶ姿も
束の間のやすらぎ
緑の風がそよぎ
ミルク色の光を浴びて
こどもたちは目を覚 ....
明かりの消えた教室で、
ひとりふたりと、
席につく。
学籍のないぼくたちは、
幽霊みたいにゆらいでて、
いつも不安で不安定。
黒板のかすれた数式は、 ....
ことばならなんとでも言える
「よく晴れているから…」
そのことばに
あなたは安心したような気配を残し
携帯電話をそっと切る
(雨降りなのさ、ほんとはね
幸せだったひと時は何も言わずに遠のい ....
脚を折りたたんだ正座で
あなたはラーメンを提出し
わたしがお品書きのとおりに
並べていく
合間合間に広がっていくものが
チャーシューの色や野菜に似ていて
わたしたちの中心なのだと気づく
....
どこへおいきやすの。
ほらあんた、
あんたですがな。
どこへおいきやすのか、
ちゃんとゆうてみなはれ。
ゆえへんのか、
ゆえへんのはどのくちや、
このくち ....
秋の風の宙へ
何処か遠い指のピアノが示す
美しい階段を、わたしの指は
駆け上がることが出来ず
小さく折った、愛しくて、
そうね、耳があればピアノは聞ける、けれど、
つたない ....
輝くものはいつも
はるか遠くに置かれる
届かないとわかっていても
暗闇の中で
求めてしまう
温もりのない光とわかっていても
そこで燃えているものを知っている
そして永遠を誓ったりする ....
バスの停留所に
動物列車がやってきた
乗ろうとするけれど
人間はお断りです、と
動物の運転手に怒られてしまった
レールも無いのにどうして
そう思ってよく見ると
窓から次々と動物たちが ....
とれそうなまま
しがみつくもの
制服のボタン
放課後のバッタ
ほどはるかな道
引きずった影
空笑いで蹴飛ばす
夢の石ころ
かたむいた道
走り出すバス
遠ざかってゆく
....
一。
わたしの壁にはきいろいしみがある。
しみはわたしが産まれる前からあったしみで、
わたしの父がこの家に婿に来る前から、
ずっとそこにあったしみな ....
波や風は待つものなのよ、と
長い髪を旋律で
砂浜の反射が切り抜いて
細めた視線の届く先に
僕の胸は高鳴る
星座盤の小さな窓から見たように
君のことを知ったかぶりしていた
そんな気がすると ....
いつだって遥か遠くを
見つめていた、正太
本当はそんな名前じゃないのに
誰もがそう呼んでいた
*
学校へ行く途中
平然と菓子パンを買った、正太
朝飯なのだと、悪びれず
無造作に ....
2006/09/05
なにを書けば許されるのか
許されるわけもなし
なしじゃない、ない、だよ!
文語は駄目だよ、文語らしいのも
文語三十、二人菓 ....
(かじって
すてて)
レタスを洗って
いたい
今日はずっと
レタスを洗って
一枚一枚
丁寧に
拭いて
いたい
今日はずっと
知るのがいやで
本当はもう ....
ベッドの上で
二人向き合って
レモンを切った
そのナイフに
お前を映して
見ていた
ベッドの上で
二人向き合って
レモンを切った
そのナイフに
映ったお前は
....
風の手触りなど
いくらでも描けてしまうように
わたしとあなたの
輪郭は
ありふれた景色なのかも
知れないけれど
戯れることの
ひとつ
ひとつに
やわらかく透ける名前があって
眠 ....
黒揚羽 日に咲く羽音 染めてありし世
零の
( 、血のうずく
私を見つめる
その目は
黒く透けていて底もなく
ゆらぎもせず
胎内で夢を見ていた ....
郵便配達員がポストと
駆け落ちをした
四畳半の小さな部屋だった
配達員は毎日
せっせと手紙を書いて投函した
春という字を書くと
いつも何だかくすぐったかった
集配時間には
ごめんね ....
先祖は、なにをしていたか分からない
落ち武者とも河原乞食とも言われている
本家の実さんは、強い侍の末裔の顔をして
武者人形の鎧を磨く
子供の頃、母に聞いたら
戦争でお寺が燃えたから、本当のと ....
あ
午後が
千枚のツツクホウシで耳に触れる
この、耳、
もっと奥へと誘う迷路を装って実は
透明のものにたやすく沿う為の形状の
この耳が、悦びに震える、嗚呼、午後よ、
午後 ....
雨が上がると
空気が透明を増して
夏の名残と夢とが冷まされ
水の中を歩くように九月
夏服の明るさが
どこか不似合いになり
息を潜めていた淋しさだとか
熱に乾いていた涙が
堰を切 ....
夜の傾斜をくだってゆく
くだるたびに傾きがちがうような
いつもおなじような気がする
夜だから傾斜は暗い
ところどころに湿った火がともっている
そのそばにその火を嘗める獣が
いたり
い ....
秋が訪れれば またひとつ
目じりに刻まれる年輪のようなもの
早いもので開け放した窓の外では
秋の虫たちが鳴き始めている
この様に季節が巡るのであれば
歳を重ねてしまうのも致し方無い事
抗っ ....
ぼくたちは生きている。
これまでもこれからも、
そして今もぼくたちは生きている。
世界にはぼくたちがいる。
たくさんのぼくたちがいる。
たくさんの ....
一面菜の花
白い蝶
饒舌な暦に
紋黄蝶
ひらひらと青い空を飛んで行くよ
戦闘機の青い影
いつのまにやら日が暮れて
饒舌な街の囀り舌平目
マグロ列車のテールの光り
チラチラ ....
もうひとつの太陽が
もうひとつの月が
何処かに隠してあるのだろうか
もう疲れたと言って
勤勉な太陽が
沖の向こうに沈む頃には
新しい曲に乗って
新しい太陽が
夕焼け雲に乗っかっ ....
夕映えに長く伸びた影の
手足のしなやかに動くのを
美しいと見惚れた
サッカーボールが弾むたびに
視線が鋭く光るのも
伸びかけの髪をかきあげて
おどけて笑う口元も
....
どこへ続くかなんて知らない
と
呟きながら
レールを敷き詰める私
そのレールを通るのは
私ではなく
どこかの
誰か
私の役目は
それを眺めて
続きの途絶えを防ぐこと ....
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