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月よ、今夜は煌々と世間を照らしている。
ところで、月って何だい?
僕はそれを分からずにいる。
ただ、空に月がいるということのほかに。
月が地球の衛星だということはわかる。
月が海の満ち引 ....
早咲きの紫陽花を見て、立ち止まる。
曇り日のある午後のこと。午後のこと。
神……という言葉は使いたくないのだけれど、
神は早咲きの紫陽花をどう思うのだろうか。
天でも良い。
四季のあるこ ....
蜘蛛に羽根を捥がれた蝶のように、
貴女は苦しみに満ちた微笑みを浮かべていました。
(海が頌歌を歌う)
貴女は{ルビ他人=ひと}を救っても良いのです、
その心には優しさと慈愛とが満ちているの ....
優しい魚が生まれてくるまで、
君は{ルビ汀=みぎわ}に立って待っているといい。
「生まれ変わったら何になりたい?」と、聞いたら、
君は「イルカ」と答えた。
イルカでは魚を食べてしまうだろう ....
永遠という言葉を求めて、永久という言葉を求めて、
君はどこをさ迷う?
地球の砂漠? 火星の大地? それとも水星?
無限は何のよりどころにもならない。
一つだけ落ちてきた言葉を受け止めて、
....
あなたは優しさに何と話しかけるのですか?
「ありがとう」? それとも「愛しい」?
地球という球体が回って、わたしたち{ルビ人間=ひと}もそれにつられる。
生きていることとは、つねに奇跡なのですね ....
このごろは病臥しているので、
戸外の風景を見つめることができません。
買い物に出かける時も、目に入るのはアスファルトだけで、
鋪石が足元を圧迫しているのでした。
それでも今日は白い色の桜を ....
詩人というのは、言葉を食べなければ生きてはいけない存在なのかもしれません。でも、今の私には、世界という存在はそれを見ていても言葉を生み出すということをしてくれません。つまり、世界はそこに何かを宿して ....
人と接していると、時にその人の中に自分を見る、ということが起こり得ます。人というのは往々にして、というよりもしばしば相手の情緒やふるまいに合わせた行動の仕方をします。その時、相手が自分の思考や思惑に ....
やさしい歌を歌いましょう。
詩ではなく、歌を歌いましょう。
わたしたちは吟遊詩人の、
あどけない無邪気さを忘れてしまってはいませんか?
恋の歌を歌いましょう。
冒険の歌を歌いましょう。
戦 ....
雨が降り続きます。それは決して晴れない雨です。なぜなら、雨は心のなかに降っているのだから。昨日はバス停でバスを待つ傍ら、ああ、この人はきっと割り込んでくる。と、いう人がいました。案の定、彼はわたしの ....
彼女が問うそのやわらかな言葉にわたしはと惑う。
その刹那、その物腰、その唇の動き。私の目からは隠されている、それらの上に──彼女は、とても重い。母よ、すべての者の母よ、すべてを失くしたあなた ....
unfinished business.
わたしたちにはやりたりないことがいつでもあって、
それを、
閻魔大王が見守っている。
閻魔大王などと、たいそうなことを言ったものだと、
無限の興 ....
冬の雨が何よりも嫌い。
言葉など出て来ない。ただ、ひたすらしのつく雨。
雨の音に目覚め、雨の音に眠る。
わたしは自動人形のようで、「叫び」というものをこらえている。
人の生きることの苦痛に ....
暗闇のなかにて、
わたしは黒豹だ。
黒豹でなくっても、
黒猫でも良かった。
それでも、わたしは黒豹で、
黒猫よりも㸃いと思っている。
大烏でも良い。
それでも、エドガー・アラン・ポーの、 ....
見つかって、見つからないよと君が言う。まるで透明人間みたいに。
目に見えない電車に昨日乗りました。ゆられていく先すら分からずに。
打消し線の線を取り上げ弦にする。ラ音の調べ、この世のものか ....