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漂いの中に浮かぶ船はとても空虚だ。
空虚は僕の心を浸潤する。
広がり、閉じる。
この情緒こそ難破船にはふさわしい。
水面に移る悲しみを鳥たちが啄む。
僕は自分が何か勘違い ....
雨上がりが匂う緑の庭園で小さな世界は広がる。
ピアノの音色が淡い世界に色付く。
胸に抱えた定かでない悩みは昨日へ消えてゆく。
私はただ黙々と小さな勇気を今日という日に積み重ねた。
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すべての家の窓は閉められている。
通りには誰ひとりいない。
路地裏は灰色の匂いがする。
この世に僕一人しかいないような感覚。
家並みを抜けると開けた田園地帯になる。
僕は ....
私の永遠の旅人、桜の季節を軽々と飛び越えて初夏を待ちわびる君よ。
届いた手紙には、すでに爽やかな風の匂いが沁みついていたのだ。
それはまさしく五月の風。しかし君の無理難題には答えられそう ....
純白の天使が私の窓辺に降りてきた。
机上の真紅の薔薇を香りもすべて真っ白に染めてしまう。
ここにいてもいいんだよ。
迷う私を優しく光の当たる所へと誘ってくれる。
夜空には眩し ....
庭の緑に紛れて自己主張する名も知れぬ花々。
鮮やかな色は私の心をわくわくさせる。
天気は良好、テラスで飲むアールグレイもまた楽しい。
部屋の奥からベートーヴェンのピアノソナタが聴こえ ....
心はいつも籠の中。
苦しさ紛れの言葉遊び。
朝方の霧雨に煙る旅情。
夜はまだ先。
渓流の流れに似たひと時。
我が腰の辺りを啄ばむ猛禽。
湖でもがく 浮上の兆し。
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静かな平日の図書館に人の気配はない。
幾千幾万の蕾たちが花開くのを今か今かと待ち望んでいる。
私の手の中で花開いた詩集は遠い昔の魂の叫びだ。
私は今日もまた本の森へと足を運ぶ。
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遠くで蜩が鳴いている。
商店の軒先から蚊取り線香の匂いがする。
祖父との思い出が詰まった公園へ行く。
そのとき私は自分に見合った石ころを拾い上げた。
石には歴史が刻まれている ....
絶望のたゆたう夜空に黄緑色の言の葉は寄り添い、
音楽を友として今まさに昇天しようとする魂よ。
君のその美しい羽はなんであるか。
此岸より望む大河の流れに身を任せるのか。
ああ ....
嘘を重ねるたび丘の雲は地表を露わにする。
それはどうにもならないくらい現実で
自分の歴史の中の恥を上塗りしてゆく。
自責の念は何の解決にもなりはしない。
穏やかな音楽も今は音 ....